舞台は1990年代の北アイルランドはデリー。当時は長きに渡る紛争状態にあり、銃や爆破テロと背中合わせの毎日だった。だが高校生のエリン、オーラ、クレア、ミシェル、そして学校で唯一の男子となる転校生ジェームズにとってはそんなの関係ない。青春時代は生きてるだけで問題だらけなんだから!
『デリー・ガールズ』は“アイルランド版『あまちゃん』”と呼びたくなる痛快ドタバタコメディだ。良くぞまぁ集めたと感心してしまう個性派揃いのデリー・ガールズや、婿へ執拗なモラハラを繰り返すグランパ、教育者として全くやる気のないシスターマイケルなど個性的なキャラ達が毎話すっとこどっこいな騒動を繰り広げる。
そして『あまちゃん』と呼びたくなる一番の理由が登場人物達のリスニング不可能なアイルランド訛りだ。「じぇじぇじぇ!」と言い出しかねない勢いで耳に楽しい。ほとんどの作品で日本語吹き替え版を用意しているNetflixも本作に限っては現時点で未搭載。ぜひとも東北弁で作って欲しいところだ。
本国アイルランドでの国民的大ヒットを受けてか、作り手もシーズン2ではより自覚的に同時代性に対して取り組んでいる印象を受ける。95年、南北アイルランドの緊張は緩和され、エリン達の女子高もプロテスタント系男子校との交流が始まるが、生まれながらに刷り込まれた差別意識が思ってもみなかった場面で噴出する。現在の規範のなさはデマゴーグによって突如出現したものではなく、悲しいかな人類が綿々と受け継いできてしまったものだ。もちろん、それをコメディとして描いており、中でもアイルランドの停戦合意が決まった夜と、学校祭で繰り広げられるまさかの『キャリー』パロディが交差する第5話は死ぬほど可笑しく、そして感動的だった。シーズン2は全6話全くハズレなし。90年代の女子高生たちが僕たちに今を生きる活力を与えてくれる、痛快作である。
『デリー・ガールズ 〜アイルランド青春物語〜』18・英
製作 リサ・マッギー
出演 サオリス・モニカ・ジャクソン、ルイーザ・ハーランド、ニコラ・コクラン、ジェイミー・リー・オドネル、ディラン・ルウェリン
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