往復4車線の旧国道、彼女は約束の店の前でボクを待っていた。
暑いんだから入って待てばいいのにと云うと、上目遣いに「いいの」と一言。愛おしくなる。
ほどよく冷房が効いたショップに入る。アイスコーヒーを運んできたマスターが、そのままボクたちの席に座る。
頼みもしないのに、お節介にもマスターは気難しい彼女の扱い方をボクに説明し始めた。
彼女がこの店の常連とは聞いていたけど、元カレでもなければ、共通の友人でもあるまいに。
30〜40分位だろうか、ようやく奇妙なテーブルから解放されて、彼女と二人きり、少し遠出をしようか。
今日の彼女、しなやかな脚にはブラウンのタイトスカートを纏い、さりげなくシャンパンゴールドの
アンクレットを着けている。上品なオレンジのトップスに包まれた上半身は、案外ボリューミーだ。
そういえばマスターが言っていた。近頃の彼女はデリケートだから、最初の1,000kmは4,000rpm以下でと。
気遣ってやれってこと?言われるまでもない。スロットルは優しく開き、シフトダウンはゆっくり時間をかけて。
店を出てから2時間、ボクたちは多摩川に沿ったワインディングを駆けて神秘の大宮殿までやってきた。
ここに誘ったのは、彼女が大宮殿の主人公に相応しいほどステキだから。ここはシンデレラが踊った古城か、
はたまたララ・クロフトが躍動した遺跡の空間か、どちらを演じたら似合うだろうか。
古城に例えるなら、100名の晩餐会が開けそうなゴールドのシャンデリアが煌めくダイニングを通って、
舞踏会を催すホールは、5階まで吹き抜けるような尖塔を、カクテル光線が内から照らしている。
大宮殿を後にしたボクらは、一度多摩川の谷間で戻り、さらに上流へと走る。やがてエメラルドグリーンの
水を湛えた湖畔に出る。風が青もみじを揺らして一瞬涼やかになる。少し話そうか。
せっかくだからダムにも寄ってみる。空と山と水が織りなす青から緑へのグラデーションが美しい。
夏の日差しは痛いほど射るけど、標高500mを渡る風は案外涼しげなのだ。
ダム天端から下を覗き込むとさらに涼しい。下半身をツーと冷ややかなものが流れる感じだ。
もっとも高いところが苦手だという彼女は、駐車場に残ると言って聞かなかった。
そういえば「最初のデートはイタリアンが無難だよね」と、うちの部の若い社員が二人で話していた。
どこぞのハウツー本にでも書いてあったのだろう。
でもこの谷間に気の利いたイタリアンレストランがある訳もなく、やはり古民家風の蕎麦処を択んだ。
“なめこざるそば” の注文を取って立ち去りかけた店員さんに、「あと」っと挙げかけたボクの右手を
彼女の右手が柔らかく押さえて、「ビールはだめよ」と優しく囁く。
どうやら二人のときはアルコールはNGらしい。これから呑み人の呑まない旅がはじまりそうな予感だ。
湖畔を巡るワインディングの橋上、今日、彼女を連れて帰りたい衝動に駆られている。それとも拙速だろうか。
そんなボクの葛藤を背中で感じて楽しんでいるだろうか。湖面を見つめる彼女が長い髪を風にそよがせている。
<40年前に街で流れたJ-POP>
彼女はデリケート / 佐野元春 1982
小説を読んでる感覚になりました。
続きが読みたい!
出版できますね~
delicateな彼女によろしくです♡
彼女と一緒の時はノンアルですね。
週2日連続ノンアルです。
お互いに健康的ですね(笑)
のん
私も続きが早く読みたい💖🤩
私なら一緒に飲みたい〜って思っちゃった笑
上目遣いがうまい彼女さん♡
どーするんだろー??🥰🥰
この暑い中、ノンアルは立派ですね。
体調管理万全で、もしかして縦走などご予定ですか?
待望の納車を擬人化しましたが、残念ながら
続きを書くようなセンスもアイディアも無さそうです。
この夏から秋、甲斐駒とか、八ヶ岳とか眺めに、
彼女と信州方面を走ってみたいなぁと思っています。
いい年をしたオトナが、ちょっとミステリアスな女性に
振り回されそうで、ほんと言うとこの先心配です。
暑い日が続きますが、気候の良い週末を狙って
高原に誘ってみようと思います。
断られたらどうしよう。けっこうドキドキです。
先日はスマホで拝読。
今日はPCでゆっくり再拝読させていただきました。
She's so cool.
ノンアルも冷えてて美味しそう♪
ローカル線に乗って呑む旅か
彼女を誘って呑まない旅か、大いに悩むところです。
のんさんの山紀行も楽しみにしていますよ。
コメントありがとうございます。