ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

五島列島にて

2015-02-15 16:01:36 | 旅のこと

キリシタンの受難の歴史を秘めた島々--五島列島はずっと訪れたいと思っていたので、一人旅でやってきたのだが、その印象は「カルチャーショック!」としかいいようのない強烈なもの。やはり、旅はするものである。

一口の五島列島と言っても、福江島から5つの島が順に並んでいるのをそう名付けただけで、全体としては数十もの島が散在する。
私はもちろん、この5つの島を訪れただけにすぎないのだが、大きな島をのぞいては、はっきり言って過疎。一つの島に三百人ちょっとの島民しかいないという…。 それでも、そこに「世界遺産」登録を目指す教会があり、海上タクシーで島々を回ったのだが、ショックだったのはそれらの教会のあまりのつつましさ。

ヨーロッパで見た幾つもの教会の、圧倒的な大きさと豪華絢爛さ。教会が地上で最大の権力を持っていた中世時代の状況もさることながら、その豪奢さは、非人間的とさえ見えるほどの圧力を感じさせもしたもの。パリのノートルダム寺院の建築や薔薇窓には、中世時代の精神性が結晶化されたようで、とても感動したけれど・・・。

ところが、五島列島の教会は粗末とさえいえるほど、素朴で、「教会」というより、まるで島の人々が寄りあう「公会堂」くらいのレベル。 木造の建物は、昔の分教場のような雰囲気で、木組みの間には、五島の象徴である椿の花が彫りこまれたり、ステンドグラスの意匠となっている。 長い迫害の歴史を通じて信仰を持ち続けた島民たちの、「血と汗と涙」が築きあげたかのような教会--やはり、これも感動的である。

そして、島で泊まったホテル「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」。これがすご~く良い! マルゲリータとは、マーガレットの花を意味するのだそうで、敷地にはこの花々が植えられ、売店に並ぶお洒落なグッズもマーガレットの絵が意匠に用いられている。 部屋は、修道院を思わせる清潔で、簡素な趣で、家具の色調もヨーロッパの田舎を思わせる。う~ん、好きだなあ、こういうの。  写真はこのホテルのレストラン「海と陸の十字路」を撮ったもの。 お魚もお肉も美味! こうして、九州の西の果ての島の夜はふけて行くのであった……。 

軍艦島・五島列島への旅

2015-02-15 15:30:17 | 旅のこと

不眠症が今一つすっきりしないせいか、疲れがたまっていてこのブログもしばらく放ってしまっていた。いや、こんなことではいけないな。
ひとまず、この間行った旅行の整理をしなければ…。

先週行ってきた軍艦島と五島列島。写真は、軍艦島を海上から見たところと、荒涼たる廃墟のありさまを写したものであります。知る人ぞ知るはずだった、この島--今では何と世界遺産になるかもしれないということで、なかなかの人気ぶり。もとはといえば、炭鉱が採れるということで、この小さな島に1950~60年代当時で東京を越える世界一の人口密度があったのだとか。東京に残る同潤会アパートを思わせる建物の廃墟があり、建築年代も同じ大正の頃かと思っていたのだが、あにはからんや昭和だと言う――。

名前の通り、外側から見ると、軍艦そっくりの威容。説明版に「武蔵」に似ていることからつけられた、とか書いてあったけれど、私には「宇宙戦艦ヤマト」を彷彿とさせましたわ。 あたかも小さな城塞のごとき空間に、病院も教会も、神社もスーパーも何もかやあって、折からの炭鉱ブームを背景に人々の熱気が充満していた時代もあったのか…けれど、今は建物もむなしく朽ち果て、壮大な海の墓場と化している。 廃墟というものが嫌いじゃないので、以前から一度行ってみたかったのだが、実際に訪れてみての感想は「やっぱり、趣味じゃないな」というもの。 私がロマンを感じるのは、古代エジプトのピラミッドとか神殿跡、ローマのフォロロマーノといった『遺跡』にあるようです。

そして、面白いと思ったのは、この島まで船を出し、案内して回るのが「軍艦島コンシェルジュ」という会社(でしょうか?)だということ。スタッフの方皆さん、赤いジャケットを着て案内してくれるのだが、ホテルのフロントじゃあるまいし、「コンシェルジュ」という名前が、何ともミスマッチで面白い。 船の中で流すデモンストレーションビデオにも、「ジェームス・ボンド」が軍艦島に現れる!という仕掛けがしてあったり…。 どうやら、当地の人々の中で、この島の追憶は少しも揺らいでいないようなのであります