映画「若草物語」を観ました。1949年の映画ですから、とても古いです。でも、とても面白かった! 続けざまに、三回も観てしまったくらいです。
以前観た時は、まだ私が高校生くらいの頃だったのですが、なぜかその時の印象ははっきりしていません。我がままで美人のエミリーを当時十六歳だったエリザベス・テイラーが演じていて、「きれいだな」と思ったものの、黒髪の印象が強いリズは金髪のくるくる縦ロールのヘアスタイルで登場するのが、少し似合わなかったような……。
でも、実を言うとオールコットが書いた「若草物語」は、子供時代の私にとって大切な愛読書でした。「小公女」とか「あしながおじさん」とぃつた名作などより、ずっと心を惹きつけられたぐらい。 今でもピンク色の背表紙のついた講談社の子供向けの児童文学シリーズを、くっきり思い出せます。
元はお金持ちでありながら、没落したマーチ家の四人姉妹。彼女たちがクリスマスの朝、目覚めるところからはじまって、久しぶりのごちそうやお菓子の並んだ食卓に大喜びしながら、飢えて、寒い部屋で過ごさざるを得ない、近所の家の話を聞き、せっかくのごちそうを彼らに持っていってやるところ――とても印象に残っているシーンです。
食いしん坊の私にとって、他人のために自分たちもめったに食べられない、おいしい食事をあきらめてしまう四人姉妹が、輝いてみえたほどです。
さて、この映画は、原作にほぼ忠実な設定となっており、作家志望の次女ジョーが主人公というのも変わりません。ジューン・アリスンがジョーを演じています。 ただ、私の好みから言えば、当時32歳だったジューン・アリスンのジョー役は「少し、違うな」とも思わせられたかも。
何しろ、このジョーは頑固! 気むつかしく、口やかましいながらマーチ一家を助けてくれるお金持ちの伯母さんと衝突はするし、自分に思いを寄せてくれる隣家の大金持ちの青年ローリーを仲良くなるものの、彼の求婚をはねつけてしまいます。魅力的ではあるのですが、姉のメグの恋愛を邪魔する様が、あまりにも大人げない。
これに比べたら、我儘で自分勝手なエミリーの方が、「憎めない」と思ってしまう私です。
「若草物語」の舞台は、十九世紀半ば過ぎ。南北戦争が起こった頃なのですね。南部社会から南北戦争を描いたものが「風と共に去りぬ」であるなら、北部の目から見たのが「若草物語」とも言えます。
小学生の頃、繰り返し読んでいた時は、まるで少女小説か少女マンガを読んでいる時の楽しさを味わっていました。しかし、今観てみると、いろんなことがわかってきます。 当時の風俗。ファッション。道徳観――マーチ家が貧しいとされながらも、ヨーロッパ旅行を夢見たり、実際に行けてしまえるような良家であることも。
これが、当時芳紀十六歳のエリザベス・テイラー。やっぱり、美人ですね。面白いことに、こんな子役の時代から、彼女の世にも珍しい「紫いろの瞳」への思い入れは強いものらしく、エミリーは淡い紫色のドレスを着て、何度も登場します。
学校で、授業中教師の悪口を書いたとかで、その石板を持たされ、立ちんぼうの罰を受けているリズの姿が可愛い! 白いエプロンドレスなぞ着て、その胸元には「エミリー」と赤い文字で刺繍などしてあるのです。
P.S
以前、カナダのプリンスエドワード島を舞台にした「赤毛のアン」は、カナダ人の間では、すっかり時代遅れの少女小説であり、モデル地にまで押しかけてくる熱烈なファンがいるのは、日本人だけだという記事をどこかで読んだことがありました。
この若草物語はどうなんだろう。歴史に残る児童文学というほど、かしこまったものではない。しかし、こんな風に永遠に灯をともし続ける少女小説の存在は、とてつもなく貴重なものではないでしょうか。
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