今日の話題は、あのルキノ・ヴィスコンティの名作「ベニスに死す」であります。かの淀川長治さんも「映画のダイヤモンド」と讃えたほどの傑作。映像、音楽、舞台となるベニスの街と避暑地の美、そして何よりも少年タジオの美しさが素晴らしい！
原作はいうまでもなく、トーマス・マンの同名の作品。私は、マンの原作も大好きで、こっそり「終生の愛読書」の一つに数えているのですが、ヴィスコンティは原作に勝るとも劣らぬ、美的世界を作り上げていて、さすが！ ２０世紀初頭のヨーロッパ世界。高名な作曲家アッシェンバッハは、療養のためベニスの避暑地へやってきます。舞台となる海辺のホテル、浜辺やホテル内を行き交う夫人たちのファッションなど、瀟洒で優雅な貴族文化の最後の残照を思わせ、ほうっとためいきをつかされます。
初老の音楽家アッシェンバッハが、ホテルのロビーで見出したのは、世にも美しい少年タジオ。亜麻色の髪に、ルネサンスの画家ボッチィチェリ描く天使のように、ノーブルな容姿。セーラー服に、金モールの釦が光る服、ボーダー模様の海水着など、華麗なファッションで画面に現れるさま（ファッション界の大御所、ピエロ・トージがデザインしているそう）は、アッシェンバッハならずとも、虜になってしまうでありましょう。
この一生を芸術に捧げた、古き良きヨーロッパの知性と感性を代表するような人物アッシェンバッハ・・・彼はその良識や年齢を顧みず、タジオを目で追い続け、ついにはベニスの街を散歩するタジオ一家を追いかけてゆくほどになります。これだけだったら、ただの変態おじさんですが、タジオに話しかけようとしながら、言葉もかけられないシャイさが、奥ゆかしさ（？）を醸しているみたいですね。
しかし、この時、ベニスの街は船で運ばれたコレラが、蔓延する死の街と化しつつありました。美しい街が、徐々に冒されつつあるさまは、壮麗な建築が崩れつつあるさまを思わせ、鬼気迫ります。私もベニスを訪れたことがありますが、この街の華麗で、病的な美しさは、タジオの美貌そのもののようです。芸術家を死の淵に誘う、「つれなき美女」のような少年。
結局、アッシェンバッハはコレラに罹り、浜辺で遊ぶタジオを見ながら死を迎えます。自らの若さを取り戻そうとでもするかのように、髪を染め、化粧をした異様な姿で・・・。
この映画で他に印象的だったのは、タジオの母を演じたシルバーナ・マンガーノの美しさ。貴族の貴婦人然とした優雅な姿ですが、この女優はイタリアではソフィア・ローレンと並ぶ大女優。「ソフィア・ローレンがタジオのおっかさんを演じたら、おかしいでしょう」と言った方がいましたが、確かにあのバナナの入りそうな大きな口をしたローレンでは・・・無理ですね。
私が不思議に思うのは、アッシェンバッハの視線を受け止めるタジオの心。彼は時々、アッシェンバッハの方を振り返るのですが、「このおじさん、ちょっとからかってやれ」という気持ちなのか、いかにも名士然とした紳士に興味をもたれてまんざらでもないのか－－それとも自分の美貌に惹きつけられる人には慣れっこになっていて、何も感じないのか？ でも、私の希望もアッシェンバッハのような死に方。世にも美しいものを見ながら、恍惚として、あの世へ旅立てたら、素敵。
お母様も、ノエルさんも、お体に気をつけて、無理をなさらずに、介護をなさってください。ノエルちゃんは、お元気で何よりです。ヘルムート・バーガーとビヨン・アンデルセンの違いは、ヘルムートは、最期まで俳優を続けたこと、ビヨンは、俳優を続けなかったことでしょうか。サンローランの映画は、いつか観てみたいです。
それにしても、｢ベニスに死す｣のビヨンは、綺麗ですね。ダーク・ボガードもいい役者さんで、｢地獄に堕ちた勇者ども｣や｢愛の嵐｣なども、印象に残っています。
お父様、くれぐれもお大事に。
実は、ここのところ忙しく、文章を書いたり読んだりすることができない、という状況だったのです。
恥ずかしながら、ルーさんのコメントを読むまで、ヘルムート・バーガーが亡くなってしまったということも知りませんでした……ウ～ン……今でも、私の中では「家族の肖像」の若く美しい彼の姿が、くっきり残っているのですが、７９歳とは…時間は、どんな人の上にも、平等に流れてゆくのですね。
最近では、デザイナー、イブ・サンローランの伝記映画に、晩年のサンローランに扮して出演しているという噂を聞きました。
サンローランの伝記映画は、すでに二本ほど観ているのですが、これは知りませんでした。
ヘルムートとサンローランとは――なんとも、面白い組み合わせ！
年を取ったヘルムートに再会できる――今度、この映画を見てみませう。
ルーさんは、もうご覧になりましたか？
私の近況を話すと、父が大病で大手術を終え、今、自宅で療養しているところです。
喉の声帯を取ってしまったため、もう話せなくなってしまっているので、ブギーボードという電子黒板を使って、父とコミュニケ―ションを取る日々が、新たに始まりました。
ケアマネジャーさんや、介護士さんの助けも借りないといけないでしょう。
ルーさんの方は、御主人やお母様はお変わりなくいらっしゃいますか？
我が家のノエルも、この８月で１２歳。大型犬としては、すっかり高齢犬ですが、まだ元気でよく食べ、楽しく暮らしてくれています。
犬がいると、空気をなごやかにしてくれるなあ……。
ヘルムート・バーガーが亡くなり、私は、本と映画に憧れていた若い日々を思い出しました。亡くなったという記事のコメント欄を観ましたら、大好きでした。とコメントしている方も多くて、人気があったのだなあと思います。亡くなった記事の写真が、若くて美しい彼のポートレートで、改めて綺麗な人だと思います。おやすみなさい。ノエルちゃんは、お元気ですか。
三浦春馬という俳優さんについては、恥ずかしながら今まで、名前しか知りませんでした（元々、日本の芸能界については疎いのです）。
今回の悲しい死が、メディアを騒がせ、私も遅ればせながら、その人となりをＴＶ越しに知るようになったのですが、確かに真面目で、ピュアな感じの人だったようですね。それに、細面の面立ちが、ルーさんのおっしゃるように、ヘルムート・バーガーを彷彿とさせます。
どうして、死んでしまったのだろう？ 何が苦しくてたまらなかったのだろう？
誰かがどこかで書いていましたが、昔に比べてドラマの需要がなくなった分、俳優のギャラは厳しくなっているとのこと。それに、こんなに娯楽やコンテンツに溢れ、映画やドラマの賞味期限が短くなっている今、役を演ずることに命をかける俳優さんには、相当つらいものがあったのかもしれません。
繊細な心の持ち主にとっては、芸能界で生きていくだけで大変だったはずだし。
それと、ロバート・ワグナーの殺人疑惑――私もニュースで知ってショックでした。ロバート・ワグナーについてはあまり知らなくて、奥さんのナタリー・ウッドの印象が強烈です。
まだ四十歳過ぎくらいで、ボートで水死したと聞いていたのですが、それが殺人事件の疑いがあったとは……まるで、ハリウッドを舞台にしたミステリー小説のよう。
それと、この間は、エルビス・プレスリーの孫だという青年がショットガンで自らの命を絶ちましたね。
偉大な祖父の名に苦しんでいた――と書かれていましたが、人もうらやむセレブであることに苦悩する人もいるとは……本当に、人の心の中というのはわからないものだなあ、と痛感してしまいます。
どうぞ、これ以上悲しい事件が続きませんように――。
私は、ブルーコメッツの井上忠夫さんが、初恋の芸能人でしたので、井上さんが自殺したときもつらかったです。フルートの音色が、忘れられなくて。私は、グループサウンズ世代です。
アメリカの俳優のロバート・ワグナーも、好きでしたので、ナタリー・ウッド殺害で疑惑の人となり残念です。
三浦君は、若い生命を大切にしてほしかったです。
そして、彼の代表作である「ルードヴィヒ」のリメイク版に再び主演したとも書いてありました（日本では、公開されなかったらしいですが）。
何十年か後のリメイクなので、４０歳で死んだルードヴィヒを演じるのには、年を取り過ぎて無理なのでは？、とその記事を読んだ時思ったのですが、評は好意的なものが多いみたいです。 よかった
「ドリアングレイの肖像」はオスカー・ワイルドの小説が原作ですよね。私も観たいなあ、と思っていたのですが、いまだにその機会はないままです。（「雨のエトランゼ」も、「悲しみの青春」も、未見のままであります）
どこかで、ヘルムートが、あのリズ・テイラーとラブロマンスを演じた作品があると聞いて、何だか面白そう！と思ったのですが、これもまだ観ぬままです。
でも、リズとヘルムートの組み合わせって――何だか、何万光年もの隔たりがあって、興味あるなあ～。ミスマッチの魅力って、こいうこと？
アラン・ドロンは、下品だといわれていました。（そこが、魅力でもあるのですが）
レッドフオードは、健康的な美男子でした。
ノエルさんのおっしゃるように、ヘルムート・バーガーは、エキセントリックで、狂気を秘めた危うい魅力でした。
「ドリアン・グレイの肖像」「雨のエトランゼ」は、B級作品ですが、とにかくヘルムート・バーガーが、美しかったです。
ドミニク・サンダと姉弟を演じたビットリオ・デ・シーカの「悲しみの青春」では、私は、号泣しました。
友だちが「ビスコンティが亡くなったときに、狂乱して救急車で運ばれた」と言っていました。
ネットで見ますと、ビスコンティの財産を使い果たして、お金がなく、戸籍上の妻のイタリアの女優の年金で暮らしているですとか、伯爵夫人に養ってもらっているとかありましたが。
放蕩の果てに、容色が衰えたことが、残念です。
日も長くなったし、一日の時間が増えて得したような錯覚にすら陥ってしまうのですが、あまり何もできていません。ルーさんの方は、いかがお過ごしですか？
ヴィスコンティは、７０年代、日本の若い女の子たちの間で凄いブームとなり、「ベニスに死す」の美少年タジオを演じたビョルン・アンドレセンは日本のＣＭ（チョコレートか何かの）に出たとかいう事も耳にしたのですが――考えてみればルーさんの世代にあたるのかも！
「アンアン」も当時は、スゴクとんがったお洒落な雑誌だったということも聞いています。
ルーさんは、ヘルムート・バーガーがお好きだったとのこと。私は「家族の肖像」が何だか好きで、繰り返し観たのですが、あの作品でのヘルムートは輝く金髪に、すこぶるファッショナブルな服がステキで、本当にゲルマンの美神を絵に描いたようでした。
まるで、後光が差しているみたいだった・・・・・・（ただ、ジーンズ姿が似合っていなくて、やっぱりアメリカのスターとは違うなあと思ったことを覚えています）。
「ルートヴィヒ」も３時間超はある大作なのですが、若きババリアの狂王ルートヴィヒを演じるヘルムートが、「えっ、どうしたの？」というくらいの、迫真の演技でした。
まるで、実在のルートヴィヒの霊か何かが、乗りうつっているかのよような異様なムードを醸し出していて、今もくっきり目蓋の裏に焼き付いています。エリザベートを演じたロミーとの黒いコウモリ傘をさして、雪の中を歩くシーンも心に残っています。
友人に、ヘルムート・バーガーの大ファンだった人がいたのですが、アラン・ドロンの華やかで品のない美しさとはまったく別種の魅力がある言っていました。
でも、確かにヴィスコンティ亡き後の、ヘルムートは何だかおかしなことになってしまいましたよね。
インタビューの記事を目にしたことがあるのですが、そこでの言葉を聞くと、知的で感性の研ぎ澄まされた人だということがわかるのに、容色も衰え、生活破綻者のような暮らしぶりになってしまっているようです。
でも、ヴィオスコンティほどの名匠に愛され、映画史に燦然と輝く作品に主演しているのだから、俳優としては幸福だったといえるのかも。
それに、あんなにエキセントリックな人だからこそ、ルートヴィヒをあれほどうまく演じられたのだろうし。
Ｐ．Ｓピーターラビットについて書かれていましたが、本当に可愛いですよね～🐰 私は、ピーターのマグカップで毎日、牛乳を飲んでいます🥛
ノエルさんは、ヴィスコンティがお好きなのですね。トーマス・マンも。トーマス・マンは「ベニスに死す」「トニオ・クレーゲル」を読みました。
ヴィスコンティは、難解ですが、私も、好きです。やはり、私たちの世代では、非常に流行っていました。私は「地獄に堕ちた勇者ども」「ベニスに死す」「ルードヴィヒ」「家族の肖像」などを観ました。「家族の肖像」は、岩波ホールで観ましたが、後は、テレビだったような。
私は、ビスコンティの寵愛を受けていた、ヘルムート・バーガーが、大好きでした。
当時は、アラン・ドロンと人気を争うほどの美男子でした。
高校2年のとき「雨のエトランゼ」の新聞広告を見て、一目で好きになり、「ドリアン・グレイの肖像」「悲しみの青春」などを観ました。
ヘルムート・バーガーが好きになり、ビスコンティの映画を観るようになりました。
ビスコンティが亡くなってからは、輝きも美貌も失いました。
私は、実は「ココリコ坂から」も大好きです。
「モーリス」も、テレビで観ました。綺麗な映画でした。
そして、スクリーンは、毎月買っていました。
ノエルさんは、本当に、よくいい映画を観ていらっしゃいます。それも、私が、青春時代に観た映画ばかり。
カトリーヌ・ドヌーブも、デビット・リーンも、高校か大学時代に、観ました。「ドクトルジバゴ」がよかったです。
私は、ピーターラビットも好きです。
昔の映画のことを、よくご存じですね。
おやすみなさい。