素晴らしい生演奏に出逢えるのは幸せだが、繰り返し聴きたいと思える音源に出逢えるのも幸せだと思う。数日前に購入したDavid Fray(ダヴィッド・フレイ)氏によるバッハのCDもそんな一枚。Twitterで出会ったおともだち経由で知ったDavid Fray氏、大変なイケメンでバッハが得意なピアニストという印象を抱いていたが、ある時じっくり聴いたシューマンのピアノコンチェルトの動画に惚れ込んでしまった。そしてその後Youtubeで色々な演奏を聴きぜひ音源を手に入れたいと思うようになった。
そして手に入れたのがバッハ作曲パルティータ第2番BWV826、トッカータBWV911、そしてパルティータ第6番BWV830という、これぞ二枚目な短調と思える演目。
パルティータ第2番シンフォニアの重厚な出だし、そしてその後に紡ぎだされる音楽の力強く生き生きとした語り口、アンダンテへと推進力を持って駆け出すところ、活力に満ち溢れていた。心地良いテンポを保ちつつも音に情感があり哀愁の感じられるアルマンド。繰り返しの後が特に気に入った。はじけるようなクーラント、後半は音の滴が舞い降りているように思えた。一転して一音一音の密度が濃厚なサラバンド、低音部が高音部を支えつつも時には上へと顔をだしお互い仲睦まじく対話しているように思えた。ロンドになると音がたちまち鋭角に、重量感もありながら絶対に重力に抗い続けるエネルギーが、そのままの勢いで終曲のカプリッチョ、勢いとエネルギーがはじけ音の花火ここで全開、個性の感じられるアクセントも説得力が感じられ知らず知らずのうちに強く惹き込まれてしまったのだった。
トッカータ、前半部分はグールドより速めで勢いのある出だし、聴き手に向かって語りかけているような気がした。そしてその後のゆっくりした部分もある程度のテンポを保って音楽を淡々と進めているように思えた。ここでも重力に逆らい流れのベクトルを保つことを重視しているように思えた。そしてフーガ!最初は速度を抑えているように思えた。各声部のテーマを大切にしながらも絡み合い音楽のドラマをひとつひとつ創り上げているような気がした。思ったよりも重量感が感じられたフーガ前半、後半はがらりと雰囲気を変えスタートは遠方から聴こえてきた。遠近感が感じられた。音の形は角ばっていたり丸くなっていたり、色もカラフルだった。それにしても同じ楽器からここまで多彩な音が出るなんて。。。まるで音楽の万華鏡のように思えた。
パルティータ第6番トッカータ、情熱的な出だし、かなしみと一言で言ってしまってはいけないような激しい感情が感じられた。展開部の低音同士のひそひそした対話にぞくぞく。そこから音楽が上へ上へと登って行く様子の音の紡ぎ方からほとばしりでる慈しみ溢れた世界から祈りのようなものが感じられた。特に低音部の語り口が恐ろしいぐらい魅力的で病み付きになりそう。アルマンド、哀愁にあふれながらも母なるものが感じられる優しい音楽、光を求めながらも結局は得ることはできないような切なさがコーダに行くにつれてぐんぐん強くなる。クーラントで一気に音は力強くダッシュ。華麗で多弁な高音部とともに低音部もしっかり歌っており心地良い緊張感が感じられる音楽。エールでもクーラントで得た加速度とスリルは保たれたまま音楽は進む。トッカータのテーマの再現から始まるサラバンドだが音はトッカータとは違い輪郭がぼんやり柔らかくベールに包まれたよう、そしてトッカータが上へ上へと登るのに対しこちらは下へ下へと根をはっていく。そして張られた根の周辺、少ない音の間から醸し出す神秘的で幻想的、そしてちょっと閉塞感も感じられる雰囲気。このはった根は一体どこへと向かうのだろう。最後はうまく収まったものの、永遠の問いを投げかけられたような気がした。テンポ・ディ・ガヴォットで一気に地上の世界に、短調の切なさは保たれたままでエネルギッシュで軽やかな踊りに。そして大トリのジーグ!一つのテーマから豊かに広がる硬派で激しいながらもどんとして包容力豊かな音の結晶。どんと来いここでガッツリとまとめるという気概が感じられた。途中から速度がまし音の結晶は流れを持つように、場面転換で音の凪が訪れた瞬間のどきどきわくわく感も素晴らしく、加速度を増してコーダへと向かうところで感動の雫が一杯になりコップから溢れるところだった。
なんと美しく魅惑的なバッハなのだろう。どんどん彼の音楽世界に引きずり込まれ、中毒になるのではと思えるような勢いになっていた。
曲の進行とともに感想を書いてみた。彼の演奏への感想、曲への感想とが混同してしまったが、CDを聴いて私の中で感じられた世界。これからも何度も聴きそうな予感がする。
ちなみに最近ワーナーミュージックから彼のショパンも発売され、そちらも素晴らしいのだが、まずバッハの演奏に私は心打たれたので、こちらから書こうと思った次第。聴きながら数日かけ書いたのだがとりとめがないうえに妄想(暴走?!)も入った文章で申し訳ない。
それにしても彼の奥さんって、なんとリッカルド・ムーティのお嬢さんのキアラ・ムーティ、とてもきれいな方。天は人に二物も三物も与えるのね、と感じたのだった。
素敵な出会いに、イイネ♫
そうなのですよ!本当に、素敵なピアニストとの出逢いだったと思っています。
「イイネ」ボタン、あるブログもあるようですが。確かにgooにはありませんね。私の場合「イイネ」に依存しすぎるところがあるので、あえてない状態にしていた面もあるのですが、反応あるとやっぱり嬉しいですね!コメント嬉しかったです♪有難うございました(*^^*)