殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

相談

2009年09月21日 19時30分35秒 | みりこんぐらし


時おり、人さまから“相談”を持ちかけられる。

しかしこれは、私が博学で人格優れ、口が堅いからではない。

家でブラブラしているからだ。


古い知り合いのヒロコから、5年ぶりに電話がかかってきた。

「会いたいわ~!食事でもしない?」

変に明るいこのテンション…絶対なんかあるのだ。


「ちょっと相談したいこともあるし~」

ほれ…これが相談じゃ。

5年も音信不通の者に相談して、どうにかなることなどありゃ~せんのじゃ。

中年女の相談事など、ろくなことではない。

金か男か家のこと…でなければ変な商売か宗教じゃわい。


本当に相談したいなら、いい年をしてシロウト相手につべこべ言うよりも

それ相応の機関に行けばよいのだ。

「相談」と言えば、人の悩み知りたさにノコノコ来ると思っている。


しかしまあ、私も鬼ではない。

会いたいと言う者には会う。

仕事が忙しい…の口実が使えないし

会うまで何回も電話がかかってきてめんどくさいからだ。


車で30分ほどの待ち合わせ場所にノコノコ行く。

おいしい和食の店ということであったが、どうも雰囲気がおかしい。

入った時、ヒロコはいかつい系の若い店主に目配せをした。


「みりこんさん、仕事する気、無い?」

出た…。

「人を健康にして、幸せにして、自分もハッピーになる

 まったく新しいシステムのネットワークビジネスなの。

 私、みりこんさんにぜひビジネスパートナーになってもらいたいの」

美しげな横文字を使いたがるのが、こやつらの特徴じゃ。


「頭のいい人は、この話を聞いてたいていピンとくるのよね」

      「あ、私、バカだから」

「不況だし、年金もあてにならないし、将来が不安じゃない?」

     「全然」

「今頑張っておけば、終生お金が入り続けるのよ」

     「いらない」

「知り合いを勉強会に連れて来るだけでいいのよ」

     「わたしゃ嫌われ者だから、誰も来ないよ」


やれやれ…。

こういう人間は洗脳されてしまっているので、しつこい。

これさえやれば老後が安心と言うなら、自分だけでやれ。

そして輝かしい老後を迎えたあかつきには

誘っても話に乗らなかった馬鹿者をあざ笑えばいいではないか。


早々に席を立つのも良かろうが、それでは面白くない。

それに、ここの食事はボリュームもあってなかなかいい。

次はデザートだし、まだ帰るわけにはいかんのじゃ。


店主がデザートを持って、にこやかに席に来る。

「ステキな方ですね…店に入ってこられた時からオーラを感じていました」

などと、今まで何人にも言ったであろうお世辞を言う。

いかつい系がこういうことを言うと、女性にはかなり効果があるのを

よく知っているのだ。


雰囲気から察するに、この男がヒロコの組織のボスらしい。

この店は、一味のサロンだったのだ。

自分の店をどう使おうと勝手だけど、せっかくいい味出してんのに惜しいのぅ。


「ボクもこれを知って、もうこれしかない!と思いました。

 社員も賛同してくれて、仲間にも恵まれて…」

男は熱く語る。


おや…私はかわいく!問う。

    「この“味ひとすじ”というのは?“包丁一本”というのは?」

テーブルに店主や従業員のポーズをとった写真が貼ってあり

そんな文句が並んでいるのだ。


「それは店をやっていく上での心構えで…

 もちろん、この気持ちに偽りはありませんよ」

     「まあ~…では2足のワラジということですの?」

「そうなんです…世の中、いつどうなるかわからないですからね。

 経営者としては保険みたいなもんです。

 今じゃ店のほうが保険になりそうですけどね…はっはっは」

    「お~ほほほ…じゃあ味ふたすじ、包丁じゃなくてワラジ2足と

     書き換えなすったらよろしいのに」

「…」

顔を見合わせる店主とヒロコ。

デザートも食べ終わった…帰るべ。


駐車場までヒロコが追いかけて来て言う。

「ボスはバツイチで養育費が必要なの。

 別れた子供さんのために、このビジネスをやってるのよ」 

泣き落としのつもりらしい。


それがどうしたというのだ。

    「養育費だけじゃなくて、あんたがくっついたから

     ますますものいりなんだろっ」

んじゃ!

さっさと帰る。

ああ、今日も楽しい1日だった。
   
コメント (17)
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