長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『アンコール!!』

2018-04-18 | 映画レビュー(あ)

予告編の印象から1ミリのズレもないが、節度を持って感傷を避けるのがイギリス映画である。人生の黄昏時を迎えた頑固な老人テレンス・スタンプが亡き妻ヴァネッサ・レッドグレーヴの遺志に応えようとする物語は夫婦愛と反抗がテーマだ。1950年代に“怒れる若者たち”と呼ばれたのが彼らであり、人生のエピローグを描く本作で彼らの最後の闘いが描かれる。

老人合唱団“年金ズ”の選曲がロックばかりというのも清々しく、コンサートシーンの盛り上がりを見ると日本でもこんな合唱団いないかなという気分になる。無骨な性格が祟ってなかなか心の底からは彼らと馴染めないアーサー(スタンプ)がコンクール本番に合流する場面は映画の沸点ではない。アロハシャツで揃えた彼らを“規約に反する”と失格にした主催者側に対し、“ふざけんな”とアーサーが無理やりステージに立つシーンこそハイライトだ。権力の言いなりになんかならない。堂々とロックンロールしてやるぜ!

 レッドグレーヴ(この人も大そうな反抗の闘士だ)とスタンプの終末期を描く前半はキャラクターの人生を観る者に想起させる二人の親密な空間に涙腺を緩まされた。老優は宝である。紅一点ならぬ若一点のジェマ・アータートンの清潔な存在感にも触れておきたい。


『アンコール!!』12・英
監督 ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演 テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジェマ・アータートン、クリストファー・エクルストン
 

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