ノエルのブログ

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リズの瞳に乾杯

2016-02-04 20:09:02 | 映画のレビュー
先日、「いそしぎ」と」いう映画を観た。衛星放送されたものだけれど、この題名を聞いただけでエリザベス・テイラーとリチャード・バートン共演の映画だとわかる人は、かなりの映画通のはず。


これが、映画中の1シーン。あらすじをいうと、リズはここでは未婚の母であり、海辺の一風変わったコテージに住んでいる無名の女流画家。
彼女は、世間の良識に流されない生き方をしているのだが、裁判所の決定に従って、息子を学校に通わせざるをえなくなる。その寄宿学校の校長であり、牧師でもあるエドワード(これをバートンが演じている)と恋に陥るというストーリーなのだが、当時リズとバートンは実生活でも、夫婦だったというおまけつき。


リズとバートンのコンビ作映画は、確か「クレオパトラ」も含めて、13作ぐらい作られていて、くだんの「クレオ…」もどうしようもない駄作(ただし、豪華絢爛な失敗作ではあったが)。 演技の大根ぶりには定評のあるリズのことだから、「いそしぎ」も大したことはないかも――と思っていたら、なかなか良い映画なのだ。海辺の風景も、リズとバートンの出会いと別れも、題名が海岸に生息する鳥の種類の名だというウイットの効いた演出も、心に残った。

ただ、驚いたのはリズのいでたち。冒頭、スクリーンに姿を現した時、「う~ん、この頃のリズ・テイラーは40歳前後だったのかな」と思い、その印象はずっと続いていたのだが、後で確認するとこの映画撮影どきの彼女は、まだ33歳だったというではないか! 
何なのだろう……上の写真からもにじみ出る「中年」の雰囲気は……?  黄色いカナリア色のドレスや上にかぶった白いストローハットといい、若さを帳消しにしている気がするのは、私だけか。

そして、リズといえば、「世界最高の美女」の称号の外、「藤色の瞳」があまりにも有名。
藤色とは、どういうことか? というとそのものずばり、紫の瞳を持つということ。このパープル・アイの出現率は極めて稀で、青い目、緑の目、茶色の目などさまざまあれど、こんな瞳を持った人に会えるのは、一生に一度あるかないかくらい珍しいらしい。

エリザベズ・テイラーも、自分の瞳の色が自慢だったようで、映画撮影時の楽屋もラベンダー色に飾り立てていたというエピソードを聞いたことがあるのだけれど、この「いそしぎ」でも、淡い紫色のドレスを何回も着ているのだ。 ラベンダー色のブラウスやセーターとか。 しかしそれが似合っているかというと、微妙なところ。結構太っているようだし、小柄で頭が大きいのでは?

大体、エリザベス・テイラーというスターは、子役時代の「緑園の天使」「名犬ラッシー」の頃の大人の美貌を持った少女から、「日のあたる場所」の頃の輝くばかりの美しさが、絶頂で、30歳過ぎたころには、すでに容色に衰えが兆していたという不思議な存在。
「全米中の女性は、かつてエリザベス・テイラーになることを夢見ていた。そして、その願いはかなった」
という皮肉に満ちたジョークが出回ったのは、リズが無茶苦茶太っていた40代の頃だったと思うけれど、そうした大女優・絶世の美女にあるまじき滑稽さがあるのも、リズの魅力なのでは?  

色々な意味で面白く、スケールの大きな(何と、8回も結婚したのだから)映画スター。こんな人がいたのも、映画黄金期のハリウッドだからこそで、21世紀には、もうこういったスターは現れないだろうなあ。
   
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