長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『トップ・ファイブ』

2018-04-30 | 映画レビュー(と)

日本劇場未公開がもったいない痛快ラブコメディだ。
かねてよりエリック・ロメールをブラックムービーにアレンジするなど隠れシネフィルとしてのセンスを持ち合わせていたクリス・ロックだが、『ニューヨーク、恋人たちの2日間』で共演したジュリー・デルピーからの影響か、NYという借景も相まって“ウディ・アレン風ブラックムービー”とも言うべき粋な映画に仕上がった。もちろん、名匠をフォローしたからってオレ達のブラザーはお高くとまったりしない。コメディアン仲間を総動員して下ネタから自虐ネタまで笑いの絨毯爆撃だ。

バカコメディ映画のフランチャイズで大成功を収めていたコメディアンのアンドレはシリアス俳優へのキャリア転向を目指し、新作映画のプロモにも余念がない。おまけにリアリティ番組で注目を集めるバカセレブとの結婚を間近に控え、いつも以上にメディアへの露出が増えていた。彼はニューヨークタイムズの独占取材でよりスノッブなイメージを打ち出そうとするが、女性記者チェルシーの取材を受けるうちに芸人としてかつてのエッジを失っていた事に気付いていく。

ロックとチェルシー役ロザリオ・ドーソンは最高のスクリーンカップルだ。笑いの火花を発しまくる2人の掛け合いはオープニングからアクセル全開。目を離すのがもったいないくらい魅力的である(特にドーソンはキャリアを代表する作品になるだろう)。

 次々と顔見せするコメディアン達へのリスペクトと愛情に満ちたネタの数々はロックのコメディアンとしての真骨頂であり、そこには業界への批評精神よりも悦びがある。ラストシーンの多幸感といい、本作で映画作家として度量の大きさを見せた。もう1回見ようかな!


『トップ・ファイブ』14・米
監督・出演 クリス・ロック
出演 ロザリオ・ドーソン、セドリック・ジ・エンターテイナー、トレイシー・モーガン、ガブリエル・ユニオン
 

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