
当院でも患者さんからいろいろ質問があり一番多いのが「インプラントの手術は危険なのですか?」でした。個人的な意見を述べさせてもらうと麻酔や手術の事故、お薬のアレルギーや入れ歯を夜に誤飲して亡くなられる方もいます。残念ながら医療で絶対安全はありません。
大切なのは危険を察知して避ける事です。では今回の死亡事故で何が教訓となるでしょうか?今回の事故の要点は手術中に骨の周囲の動脈を傷つけてしまったという事でした。
この歯科医師もインプラントの経験豊富なドクターだったということなのでおそらく患者の顎の骨はかなり萎縮した難症例だった可能性が高いと考えられます。
ではなぜ顎の骨が萎縮してしまうのでしょうか? 実は歯周病などで歯を末期まで放置すると周囲の骨は吸収してしまいます。
また義歯を使用していると顎の骨も萎縮してしまいます。
そうなると義歯の具合も悪くなり、ますます噛めなくなります。その状態でインプラント治療を希望されると手術のリスクが非常に高くなってしまうのです。
「悪くてもとにかく歯を抜かない」と一般的によく言われますが実際には「歯の治療が成功せず顎の骨の吸収が止まらない場合は痛みがなくても抜歯する」が顎の骨を守り安全にインプラント治療を受ける事ができる方法なのです。
本当に噛めなくなってからだとリスクは高くなり選択肢は減ってしまいます。
ちなみに写真はインプラントを入れるための穴を掘るドリルにストッパーを付けた状態です。
このストッパーを付けて骨を削っていくと骨の表面にストッパーが当たってドリルが止まるので深く掘りすぎて骨の中の神経や血管を傷つけることがないので安心です。