長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『キャプテン・マーベル』

2019-04-11 | 映画レビュー(き)

満を持しての登場となるマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)初の女性ヒーロー映画『キャプテン・マーベル』は期待通り大ヒットを飛ばし、来る『アベンジャーズ/エンドゲーム』へ向けて最高の盛り上げ役となった。主演は『ルーム』でオスカーを受賞後、格段にスターとしての華やかさを増したブリー・ラーソン。今後、彼女のスターバリューを上げる事は間違いないだろう。

ただ昨年の前座(『ブラックパンサー』)がメインアクト(『インフィニティ・ウォー』)を喰ったようなインパクトには残念ながら程遠い。インディーズ映画『ハーフ・ネルソン』で注目されたアンナ・ボーデン、ライアン・フレックの監督コンビはアクションも鈍重で、わざわざ95年が舞台となる90'sオマージュも不発気味だ(これは90年代の映画で育った筆者の資質の問題かもしれないが)。残念なことにブリー・ラーソンの走りはスピード感がなく、アクションがあまり似合っていない。

それでも良しとしたのが今のマーベルの余裕である。今後のMCUフェーズ4の監督人事を見ても『ザ・ライダー』のクロエ・ジャオらが名前を連ねる大胆さだ。失敗しても攻める、というのが今の彼らのプリンシプルなのだろう。

もちろん『ブラックパンサー』が黒人ヒーロー映画の地平を切り拓いたように、『キャプテン・マーベル』も映画史における重要な局面に立っている。男に求められるだけの笑顔なんて持ち合わせてはおらず、さらには「タイマンで勝負を決めよう」なんて粘着してくる男は軽くワンパンでぶっ飛ばす。そんな優劣だけを競い合う闘いなんてもう終わってるんだよ、とっとと次に行かなくちゃ、と。そして砂場だろうが、職場だろうが、戦場だろうが”女のくせに引っ込んでろ”と言う奴らに対して何度でも立ち上がり、ヒーローになれと訴えるのである。

おそらくアベンジャーズでも最強クラスのパワーを持つであろう彼女が打倒サノスのキーパーソンになる事は必至。来る『エンドゲーム』を心して待とうではないか。

 

『キャプテン・マーベル』19・米

監督 アンナ・ボーデン、ライアン・フレック

出演 ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーン、ジュード・ロウ、ジャイモン・フンスー、リー・ペイス、ラシャナ・リンチ、ジェンマ・チャン、アネット・ベニング、クラーク・グレッグ

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『トリプル・フロンティア』 | トップ | 『アメイジング・スパイダー... »

コメントを投稿

映画レビュー(き)」カテゴリの最新記事