長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ローガン・ラッキー』

2020-11-17 | 映画レビュー(ろ)

 2013年の『サイド・エフェクト』を最後に、“映画監督”引退宣言をしていたスティーブン・ソダーバーグ。2017年の本作『ローガン・ラッキー』で復帰となるまでの4年間、彼はデヴィッド・フィンチャーと並んでTV界へと進出していた。2013年に手掛けたTVムービー『恋するリベラーチェ』はエミー賞を席巻。2014年にはTVシリーズ『The Knick』をプロデュースしている。巨匠2人の活躍は今日に至るPeakTVに大きな影響を与えたと言えるだろう。

 そんなインターバルを経た復帰作はお得意の犯罪コメディだ。大金強奪を目論む男達のスットコドッコイな騒動は、完全犯罪のプロットが何とも小気味良く、兄弟に扮したチャニング・テイタム、アダム・ドライバーのユーモラスなケミカルも好調。爆破のプロ、ジョー・バングに扮したダニエル・クレイグは「あぁ、ジェームズ・ボンドになる前はキモイ役者だったなぁ」と思い出させてくれる怪演だ。

 この手の映画には珍しく、強盗計画を企てる兄弟の前には凶悪な犯罪者も執拗な刑事も現れない。職にあぶれ、元妻からバカにされる兄と、退役軍人で片手が義手の弟にとって彼らを軽んじる社会こそが敵なのだ。そして舞台となるノースカロライナ州は都市部から見捨てられた人々の住む、トランプの大票田である。そんな題材選び1つ取っても、『オーシャンズ11』からグッと肩の力が抜けた洗練だ。ソダーバーグ、第3章の始まりである。


『ローガン・ラッキー』17・米
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 チャニング・テイタム、アダム・ドライバー、ダニエル・クレイグ、ライリー・キーオ、ケイティ・ホームズ、ヒラリー・スワンク

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