長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『レッド・ノーティス』

2021-12-14 | 映画レビュー(れ)

 ライアン・レイノルズが心配だ。かつて次世代セクシースターとしてハリウッドの期待を集めたものの、2011年『グリーン・ランタン』の大失敗によりキャリア失墜。素顔を隠してマーベルのアンチヒーローに扮した『デッドプール』でようやく復活したのは2016年の事だった。第4の壁を破り、人を食った“けしからん”ギャグで周りのみならず自分を徹底的に笑ったユーモアセンスはその後、レイノルズの“持ちネタ”として定着していく。トボけたSNS投稿、終了して間もない『ゲーム・オブ・スローンズ』最終回のネタバレをカマシた『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のカメオ出演…そんな彼の才能がFOX買収後のディズニーで公開された『フリー・ガイ』で大きく実を結ぶ。ひょっとすると独自の路線をゆく喜劇役者になるのでは…近年の彼からはそんなキャリアの成長を感じ取る事ができた。

 だからこそ、レイノルズに加えドウェイン・ジョンソン、ガル・ガドットが結集しながらいつもの“B級Netflix映画”の域を出ない本作で、「お喋りでお調子者」「映画ネタを喋りまくるメタ芸」というレイノルズが作り上げた持ちネタが無惨にもコスリ倒される様は見るに忍びなかった。こんな事ではせっかく浮上したキャリアもあっという間に食い潰してしまうのではないか。そんな余計なお世話が頭を巡り続け、ご都合主義のプロットは全く頭に入って来なかった。

 この『レッド・ノーティス』で損をしているのはレイノルズだけではない。ドウェイン・ジョンソンもガル・ガドットもこれまで自身が演じてきたキャラクターのイメージを充てがわれているに過ぎず、活気に乏しく、ガドットに至っては出演するだけ損をしているような印象すらある。そしてこの3人に対抗できる悪役など配置できるワケもなく、気付けばなんのサビもないまま映画は『インディ・ジョーンズ』の劣化コピーのようなカーチェイスでクライマックスを迎えてしまう。コロナ禍に入って以後、“映画館で見るべき映画”と“配信で見る映画”の2極化が進んでいるが、“配信で良い、手頃な映画”としてこのレベルの娯楽作がうず高く積み上げられ、ライブラリの並列化が推し進められるのには正直うんざりだ。


『レッド・ノーティス』21・米
監督 ローソン・マーシャル・サーバー
出演 ドウェイン・ジョンソン、ガル・ガドット、ライアン・レイノルズ

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