ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

絵本

2017-01-17 21:01:09 | 本のレビュー

「絵本」 玄光社ムック。illustration別冊。2010年刊行

これまた図書館で借りてきた本。見ての通り、絵本を紹介した特集号なのだが、とんでもなく中身の濃い一冊!
現代の絵本作家をすべて網羅し、紹介しているといってもいいほどなのだが、インタビューや創作の秘密など特集が組まれているのは、かがくいひろし、酒井駒子、いせひでこの三人の作家。

かがくいひろしさんのことを今まで知らなかったのだが、この表紙の愛らしくもユーモラスなダルマさんが、その手になるもの。惜しくも若くして亡くなられたそうなのだが、残された「だるまさん」シリーズの絵本はヒットし、多くのファンを持つという。ぜひ、読んでみたい。

そして、「大人の絵本」ジャンルを開拓したとも見なされ、高い知名度を持ついせひでこさんと酒井駒子さん。やっぱり、この二人の絵はステキ。
   
いせひでこの絵本は、「ルリユールおじさん」「大きな木のような人」「にいさん」の三冊を持っているのだが、彼女の絵には宗教的な高みや求道的なストイックさを感じてしまう。
私は、十代から二十代にかけてシベリアン・ハスキーを道連れにしていたのだが、いせひでこさんもこの北国の犬を飼っていて、その思い出の記である「グレイが待っているから」を愛読書にしてからの長いつきあい。
ロングインタビューで「絵は毎日かいてこそ、プロ」の言葉からはじまるさまざまなコメントには、激しく妥協しない人柄が伝わってきて、静謐な格調の高い水彩画を知る者としては、すこし意外な感。
本当に綺麗で、高尚な絵本なのだけれど、どこかこちらを拒絶するような厳しさも感じる――というのは、私の誤解かな?


            
対して、酒井駒子さんの絵は、柔らかく、ちょっと木炭画のニュアンスも感じさせる煙るような雰囲気をたたえている。
やっぱり、こちらの絵の方が好き。幾多の文芸書の表紙に使われていることからもわかるように、物語を感じさせる絵でもある。
上の写真では、酒井駒子の絵本がいくつも紹介されているだけれど、見たらほとんどというか「きつねの神様」も「「くまとやまねこ」、「ビロードのうさぎ」もノエルの本棚に並んでいる……大好きな絵本作家であります。

巻末には、全国の絵本屋が紹介されていて、「行ってみたいなあ」と涎が出てしまいそう。神保町には、すごくチャーミングな絵本書店があるらしいし、学生時代にのぞいたきりで記憶から薄れている青山の「クレヨンハウス」もまた訪れたい!
思うに、絵本とは幼い子供のためだけではなく、大人にとっても幼年時代へ回帰させてくれる「どこでもドア」みたいなものであるはず。
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