旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

津々浦々酒場探訪 夜行列車@上野

2024-08-17 | 津々浦々酒場探訪

上野駅ほど夜行列車が似合う駅は無いと思う。
ボクがそう思うのは、物心ついた時分すでに新幹線が博多開業し、
東京駅を発つ夜行列車といえば、華やかなブルートレインが主役で、出張とか旅行をイメージさせた。

一方の上野駅は、燻んだ青に塗られた急行列車が、頭端式の地上ホームから次々と北へと出発し、
A寝台B寝台にグリーン車、普通車、荷物車、郵便車などで混成した不揃いの客車列車は、
帰省とか旅とか、言い換えると「郷愁」とか「哀愁」を漂わせていたからかも知れない。

手元に色褪せた時刻表がある。1967年10月、大きなダイヤ改正があった時のものだ。
この古い時刻表をなぞってみる。23:30発の「第4十和田」は仙台で朝を迎える。
車窓には今頃は色づき始めた稲が、遥か遠くの山裾まで大崎平野の田園風景が広がっているはずだ。
ここで醸された “一ノ蔵” をグラスに注いでもらう。ほどよい酸味、キレ味の辛口純米だ。

広小路口から横断歩道を渡ってガード沿を2ブロック、日本酒BAR「夜行列車」がある。
間口の狭いの店には12席のカウンター、日本酒メニューの木札には東北・北陸信越の地酒がラインナップ。
お盆を迎えるご同輩は、夜行列車のきっぷを懐に、この店で一足早く故郷の酒を呑んだだろうか。

時代は降って、この手のお店で女子3人が昼から呑んでたりして、ガード下の風景も変わったんだろうなぁ。

上野を21:00に発つ「羽黒」は羽越線経由の秋田ゆき、朝日に輝く出羽三山を遠望して06:40酒田に着く。
酒田の酒 “上喜元” の純米吟醸は清涼感とキレがある酒だ。アテは本マグロ、赤貝、甘エビで盛り合わせ。
北前船で栄えた湊町酒田に旅したら、酒田舞娘の艶やかな踊りを観ながら、日本海の幸でこの酒を呑みたい。

帰宅ラッシュの19:30に13番線を出発した「越前」は、未明の長野、早朝の富山・金沢を経て、福井は07:11着。
今では北陸新幹線で3時間を切る東京〜福井も、当時の夜行列車は12時間もかけて走ったんだね。

越前大野の “花垣” はボクの好きな酒、純米吟醸 “米しずく” は濃厚なうまみがある。
アテはへしこの代わりになるかと “鯖の燻製”、わさびをチョイとつけて、これは旨い。

お盆の帰省ラッシュを眺めながら、夜行列車と古い時刻表と日本酒で、居ながらに旅する呑み人なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
前略、道の上より / 一世風靡セピア 1984