殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

お引っ越し

2009年09月01日 11時45分06秒 | みりこんぐらし
朝、家でいつものごとくタラタラしていると

「ワ~ッ!」という叫び声と共に

「ガラガラ…ガシャン!」

大きな音がした。


何事か!

足取りも軽く外へ出る物見高い私よ。

な~んだ…向かいのアパートが引っ越しの最中。

2階から運び出した家具が、地面に落下したのだった。


「あ~あ…」

数人の業者が、その残骸を囲んで立っている。

私もつられて、つい「あ~あ」と言ってしまった。


黄色の作業着と帽子を被った5人が、いっせいに振り返る。

…おじいさんばっかり。

おばあさんの私が、人をおじいさんと呼ぶのは失礼だろうが

こうまでおじいさん揃いだと、派手な作業着も痛々しさすら漂う。


引っ込みがつかないので

「暑いのに大変ですね!」

と元気に言う。

涼しいけど、このさい仕方がない。


「いいの、いいの。

 ここの荷物、どう処分してもらってもいいと言われてるから」

わたしゃびっくりして出てきただけだ。

荷物がどうなろうと、知らんわい。


でも…と、彼らは言う。

「ホウキが無い」

散らばったカケラを掃除したいが、ホウキを忘れたと言う。

こういう作業に慣れていないらしい。

    「ああ、貸してあげますよ」

出しゃばりな性分ゆえ、さっそくホウキと缶ジュースを持って行く。


彼らが言うには、元は別の会社だったのが

昨年から引っ越しの仕事も請け負うようになったらしい。

「こないだまで内勤だったのが、いきなり引っ越しをやれと言うんじゃ」


あ~…わかるよ…。

事務職が長かったんでしょうね。

同じく驚いて、顔を出した近所の人たちに

「すみません」も言えないもんねぇ。


新しく人を雇う余裕が無いので、年配の社員が駆り出されていると言う。

おそらく退職を促されているのだ…

年取って、初めての肉体労働はコタえるだろうな…と思う。


「この部屋は、荷物を残したままドロンしたんじゃ」

こんな依頼が時々あるそうだ。

近所の人たちも交えて、不況だもんねぇ…などと楽しくおしゃべり。


「欲しい物があったら言いなさい。家まで運んであげるよ」

と親切に言ってくれるが、ドロンした人の家財道具なんか欲しくないぞ。


頑張ってね…ホウキは古いからあげる…

と言い、お互いに手を振って立ち去る。


トラックには“お引っ越しのワカイ”と書いてあった。

…若くないだろ。
コメント (12)
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