他人に「お金を貸す」という事の難しさを感じた事があった。大阪時代、長年通っていたバーのマスターから借金の申し出があった。
「娘が交通事故を起こして、急にお金がいるようになったので、助けてくれませんか」
という内容だった。そのマスターとは、気心もしれていたので、何がしかのお金を貸した。最初は、ちゃんと月々、返金してくれたが、やがて、返金がなくなり、ある時、また、電話がかかってきた。
「○○さん(僕の事)、あと五万円貸してくれませんか。そうしたら、お店もやっていけるのですけど・・・」
それに対して、僕は言った。
「返金の無いのは、仕方が無いと思っていました。でも、普通の人間だったら、手紙か電話で、返金できないおわびと理由を連絡されるのではないですか。そんなマスターにこれ以上、お金は貸せません」と。
それからしばらくして、大阪出張があったので、店に行ってみた。まだ、開店していなかったので、帰ろうとしたら、マスターとバッタリ出くわした。「顔つき」が変わっていた。
僕が通っていた頃の「柔和な顔」では無く、「人間の持つ、欲望の出た悪い顔」に。
普通は、「○○さん、ありがとう。ちょっと、飲んでいきますか」くらいの誘いはあり、今までの事情を話してくれるのが、僕は「筋」だと思うのだが、そのまま、すれ違って、僕は店をあとにした。
数ヵ月後、店に行ってみると、潰れていた。
僕は、ここのマスターにバーボンウィスキーの旨さを教わったし、「グレン・モーレンジー」という最高に素晴らしいウィスキーを教えてもらったのもマスターからだった。
僕がドラマをやっていて、妻と付き合っていた時期、ドラマの仕事が何時に終わるか分からないので、待ってもらっていたのも、この店だった。
マスターは、洋酒の輸入会社を脱サラして、そのバーを始めた。僕は吉本興業のマネージャーに教えてもらって、その店を知った。一人で飲みに行くには、格好の店だった。カラオケもなく、やかましい客はマスターが追い返し、静かな雰囲気でお酒が飲める店だった。
今、通っている「新宿ゴールデン街」の店に、「グレン・モーレンジー」を置いてもらったのは、僕だ。そのくせ、最近は、ダイエットをしていて、焼酎ばかり頼んでいるが・・・。
「人はお金に困ると、変わる」事を学んだ。もちろん、変わらない人もいると思うが。
テレビで、「消費者金融」のコマーシャルがバンバン流れている。しかも、「プロミス」は「三井住友銀行」グループに入ったので、それも「うたっている」。
つまり、ちゃんとした、都市銀行のやっている「消費者金融」だから、「大丈夫だよ、お金を借りても・・・」という誘惑なのだ。
「コンビニ」で返せますというのも同様。この低金利時代に、「消費者金融」で気軽にお金を借りるのは損である。「借金地獄」への第一歩と思った方がいい。
本当に、「お金」は人の人生を左右するものだ。