長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

観戦地獄

2010年07月03日 05時50分00秒 | やたらと映画
 邦枝完二の『お伝地獄』を想い出すとき、横浜は黄金町のシネマ・ジャックを想い出す。
 …といっても、この小屋で映画化作品を観たわけではない。黄金町の一つ手前の日ノ出町駅で降りたとき、大岡川の橋のたもとに、高橋お伝が昔この辺りに住まいしていました、というような案内板を見たからである。
 映画自体は、新東宝のと大映のと、両方ともビデオかCSで観たと記憶している。
 昭和の終わりごろ、講談社から刊行された大衆文学館の文庫本シリーズで原作を読んでから、ビデオか何かで映画を観た。
 講談社は、さすが「キング」の雄弁会、講談全集とか落語全集も手ごろな文庫版にして再刊行してくれて、私はずいぶん読みふけったものだった。社会思想社の現代教養文庫のマニアックなラインアップとはまた趣を異にした、かつて大ヒットした読み物を収録した大衆路線なんだが、昭和の終わりにはすでにマイナーになっていた大衆路線、とでもいおうか。

 リアルタイムの新東宝映画は、子どもにはご法度だった。昭和のご家庭には必ず一人はいた、明治生まれのバアサンの言う「俗っぽい」基準というのは、結構的を射ている…と大人になってから気がついた。
 のちに、浅草は田原町の、友人の事務所の近所の黒船神社に行ったとき、大蔵貢が寄贈した、ものすごく立派な石碑が建立されていたのを発見して、驚いたものだ。時代時代の分限者が勧請した灯篭や狛犬、石碑をしみじみと読むのも、神社をお参りする愉しみの一つ。あれからやはり20年近く経つが、まだ在るかしら。

 さて、この『お伝地獄』、お伝自身の数奇な運命を指して地獄と言っているのか、毒婦・お伝に翻弄された男たちの境涯をして地獄と言っているのか…さて、どっちだろう。
 ……両方??

 このところ、年とともに集中力が減退してしまったのか、興味が失せたのか、TVでのスポーツ観戦ができない。チャンネルを合わせてみても、何か別の用事をしてしまうので、結局いつの間にか試合が終わっている。
 映画館で、冒頭の本編への導入シーンを二、三分観たまま爆睡して、気がついたらエンドロールが流れていた、というのに似ている。
 昨晩も、今日も今日とて…という塩梅で、W杯のオランダVSブラジルのカードを、後半42分時点でアナウンサーの、このままブラジルは負けてしまうのか…という悲鳴に近いようなキーワードでハッと気がつき、つけたまま放置していたテレビモニターを注視することになった。
 …で、結局そのすぐ後のハイライトシーンを観たのだが、拍子抜けするほどそそくさと番組は終わり、…おぉそうだったのか、オランダが勝ったのか、それにしても、優勝予想オッズ第1位であろうブラジルが負けたというのに、せっかちな番組の終わりようだな、と、ぼんやりとしていると、ウィンブルドンの生放送が始まったのだった。
 ひええ~これは、うっかりしていると、永久にこの観戦地獄から抜けられないゾ。NHKもご苦労なこった。ひょっとすると、さらにそのあと、ウルグアイ・ガーナ戦が控えているのでは…。

 パソコンのソフトは作業経過を23%としていて、まだまだ終わりそうにない。そのまま放置して、寝ることにした。
 土曜は稽古がある。寝不足では声が出ない。

 ところが、これまた年のせいか、気にかかることがあるせいか、眠れない。観戦しなくても眠れない。不眠地獄。…それじゃ、ダメじゃん、おんなじじゃん。

 スポーツ観戦地獄…。
 幸い私は免れましたけれどもね…。
 
コメント (2)
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