ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

イコンの世界

2015-02-28 15:57:59 | アート・文化


カリグラフィーの写本装飾の勉強になるかと思って、今美術館で短期集中教室が開かれている、イコン教室に行っています。
「イコン」は言うまでもなく、ギリシア正教会の宗教画。 その意味は、ギリシア語の「エイコーン」がもとで、「像」とか「似姿」を表しています。

「イコン」を描く時には、何よりも心をこめるのが大切なのだそう。単なる鑑賞や装飾を目的としたものではなく、信者に取って心のよりどころとなるものだから。

カリグラフィーから派生して、アラビア書道もちょっとやったことがありますが、これはまた別の世界。
今、上の写真のところまでやりかけていますが、完成した暁には、下のテキストの完成画像にすこしでも近づくようにしたいな。
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おもしろい本

2015-02-28 15:27:13 | 本のレビュー
面白い本を求めて、漂流しています。 書店にいけば、ずら~っと本の山が並んでいるのだけど、自分にとって「面白い!」を見つけるのは、本当に大変なもの。冗談じゃなく、川で笊をすくいながら、砂金を拾っているような気分です。

毎日、毎月、本はどんどん発行されるし、よほど選んでいかなければ、目を通す時間もエネルギーもなくなってしまいます。でも、たまに「面白い」と思う本を見つけた時も…。 大きな声では言えませんが、この間オーストラリアの作家サラ・モートンの「秘密」を読みはじめた時も、「次はどうなるのか?」と読み進めていって、時間は真夜中。目はギンギンに疲れて、痛い…。でも、眠るには、結末が気になる…。 思いあまって、ラストの種あかしをぱらっと広げて読んでしまったのであります。上下の2巻ある大作とはいえ、丁寧に読む進めることはせず、ラストだけ先取りしてしまうなんて――。なんだか、せっかちになりつつあります。

そんな風なのですが、面白かった本でも、「もう一度、読んでみよう」と思うことは稀。再読しようと思うほど、情熱をかきたてる本はそうありません。何度も読み返す本は、江戸川乱歩やシャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパンなど、といった古典的なものばかり。乱歩の夢幻境のごとき、耽美的世界は大好きなのです。

気のせいか(年のせいか)、大量に生産される近頃の本や作家に「面白い」と食指が動くことがなくなった私…書店をのぞくより、「ノエルの本棚」のかつての愛読書にじっくり目を向けるべきだろう、と考え中です。 人生の時間は、無限ではないのですから。
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ばんば憑き

2015-02-28 14:59:27 | 本のレビュー
「ばんば憑き」宮部みゆき著。角川書店。

宮部みゆきは、ファンというのではないけれど、デビューしてこのかたの著作(かなり膨大なものになる)の大体を読んでいる。特に初期の頃は、明るく軽快なテンポが、ストーリーテーラーとしての才能の他にも顔をのぞかせていて、楽しく読んだもの。けれど、いつの頃からだったろうか、すっかり面白くなく感じだしてしまったのは。特に、ここ数年発表される作品は、初めの三分の一くらい読んで投げ出してしまうというありさま。「桜ほうさら」も、「小暮写真館」もぜ~んぜん面白くなかったです。(でも、宮部みゆき作品のほとんどがそうであるように、しっかりベストセラー入りしてましたけど)

そんな訳で、近頃まで書店に山積みになっていた「ソロモンの証人」も読んでいない。あのボリュームに、見ただけで圧倒されたし…。大長編でいうなら、かの「模倣犯」もつまらなかった。

だから、この「ばんば憑き」は久方ぶりに「読みとおせた」宮部作品。なら、面白かったのか? と言われると、そうも言いきれない。江戸時代を舞台とした時代劇ものの短編集だから、読みとおせたということもあるし、怪異ミステリー物だから結末に興味をひかれたということもある。

さすが、当代一、二の人気作家――と思わせるひねりや描写の面白さは、あるのだが、いかんせん嘘くさい。いかにも「つくりごと」じみた絵空事が堂々と繰り広げられてゆくのを見ると、「ちょっとねえ」とひいてしまう。大体、博打に強くなる代わり、人の精を食いつくしてしまう「博打眼」などという物怪が、空からやって来るなんて――おまけにそれが真っ黒な蒲団のような形をしていて、50の目玉がそこにくっついている――馬鹿馬鹿しいような。

中では、表題ともなっている「ばんば憑き」のみ、読み応えのある怪異譚におさまっている。どこかの村では、人を殺した人間に秘密の丸薬を飲ませ、むごい儀式をすることで、殺された人間の魂を彼の者に移し替える、という風習があるというのは、想像しただけで、肌に粟立つ心もちだろう。

それでも、故藤沢周平のごとく、江戸の空気を伝えることのできた作家は、なかなかいない。






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