友人と、夫婦や男女関係について語り合う。
彼女は夫や周囲の男性から
「君は何でも出来るからな…」とよく言われるそうだ。
確かに仕事も家事も、何でも出来る子だが
それではいかにもカワイゲが無いみたいだ…と彼女は言う。
「少し甘えてみるのもいいかもよ」
何も出来ない身の上でありながら、私は偉そうに言う。
剛柔にわたって何でも出来ることは
イクサやキキンの無い現代日本において、プラスばかりだとは言い切れない。
社会で、家庭で、人々が求めるのは自分よりちょっとダメな人間。
自分の存在価値が高められる人間。
自分のほうが優れていると思わせてくれる人間。
上司は、バリバリ仕事が出来て人気のある部下を嫌い、芽を摘む。
自分を差し置いて評判が上がったり、追い越す懸念があるようでは
カワイゲが無くて憎たらしいからだ。
いまどきデキがいいのを喜んでくれるのは、親だけだ。
もしも職場で、心当たりがないのにつらい思いをしている人がいたら
試しに一度、トロいダメオやダメコを演じてみるといい。
上司が口でなく、本心で求めている人材になるほうが
解決する可能性がある。
テレビに出ている男たちを見よ。
軒並みブサイクなおじんのオンパレード。
でなければチビかデブかハゲかヅラだ。
この条件に該当していたら、人気者にしてくれる。
視聴者が求めているのではないのだ。
男の制作者がそれを求めている。
同性を起用するにあたり
自己嫌悪や劣等感を持たずに心地よく仕事が出来る者を選ぶ。
よく出ているので、視聴者もうっかり人気者と認識する。
自分よりちょっと気の毒…と思える者に優しくしたり
引き立ててやりたいのが男の心理である。
あくまで自分比なのが感じ悪いが、本人がそう思いたいのだから仕方がない。
この現象は、ことに某国営放送のアナウンサーに顕著だ。
出来高に大きく左右されないサラリーマン世界だからではないか…
などと勝手に考える。
私は、美しい男は入社試験の段階でハネられると踏んでいる。
男は案外ヤキモチ焼きなのだ。
女にもそんなところはある…
しかし男のほうが、あまり表に出さない分、ずっと強いと思う。
イケメンは、そんな男たちの魔の手を逃れ
ジャニーズ事務所あたりに保護されている。
これらが事実であってもなくてもいいのだ。
そんなことを考えながらテレビを見ると、面白いぞ。
かつて、夫は愛人が出来るたびに言った。
「おまえは一人でも生きていける…
けど、あいつはオレがいないと生きられないと言うんだ…」
我々母子を捨て、愛人と一緒になりたいために
そんな理由をつける。
何回目かに言われた時、私ははたと気づいた。
「カワイソウ」は「カワイゲ」の母ではないかと。
どうやら夫から見て、私はカワイソウではないらしい。
よって、カワイゲが無いから別のカワイソウを探すのだ。
いや、カワイソウだよ…私だって。
邪魔にされても行く所が無いし、愛人よりよっぽど気の毒さ。
でも、それを表に出すのは恥と思い込んでいた。
誰も喜ばない、自己満足のちっぽけなプライドにこだわって
おいしい所を全部他人に持って行かれていたのだ。
いやはや…間違いであった。
以後、強がるのは控えることにした。
「できな~い」「わからな~い」「おねが~い」と言えば
喜んで頑張ってくれる。
楽だ…。
それはさておき…
オレがいないと生きていけないということは、別れたら死ぬということか…。
楽しみに待っているのに
どいつもこいつも、別れたっていっこうに死なない。
どうなっとるんじゃい…まったく。