こんな大ヒットになるなんて思ってもみなかった。本稿執筆の5月23日時点で全米興行成績5億ドル突破、ここ日本でも65億円を超えるスーパーヒットである。日本が誇るTVゲーム『スーパーマリオブラザーズ』が『ミニオンズ』シリーズでおなじみイルミネーションスタジオによって長編アニメーション化された。子供はもちろん、一緒に映画館にやってきた大人も童心に帰って楽しめると大好評だ。
筆者はいつまでマリオをリアルタイムでプレイしていたのかと調べてみた。どうやら1992年に発売されたゲームボーイソフト『スーパーマリオランド2 6つの金貨』が最後の様子で、当時10歳。そう、この『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は10歳児なら確実に楽しめるし、大人は10歳当時のノスタルジーに浸れることは間違いないが、映画第1作目にしてあまりにも過去の遺産にすがるだけの、何ともトキシックなファンダム映画である。自分がコントローラーを握ることのできないスーパーマリオを90分も見たいのか?自宅に任天堂スイッチがあれば今すぐ過去のアーカイブに触れて、発売当時の(あまりにシビアな難易度の)マリオを楽しむことができる。僕は映画館から帰るなり即座にゲームを始め、気付けば朝になっていた。
批評家を気取って「有害な男性性が…」「フェミニズムが…」と御託を並べる連中もとっとと昔のマリオをプレイすべきだ。ピーチ姫が強いのはボイスキャストがアニャ・テイラー=ジョイだからという理由だけではなく、1988年にアメリカで発売された『スーパーマリオUSA』で既にプレイアブルキャラクターとして登場していたから(日本での発売は1992年)。スカートでふわりと空中飛行する能力は映画版でもちらりと描かれている。ゲームはマリオ、ルイージ、ピーチ姫に加えてキノピオが使用可能で、キャラ毎に特性が大きく異なるといった具合に遊びの幅が広い1本だった。
もちろん、今回の映画版はマリオ役クリス・プラットのボイスパフォーマンスが愉快だし(またしても80sのプレイリストにはウンザリだが)、そんなに悪いヤツとも思えないクッパ役ジャック・ブラックがピーチ姫へ捧げるラブソングは可笑しいったらない。セス・ローゲンがドンキーコングだなんて最高じゃないか(彼が最高じゃなかったことなんてないけど)。
本作の唯一と言っていいユニークな点を挙げておくと、マリオとルイージはなんとブルックリンに暮らす配管業者で、大家族のイタリア系移民であること。独立起業したばかりの彼らの前に以前の雇い主が現れるが、その帽子には『WRECKINGCREW』のロゴが。ビル解体業者のマリオブラザーズが壁を破壊して得点を競う対戦型パズルゲームのタイトルで、僕はいっそのこと『レッキング・クルー』の映画化でも良かったよ!
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』23・米
監督 アーロン・ホーバス、マイケル・ジェレニック
出演 クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン・マイケル・キー、セス・ローゲン
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