近年、『13の理由』『ユーフォリア』『最高に素晴らしいこと』『はちどり』等、心動かされる青春モノが続いた。40歳になろうという僕が高校生達に感情移入できたのはそれらが人生の一時だけではなく、人間普遍の孤独を描いていたからだ(そしてそこにはメンタルヘルスに対する現代人の不安も垣間見えた)。
そんな秀作群の後で咲坂伊緒の同名漫画を原作とした本作の世界は狭い。このジャンルでは異例の124分をかけて男女が好きだ告白するしないに終始するだけなのだ。Netflixで配信された『ハーフ・オブ・イット』は高校生達がカズオ・イシグロと『ベルリン天使の詩』で意気投合し、その文化的教養が相手への好意を高めていたが、本作で引用されるのはリチャード・カーティスの駄作『アバウト・タイム』である(みんな何でそんなに好きなのこの映画)。青春時代の友情や恋というのは一時のものであり、その伴走が後の人生の彩りとなる。本作は映画が終わっても続く彼らのその後に対する余白がなかった。
中高校生をメインターゲットに大量生産されてきた“ティーンムービー”はおそらく日本で独自発展したエクスプロイテーションムービーと思うが、『アオハライド』はじめ数々のジャンル映画を撮ってきた三木孝浩監督は目線や間合いに目を凝らした演出で若手俳優達から繊細な演技を引き出す事に成功している。特に「え」という言葉だけで幾通りもの感情表現をする浜辺美波には目を見張った。日本映画界にもこんな基礎体力の高い職人監督が育っていたのか。名前を覚えておきたい。
『思い、思われ、ふり、ふられ』20・日
監督 三木孝浩
出演 浜辺美波、北村匠海、福本莉子、赤楚衛二
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