料理
母は料理が下手であった。
誰でも得意不得意はある。だから母が料理が下手でも構わない。
私が立腹したのは、明らかにまずい料理であるにも関わらず、
母がそれを認めないことであった。
晩年、母は自分が料理が下手なのを遂に認めて、料理上手な女性と
結婚しなさいと一言言った。
しかし私が小さい頃から大学を卒業し実家を出るまでは、
料理が下手なことを一切認めなかった。
私がまずいまずいと言いながら食べていると、鉄拳が頭蓋骨に飛んだ。
毎度毎度、まずくて、最後まで残して、母に叱られ、母が諦めるのを
待つ根競べを行うのが常であった。
昔、やはりまずくて最後まで残して母と根競べしている時、
父が私にこう言った。
”おまえ、ばかだなあ。まずいものから先に食べるんだよ。”と。
嗚呼、やっぱり父も母の料理がまずいと思っていたのかと初めて
その時知った。
しかし父は母の料理をまずいとは一言も言わず、いつも黙って食べていた。
やはり父は母のことを愛していたのだなと私は今では思っている。
母は料理が下手であった。
誰でも得意不得意はある。だから母が料理が下手でも構わない。
私が立腹したのは、明らかにまずい料理であるにも関わらず、
母がそれを認めないことであった。
晩年、母は自分が料理が下手なのを遂に認めて、料理上手な女性と
結婚しなさいと一言言った。
しかし私が小さい頃から大学を卒業し実家を出るまでは、
料理が下手なことを一切認めなかった。
私がまずいまずいと言いながら食べていると、鉄拳が頭蓋骨に飛んだ。
毎度毎度、まずくて、最後まで残して、母に叱られ、母が諦めるのを
待つ根競べを行うのが常であった。
昔、やはりまずくて最後まで残して母と根競べしている時、
父が私にこう言った。
”おまえ、ばかだなあ。まずいものから先に食べるんだよ。”と。
嗚呼、やっぱり父も母の料理がまずいと思っていたのかと初めて
その時知った。
しかし父は母の料理をまずいとは一言も言わず、いつも黙って食べていた。
やはり父は母のことを愛していたのだなと私は今では思っている。