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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『グローリー 明日への行進』

2018-04-01 | 映画レビュー(く)

新鋭女流監督エヴァ・デュヴァネイ監督によるこの堂々たる伝記映画は実録モノの域を超え、力強い怒りと主張が胸に迫る高潔な志の1本だ。それは押しつけがましい説教ではなく、実現困難なキング牧師伝記映画を成功させようという確固たる意志に基いており、時代に逆行している暴力的で差別的な昨今だからこそより激しく胸を打つ。
しかしながらその姿は眩し過ぎたのか、全米批評家から大絶賛を浴びながらもアカデミー賞では2部門のノミネートに留まり、主役となる機会は得られなかった。

キング牧師に扮したデヴィッド・オイェロウォのパフォーマンスが素晴らしい。実在の人物のコピーに終始せず、時に弱さも垣間見せる彼の渾身の演技は非暴力を貫き、多くの人々の心を揺り動かしたキング牧師の“言葉の力”をパワフルに甦らせている。今後、黒人俳優の次世代演技派としてメキメキと頭角を現していくだろう。

キング牧師の“言葉の力”によって時の大統領リンドン・ジョンソンも動く。軍事力を持ってキングのセルマ大行進を阻止しようとするジョージ・ウォレスに対して言い放つセリフに作りの手の理念がこめられている。
「君も私も20年後には政界にはいないだろう。だが、君に加担した政治家として名を残す気はない」

 そういう事だ。そしてその言葉は哀しいかな、時代も海も超えて今を生きる日本の僕にも強く強く響いてしまうのである。


『グローリー 明日への行進』14・英、米
監督 エヴァ・デュヴァネイ
出演 デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、キューバ・グッティングJr.、カルメン・イジョゴ、ティム・ロス、オプラ・ウィンフリー
 

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