朝の蜘蛛は縁起がいい。
誰?そんなことを言ったのは・・・。
昨日は、すごくいいお天気。ゆっくり起きて、今日こそ洋裁の宿題をしようと思っていた。
10時過ぎに、愚弟の施設から、「朝食に出てこないから部屋に行ったら、何処かに行っていない。」と電話があった。
「防犯カメラを巻き戻して、いつ出て行ったか調べてる最中です。」とのこと。
部屋の鍵は開けっ放しだったそうだ。
ねこ吉は、とっさに先日買った携帯電話の充電器がなくて、電話が出来ないとたぬ吉に9日に電話をして来たので、充電器を買いに行ったんでは?と思って、携帯ショップに電話して、買いに来なかったかを聞いた。
来なかったらしい。
充電器をコンビニで買えば安いと言われたので、コンビニに行ったかも?
ネットで近くのコンビニを調べて電話。行っていなかった。
実家に帰ったかも?と思って、実家の隣の人に電話したが帰っていなかった。
警察に捜索願?を出すことになって、たぬ吉が甲子園の警察署に行き、色々書類を書いていたら、施設から電話で、
「出て行ったのは昨日の夕食後」だという電話があったので、たぬ吉は警察の人と施設に向かったそうだ。
施設で防犯カメラを見たら、まるで散歩にちょっと行ってくるとでもいう風な感じ出て行ったらしい。
部屋には、ルームキーと財布、電池の切れた携帯が置かれたままだった。
何も持たず、何処で一晩過ごしたんだろう。
施設は、食事つきワンルームマンションなので基本出入り自由。出るときは施設の受付に伝えるらしいけど黙って出て行ったようだ。
鍵を持たずに出たら、帰って来ても施設のドアが開かないということは、入居するときに、強く伝えておいた。
たぬ吉は、マンションに住んだことがないから、判ってないと庇っていたけど、鍵も持たずに施設から出るなんて馬鹿だろ!
たぬ吉は施設で待機していたけど、本人と連絡のつけようがないので、「誰かに通報されるまで待つしかない。」と警官に言われて、5時頃に帰って来た。
たぬ吉は、心配で疲れ果ててる。
「お茶とお菓子でも食べて。」と言った途端、施設から「見つかった。」という電話がかかって来た。
何処かの高架下に愚弟はいたらしい。
交代勤務の施設の人が、駅に向かっているときに高架下に老人がうずくまっているのを見つけた。
もしかして、この人は事務所で騒ぎになっていた人じゃないかと声をかけて、話しかけながら施設に電話をしてくれた。
すぐ施設から別の人が迎えに来てくれて、愚弟は施設に無事戻った。
これが真冬だったら、凍死してただろう。運がよかった。
たぬ吉が警察官と一緒に施設に入ったら、愚弟は夕飯を食べて爪楊枝でシーハーシーハーしながら出て来たそうだ。
警官に名前と生年月日を聞かれ、正確に答えたので警官は一件落着で帰って行ったそうだ。
部屋に戻って、たぬ吉が、「昨夜は何処にいたのか?どうして鍵も財布も持たずに出て行ったのか?」
色々質問しても、「全く覚えていない。」と言ったそうだ。
虚ろな目をして、ポカンと口が開いていたらしい。
今までも、「判らない、出来ない、覚えていない。」を繰り返していたけど、ねこ吉は嘘だと思っていた。
もう、1人で買い物など出来なくなってたんだ。生年月日は覚えてる。
入居した施設の名前は覚えていない。
「朝起きたら、自分が何をしたらいいのかが、段取りが判らない。書いてないから判らない。」と言ったそうだ。
たぬ吉は、今度ノートに、一日にすべきこと、施設のルールなどを書いて持っていくって。
果たして、読んで理解できるのか・・・。
たぬ吉も、警察、実家、施設(2回往復)周り、帰って来たのは、9時前だった。
疲れ果てていた。
身体的疲れはもちろんだけど、自分の弟の認知症のような症状にガックリきて、精神的疲れが凄く大きいと言っていた。
話を聞いていると、認知症は複雑だとつくづく思った。
昨日は、愚弟と同じようなことが自分にも起こるかも知れないと思うと、睡眠導入剤を飲んでもなかなか眠れなかった。
追記
昔、「とりぱん」で読んだけど、蜘蛛は余り獲物が取れない蜘蛛の巣だと、畳んで持って帰るという話を読んだ。←「ベランダの蜘蛛の巣は・・・。」
昨日も、キラキラした蜘蛛の糸が見えていたけど、いつの間にか撤収されていた。
「朝の蜘蛛は縁起がいい」どころか、とんでもない日曜日だった。
愚弟よ、残り少ない老人の時間を返して欲しい。