朝、家でいつものごとくタラタラしていると
「ワ~ッ!」という叫び声と共に
「ガラガラ…ガシャン!」
大きな音がした。
何事か!
足取りも軽く外へ出る物見高い私よ。
な~んだ…向かいのアパートが引っ越しの最中。
2階から運び出した家具が、地面に落下したのだった。
「あ~あ…」
数人の業者が、その残骸を囲んで立っている。
私もつられて、つい「あ~あ」と言ってしまった。
黄色の作業着と帽子を被った5人が、いっせいに振り返る。
…おじいさんばっかり。
おばあさんの私が、人をおじいさんと呼ぶのは失礼だろうが
こうまでおじいさん揃いだと、派手な作業着も痛々しさすら漂う。
引っ込みがつかないので
「暑いのに大変ですね!」
と元気に言う。
涼しいけど、このさい仕方がない。
「いいの、いいの。
ここの荷物、どう処分してもらってもいいと言われてるから」
わたしゃびっくりして出てきただけだ。
荷物がどうなろうと、知らんわい。
でも…と、彼らは言う。
「ホウキが無い」
散らばったカケラを掃除したいが、ホウキを忘れたと言う。
こういう作業に慣れていないらしい。
「ああ、貸してあげますよ」
出しゃばりな性分ゆえ、さっそくホウキと缶ジュースを持って行く。
彼らが言うには、元は別の会社だったのが
昨年から引っ越しの仕事も請け負うようになったらしい。
「こないだまで内勤だったのが、いきなり引っ越しをやれと言うんじゃ」
あ~…わかるよ…。
事務職が長かったんでしょうね。
同じく驚いて、顔を出した近所の人たちに
「すみません」も言えないもんねぇ。
新しく人を雇う余裕が無いので、年配の社員が駆り出されていると言う。
おそらく退職を促されているのだ…
年取って、初めての肉体労働はコタえるだろうな…と思う。
「この部屋は、荷物を残したままドロンしたんじゃ」
こんな依頼が時々あるそうだ。
近所の人たちも交えて、不況だもんねぇ…などと楽しくおしゃべり。
「欲しい物があったら言いなさい。家まで運んであげるよ」
と親切に言ってくれるが、ドロンした人の家財道具なんか欲しくないぞ。
頑張ってね…ホウキは古いからあげる…
と言い、お互いに手を振って立ち去る。
トラックには“お引っ越しのワカイ”と書いてあった。
…若くないだろ。
「ワ~ッ!」という叫び声と共に
「ガラガラ…ガシャン!」
大きな音がした。
何事か!
足取りも軽く外へ出る物見高い私よ。
な~んだ…向かいのアパートが引っ越しの最中。
2階から運び出した家具が、地面に落下したのだった。
「あ~あ…」
数人の業者が、その残骸を囲んで立っている。
私もつられて、つい「あ~あ」と言ってしまった。
黄色の作業着と帽子を被った5人が、いっせいに振り返る。
…おじいさんばっかり。
おばあさんの私が、人をおじいさんと呼ぶのは失礼だろうが
こうまでおじいさん揃いだと、派手な作業着も痛々しさすら漂う。
引っ込みがつかないので
「暑いのに大変ですね!」
と元気に言う。
涼しいけど、このさい仕方がない。
「いいの、いいの。
ここの荷物、どう処分してもらってもいいと言われてるから」
わたしゃびっくりして出てきただけだ。
荷物がどうなろうと、知らんわい。
でも…と、彼らは言う。
「ホウキが無い」
散らばったカケラを掃除したいが、ホウキを忘れたと言う。
こういう作業に慣れていないらしい。
「ああ、貸してあげますよ」
出しゃばりな性分ゆえ、さっそくホウキと缶ジュースを持って行く。
彼らが言うには、元は別の会社だったのが
昨年から引っ越しの仕事も請け負うようになったらしい。
「こないだまで内勤だったのが、いきなり引っ越しをやれと言うんじゃ」
あ~…わかるよ…。
事務職が長かったんでしょうね。
同じく驚いて、顔を出した近所の人たちに
「すみません」も言えないもんねぇ。
新しく人を雇う余裕が無いので、年配の社員が駆り出されていると言う。
おそらく退職を促されているのだ…
年取って、初めての肉体労働はコタえるだろうな…と思う。
「この部屋は、荷物を残したままドロンしたんじゃ」
こんな依頼が時々あるそうだ。
近所の人たちも交えて、不況だもんねぇ…などと楽しくおしゃべり。
「欲しい物があったら言いなさい。家まで運んであげるよ」
と親切に言ってくれるが、ドロンした人の家財道具なんか欲しくないぞ。
頑張ってね…ホウキは古いからあげる…
と言い、お互いに手を振って立ち去る。
トラックには“お引っ越しのワカイ”と書いてあった。
…若くないだろ。