
二日前ほど前、小包が届いたと思ったら、Yさんから送られてきた本でした。「えっ、またコクリコ坂?」と思わず、目をパチクリさせてしまったのですが、これは映画の脚本と映画の原作であるマンガ(ああ、回りくどい言い方ですみません)であるのだそう……いいのかなあ? こんなの頂いちゃって…。
早速、マンガの方を読んだのですが、映画と話がだいぶ違う。というか、正直、あんまり面白い少女マンガではないのであります。このマンガを書かれた高橋千鶴という方は、私が小学生だった頃読んだ記憶のあるマンガ家さんだったはずなのですが(読んだ作品の方は、全然覚えてないのだけど)、こんなに絵が汚かったかな?
映画では、主人公の海の家(昔は、明治時代から続く医院だった)に同居する下宿人の女性たちも、離れに住む海の祖母もうんとステキに描かれていたのに、このマンガでは何だかやたらバタバタしているのです。
それに、カルチエラタンという、とんでもなく魅力的な文化部の建物は、原作のマンガでは影だになく、問題となっているのは、「制服か私服か?」という学生運動もどきの紛争であります。 ひと昔前の少女マンガって、こんなだったの? ついていけないなあ。
海と風間君の「異母兄妹」の疑いと彼らの悩みは映画版そのまま、とはいえ、ストーリーがまるで生きていないのです。はっきりいって、少女マンガとしても失敗作。
そんな読後感を抱きながら、今度は脚本版の本を広げてみました。すると、宮崎駿さんも、原作は「不発に終わったもの」と評価されていました。それはわかるのだけれど、なんでそんな作品を映画化しようと思ったのかな? ストーリーも、大分というか、相当違っているしね。
しかし、宮崎氏の「企画のための覚書『コクリコ坂から』について」を読んだとたん、う~んと唸ってしまいました。やっぱり、宮崎駿さんって、天才ですね。この(あんまり面白くない)マンガから、原形だけ借りて、あれほどのイメージを膨らませた作品を創造するなんて……書かれた文章の堂々たる構成や、うまさにも感嘆。
これが「一流」のクリエーターの理解力・創造力というべきでありましょう。
P.S 実は脚本そのものを読むのは、これから。考えてみれば、小説でも解説でもない「脚本」を読むのなんて、初めてかも?