長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『マイティ・ソー バトルロイヤル』

2017-11-23 | 映画レビュー(ま)

バ、バカすぎる…!!
 雷神さまトリロジー完結編はマーベルのお笑い担当ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーを凌駕するギャグの連打。ユルユル、ダラダラの超異色作だ。第1作は英国演劇界の重鎮ケネス・ブラナー、第2作は人気ファンタジー史劇『ゲーム・オブ・スローンズ』のヘッド監督アラン・テイラーが務めたにも関わらず、今回は『シェア・ハウス・ウィズ・ヴァンパイア』で知られるインディーズ監督タイカ・ワイティティを大抜擢。とてもディズニー製作の超大作とは思えないオフビートなノリで見ている僕らも心配になるコント大会が繰り広げられるのだ!!

ハッキリ言ってタイカ・ワイティティはナメきっている。
ソーが久しぶりに故郷アスガルドに帰ってみれば父オーディンに化けたロキが自身を称える寸劇を上演中だ。ロキ役のぽっちゃりした素人さんは…マット・デイモンかよ!!当のロキ役トムヒも歳を取って黒髪、コスプレが似合わなくなってきているのはご愛敬。今回は悪戯の神らしく、ネズミ男キャラで笑わせてくれる。

オーディン不在により長年封印されてきた長女・死の女神ヘラが復活。演じるのはもはや説明不要の大女優ケイト・ブランシェット。2度目のオスカー受賞後の方が楽し気にジャンル映画へ出演してくれているのが嬉しい。登場する度に女王様ポーズをキメてノリノリだ。ヘラによって宇宙に放り出されたソーとロキは惑星カサールにたどり着き…。

全編に安っぽ~い打ち込み系の音楽が流れ、ユル~いエイリアンとコテコテのセットからもワイティティが1980年のカルトSF『フラッシュ・ゴードン』の路線を狙っているのは明らかだ。それは昨今流行りの80’sリバイバルとはやや違い、むしろハリウッド大作をおちょくるようなオマージュにも感じる。ソーが短髪になるのも、ハルクが出てくるのも全部ネタ!本作は回を追う毎に2時間の壮大な伏線へと肥大化してきたマーベル・シネマティック・ユニバースの自戒とも取れる“息抜き”作なのだ。

嘘か誠か、全編の80パーセントがアドリブというキャスト陣のやり取りは最高に楽しい。『ゴースト・バスターズ』でコメディ開眼したクリス・ヘムズワースがオラオラとトムヒを可愛がるシーンに世界中の何人の腐女子が悶絶した事か!そこに「オレなんかどうせ…」と入って来るのはハルク=マーク・ラファロ。これ、怒ると怖いけど素顔はヘナチョコという“ハルクコント”をやりたいだけじゃん!!
彼らを闘技場で戦わせるカサールの支配者グランドマスターにはジェフ・ゴールドブラム。ウェス・アンダーソン組で得たオフビートな笑いのセンスはマーベル映画でも健在。出てくる度に周囲を圧倒する可笑しさだ。

 こんなにダラダラやっても、本作のテーマ曲とも言えるレッドツェッペリン「移民の歌」が流れる頃には最高にアガるのだから面白い。そして“真のヒーローとは?”とお馴染みのテーマに帰結し、ソーは1周りも2周りも成長を遂げるのである。今や安定のブランドとなったマーベル。マンネリを良しとせず、果敢に挑戦を続ける大胆な1本だ。


『マイティ・ソー バトルロイヤル』17・米
監督 タイカ・ワイティティ
出演 クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、マーク・ラファロ、テッサ・トンプソン、アンソニー・ホプキンス
 

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