長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』

2018-05-29 | 映画レビュー(あ)

スーパーヒーロー集結映画『アベンジャーズ』の第3弾はマーヴェル・スタジオ10周年にふさわしい豪華絢爛の超大作だ。オールスターが贅沢に入り乱れ、アクションもギャグもたっぷり。それでいてメジャー大作としてはおそらく『スター・ウォーズ帝国の逆襲』以来のサプライズ、クリフハンガーもある。僕は初日に観に行ったが大熱狂の2時間40分後、場内はどよめき(嗚咽を上げている女の子もいた)、ハリウッド娯楽大作のエンドロールとは思えない異常な空気に包まれた。そう、これはマーヴェル史上最も野心的な1本でもあるのだ。

 『ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』に引き続きメガホンを取ったルッソ兄弟は全速力で映画を走らせていく。前作『バトルロイヤル』で流浪の民となったソーとアスガルド人たちが全滅する所から映画は始まる(あのバカ映画の結末がこんな悲劇になろうとは!)。今回のヴィラン、サノスの軍隊に襲われたのだ。サノスはソー、ハルクすら凌駕するパワーを持ち、ヘイムダル(イドリス・エルバ)、そしてロキ(トム・ヒドルストン)までもが敗れた。マーヴェル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)屈指の人気者であるロキすら早々に退場させてしまう展開に否が応でもクライマックス感が強まる。

サノスの目的はこれまでMUC作品に登場してきたマクガフィン“インフィニティストーン”の奪取だ。6つ全てを集めれば指を鳴らしただけで全宇宙の半分の生命を消し去る事すらできる。サノスは内2つの石を手に入れるべく四天王を地球に送り込む。

ルッソ兄弟は膨大な数のヒーロー全員に見せ場を与える事に成功している。アイアンマンこと座長ダウ兄はベネ様扮する
ドクター・ストレンジと合流、宇宙へと向かう。かねてからキャラが丸かぶりではと思っていたが、実はストレンジは高慢でも真面目で使命感が強い。一方、額に埋められたインフィニティストーンで稼働する人造人間ヴィジョンはヒューマンスキンを纏い(というか久しぶりに素顔を晒したポール・ベタニー)、スカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)と人知れず同棲生活を送っていた。そこへ現れるサノス四天王。危機を救いに現れるのは…キャップ!!!背後を通り過ぎる電車1本で劇的効果をもたらす近年稀に見る格好良さの登場シーンだ。

ここにあの
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが合流する。予告編段階から「同じ1本の映画に共存できるのか?」と思っていたが、そのミスマッチがもちろんギャグになり、そして思いがけずキャラクターを掘り下げる妙味となった。ガーディアンズでもとりわけテキトーなロケットとグルートが打ちひしがれたソーへシンパシーを抱くのが面白い。

決戦の地は今やマーヴェル一番人気
ブラックパンサーが治めるはワカンダだ。“ワカンダフォーエバー!”を掛け声に繰り広げられる一大決戦のスペクタクルや血沸き肉躍る楽しさだ(オコエさんが大活躍なのも嬉しい)。新たな武器ストームブレイカーを手に入れ、チートキャラと化したソーとサノスの決着の行方は…。

マーヴェル史上最大の衝撃を呼んだ要因の1つが最凶の悪役サノスの造形だろう。その目的は人口過多になった宇宙の生命を無作為に半減する事で均衡を保つ事であり、そのためならどんな犠牲も厭わない姿にはある種の悲壮感すら漂っている。演じるジョシュ・ブローリンはモーションキャプチャーを超えた心理演技で義理娘ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)への深い愛情をにじませ、このキャラクターの複雑さを深めている。彼もまた全宇宙人類のためという大義を抱えたヒーローなのだ。
そのヴィジランティズムはかねてよりアメリカ映画が抱えてきた命題でもある。彼が背負う大きな代償も見どころだ。果たして正義とは何か?ルッソ兄弟はこれまでのマーヴェル作品で何度も同じテーマを変奏し、繰り返してきた。そんなサノスに対してアベンジャーズは「命に大小はない」と立ち向かっていくのである。

衝撃の結末を受けて残されたアベンジャーズ創設メンバーがいかなるアベンジを行うのか?続く『アベンジャーズ4』でマーヴェルは今一度、ヒーローとは何かを問い、そしてもしかしたらアメコミ映画の新たな更新を行うかも知れない。その日まで、今しばらく待つとしよう。

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』18・米
監督 アンソニー&ジョー・ルッソ
出演 ロバート・ダウニーJr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワース、クリス・プラット、マーク・ラファロ、ジョシュ・ブローリン、ベネディクト・カンバーバッチ、チャドウィック・ボウズマン、スカーレット・ヨハンソン、エリザベス・オルセン、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ブラッドリー・クーパー、トム・ホランド、ベネディクト・ウォン、トム・ヒドルストン、イドリス・エルバ、レティーシャ・ライト、ダナイ・グリラ、ポム・クレメンティフ、カレン・ギラン、アンソニー・マッキー、ドン・チードル、ピーター・ディンクレイジ、ベニチオ・デルトロ、グウィネス・パルトロウ
 

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