事 蹟
一、理事長氏名 木村 勝之助
二、組合員数 四百八十九名
三、組合員の従事する漁業及副業 組合漁業を左に区別して
一、地元漁業 (沖家室地先)
二、出稼漁業 (馬關組、筑前組、朝鮮漁業、台湾漁業に就きて)
就中出稼漁業は組合存立以前よりすでに団体を組織して出漁せるものあり
組合員の漁業として茲にこれを掲げくるか当らざるか如しと雖も組合員に
して地元漁業より出稼漁業に傳せるものありその経路と方法を記するは
もっとも要用のことなりと信す。
一、地元漁業
当漁業組合地先は大島郡家室西方村の一部に属し大水無瀬島と小水無島との
中間に一大岩礁あり、伊賀磯と名つけ他にも岩礁散在して潮流急激近辺の海底
に砂州を生じ種々の小魚蝦蟹類を産し自然に魚類を誘致し四時間断なき最良
漁場となりとす。
貞享初年の頃、人家少なく人口わづか二百人に過ぎずその当時は住民農を以て
本業と為し農業の間をもって漁業を試みるのみ、同三年に至り阿波の国より
漁業修練者数名を聘し以て釣漁法の伝習を受け漁業の利益を知りて漁業を重んずる
に至り、年とともに漁業者の数と漁獲高を増進し、一面に於いては地民は増加し
限りある土地は自ら狭隘を訴ったうるに至り、到底農業の頼むべかざるを覚悟し
農業に代ゆるに漁業を以てするにしかずと遂に永年の意思を翻してこの時方針を
探ることを決定せり。爾来日進月歩地民悠々増し漁業悠々拡張し駿々として漁業の
発展を見るに至る、されども現今に至りては一般漁業者の増加は暫時漁獲高の減ずる
に至り、漁具を精巧にし漁法を改良するにあらざれば従前の漁獲の半ばをも得ること
能わざるに依りその結果は乱獲酷漁に陥り易くもっとも注意を要する事たり、漁業
従事者は之等に細心の注意を払い漁業を営むも又一には気候潮流其の他の関係により
毎年漁期において來遊する魚族も魚道を変じて近づかず又は餌料となるべき小魚類の
繁殖せざる為に、魚族を誘致せざるにより予想せる漁獲を見ることを得ざる状態にあり
故に地元漁業に従事する者は漁業上総ての調査研究を怠らず別項記載の如く魚類の餌付
を為して魚類を誘致し新発明の漁具を使用し、または禁止漁具の使用許可を受けて漁獲
の増加に力むる県郡以外に発展して魚利の増収に力むる等いずれも魚利の増進に力めて
止まず。
一、理事長氏名 木村 勝之助
二、組合員数 四百八十九名
三、組合員の従事する漁業及副業 組合漁業を左に区別して
一、地元漁業 (沖家室地先)
二、出稼漁業 (馬關組、筑前組、朝鮮漁業、台湾漁業に就きて)
就中出稼漁業は組合存立以前よりすでに団体を組織して出漁せるものあり
組合員の漁業として茲にこれを掲げくるか当らざるか如しと雖も組合員に
して地元漁業より出稼漁業に傳せるものありその経路と方法を記するは
もっとも要用のことなりと信す。
一、地元漁業
当漁業組合地先は大島郡家室西方村の一部に属し大水無瀬島と小水無島との
中間に一大岩礁あり、伊賀磯と名つけ他にも岩礁散在して潮流急激近辺の海底
に砂州を生じ種々の小魚蝦蟹類を産し自然に魚類を誘致し四時間断なき最良
漁場となりとす。
貞享初年の頃、人家少なく人口わづか二百人に過ぎずその当時は住民農を以て
本業と為し農業の間をもって漁業を試みるのみ、同三年に至り阿波の国より
漁業修練者数名を聘し以て釣漁法の伝習を受け漁業の利益を知りて漁業を重んずる
に至り、年とともに漁業者の数と漁獲高を増進し、一面に於いては地民は増加し
限りある土地は自ら狭隘を訴ったうるに至り、到底農業の頼むべかざるを覚悟し
農業に代ゆるに漁業を以てするにしかずと遂に永年の意思を翻してこの時方針を
探ることを決定せり。爾来日進月歩地民悠々増し漁業悠々拡張し駿々として漁業の
発展を見るに至る、されども現今に至りては一般漁業者の増加は暫時漁獲高の減ずる
に至り、漁具を精巧にし漁法を改良するにあらざれば従前の漁獲の半ばをも得ること
能わざるに依りその結果は乱獲酷漁に陥り易くもっとも注意を要する事たり、漁業
従事者は之等に細心の注意を払い漁業を営むも又一には気候潮流其の他の関係により
毎年漁期において來遊する魚族も魚道を変じて近づかず又は餌料となるべき小魚類の
繁殖せざる為に、魚族を誘致せざるにより予想せる漁獲を見ることを得ざる状態にあり
故に地元漁業に従事する者は漁業上総ての調査研究を怠らず別項記載の如く魚類の餌付
を為して魚類を誘致し新発明の漁具を使用し、または禁止漁具の使用許可を受けて漁獲
の増加に力むる県郡以外に発展して魚利の増収に力むる等いずれも魚利の増進に力めて
止まず。