長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ロッキー4 炎の友情』

2019-02-14 | 映画レビュー(ろ)

軽いアメリカ映画が相次いだ85年という製作時期も大いに影響しているのだろう。人間ドラマはシンプルに削ぎ落され、音楽もビル・コンティ御大がシリーズ唯一の欠席、何とあの有名なテーマ曲すら流れない。中盤、主題歌を丸々1曲かけながら過去作映像を使って回想するミュージッククリップのような気のない演出はこの時期のハリウッド映画に多く見られたMTV風演出だ(そういった意味ではスタローンも時代の流れに実に敏感である)。何かと“迷作”扱いされる本作だが、しかしながら前3作に比べて娯楽性に特化しており、ランニングタイムも91分と絞った作りで大ヒットを記録した。何より本作がなければ後の『クリード』は生まれない。

ソ連のボクサー、イワン・ドラゴが米ボクシング界に挑戦状を叩きつけ、引退していた元チャンピオン・アポロとのエキシビジョンマッチが開催される。リングを退いて5年、ファイターとしての自尊心を失っていたアポロは再び表舞台に立ち、喝さいを浴びたいと願っていた。貫禄たっぷり、スターの華があるアポロ役カール・ウェザースは年齢に抗おうとするアポロのエゴを体現しており、それは変化に対応できない者にとって耳の痛い話でもある。この何よりも高いアポロのプライドがセコンドを務めるロッキーにタオルを投げる事を躊躇させ、ついに悲劇が起きる。リングの上でドラゴのパンチを浴び続けたアポロはロッキーの腕の中で帰らぬ人となってしまうのだ。

 最愛の友を奪われたロッキーは仇を打つべく単身ロシアに渡る。アメリカのボクシング協会も認めていない非公式試合、完全に“私闘”だ。しかし、ソ連が国家を挙げて作り上げた(ドーピングした)ボクシングマシーン・ドラゴに敵うのか?そこはオレ達のチャンプ、ハイテクにはとことんローテクで立ち向かう。雪原で足腰を、巻き割りで上半身を鍛え上げる。それでもドラゴの殺人パンチは容赦なくロッキーを追い詰める。だが、諦めない闘志がやがてドラゴを、そして冷戦下にあるソ連の人々を、さらにはあのゴルバチョフまでをも(そっくり!)を動かしていく。なんてこった、冷戦を終わらせたのはロッキーだったのか!!


『ロッキー4 炎の友情』85・米
監督・出演 シルヴェスター・スタローン
出演 タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザース、ドルフ・ラングレン、ブリジット・ニールセン、ジェームズ・ブラウン
 

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