『フリーバッグ シーズン２』

さぁ、フィービー・ウォーラー・ブリッジが帰ってきた。ほとんど初登場であった前シーズンから数年、比べものにならないほど大物になって！

近年の彼女はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。スター・ウォーズ番外編『ハン・ソロ』ではモーションキャプチャー演技ながら場をさらう芝居のキレを見せ、ショーランナーを務めたサスペンス『キリング・イヴ』は大ヒットし、賞レースを席巻。『007』最新作ではなんとダニエル・クレイグ直々の指名で脚本のリライトまで担当する事になった（あのハードボイルドなクレイグ版ボンドにどんなユーモアをぶっ込むのか）。そして満を持しての『フリーバッグ』シーズン２である。

 どん底の底の底のような人生にか細い希望を見つけたシーズン１から１年。あらゆる欲望を切り離し（NOセックス！）、亡き友ブーの幻影も振り切り、自営のカフェも軌道に乗せてフリーバッグは何とか生きていた。今日は父親と継母の結婚式の打ち合わせ。久々に家族が集まってみれば、やっぱりタダでは済まないワケで…。

今シーズンではウォーラー・ブリッジの才気に惹かれてゲスト出演陣の顔ぶれも豪華だ。『キリング・イヴ』にも出演したフィオナ・ショウが第2話に登場、フリーバッグの皮肉が一切効かない精神科医役で笑わせる。第3話では名女優クリスティン・スコット・トーマスが現れ、ウォーラー・ブリッジに劣らぬ快投ぶり。前シーズン後、まさかのオスカー主演女優賞ウィナーとなったオリヴィア・ウィリアムズは継母役で再登板。今回も殺傷力抜群の巧さで笑わせてくれる。そして牧師役でTVドラマ『シャーロック』シリーズのモリアーティ役でおなじみアンドリュー・スコットが登場。曲者イメージを一新する好漢ぶりで今シーズンの魅力を一手に担っている。

誰とでもユーモアタップリに接する人当たりのいいフリーバッグだが、親友ブーの自殺がトラウマとなって他人との密な繋がりを築けない。セックスはいつも欲望に任せた行きずりだ。姉のクレアとは悪友のような付き合い方だが、「友達じゃない。姉妹なのよ」と突き放される。生真面目なクレアにとって、自由奔放な妹は妬ましくもあった。姉妹ならではの複雑な心理描写は前シーズンよりもキメが細かく、そんなクレアのブレイクスルーが今シーズンのもう１つの見所だ。演じるシアン・クリフォードも巧演である。

 フリーバッグにとって大きな転機になるのがアンドリュー・スコット扮する牧師の存在だ。お堅い職業だが、酒も飲めばタバコも吸う。ユーモアセンスも抜群でおまけに首周りも腕周りも完全にフリーバッグ好みの“ホットな司祭”だ。しかも彼はフリーバッグが語りかける我々（第４の壁）の存在にまで気付いてしまう。さすが、毎日神に語りかけている人は違う！

スコットが素晴らしくチャーミングに演じてくれるおかげでフリーバッグが本気の恋に悩むのも大いに納得がいく。だが、恋のライバルはよりによって絶対に勝ち目のない”神”だ。この究極の片想いが時に色っぽく、時に切なく描かれて実にいい。

はて僕は自分の人生に”いい失恋”があったのかと思い返した。

辛くて涙をこぼしても、誰も恨むことなく、前を向いて家に帰れた事があったろうか。

でもフリーバッグを見て、僕の中に残っていた何かが呼び覚まされた。彼女は僕達に向かって手を振る。

「もう1人で大丈夫だから、いいよ」

彼女、少しだけ前に進んだよね。いや、人生は少しずつしか前に進まない。いい失恋とはそうやって人を成長させてくれるものだ。また会えなくても、彼女はきっと元気だろう。

『フリーバッグ　シーズン２』19・英

出演　フィービー・ウォーラー・ブリッジ、シアン・クリフォード、オリヴィア・コールマン、アンドリュー・スコット、クリスティン・スコット・トーマス、フィオナ・ショウ

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	第１話
	フィービー･ウォーラー=ブリッジ,フィービー･ウォーラー=ブリッジ,フィービー･ウォーラー=ブリッジ,サラ･ハモンド,オリヴィア･コールマン,アンドリュー･スコット,シアン･クリフォード,ブレット･ゲルマン,ビル･パターソン,マディー･ライス,マーク･スビアス,ベン･オルドリッチ,ジェニー･レインズフォード
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