義母の通販生活は相変わらず快調だ。
先日「今なら2週間分のサンプルが、なんと千円!」
とCMしているサプリメントを買っていた。
でもテレビで見る小さい袋とは違って、箱が届いている。
「電話したら、病気の悩みを親身に聞いてくれてね…
深刻な状態だし、サンプルじゃあすぐ無くなるから
夫婦で3ヶ月続けて飲んでくださいと言われた…」
“深刻”と言われ、満足そうな義母。
サンプルが欲しくて電話する者は、体調になんらかの悩みがある。
カウンセリングしてから押せば
家族の分まで簡単に買ういいカモだ。
千円のサンプルは、ほんの“まき餌”。
義母が値段を言わないところを見ると、高かったらしい。
「もしもし…ヤマダですけど
ヨシキ君いらっしゃいますか?」
一昨年あたりからだったと思う。
たまに若い女の子から次男に電話がかかることがある。
明るくフレンドリーに言われると
ガールフレンドだと思って、うっかり取り次ぎそうになる。
しか~し…
親しいそぶりなのに、いまどき家の電話というのも怪しいけど
こんなハキハキした塩のきいてそうな女の子が
うちのユルオなんぞ相手にするはずがない。
母がシャットアウト。
だが毎回防ぐのはさすがに無理。
時には最初から次男が電話に出ることもある。
セールスの仕事でランダムに電話をかけた…彼女は言う。
でもおしゃべりしてるうちにすっかり次男を好きになり
会ってみたくなったとおっしゃるそうだ。
運命の出会いというやつ。
今、展示会の最中だけど
抜け出すから何時にどこそこで待ってて…
などと言われ、会う約束をする。
彼女が働いているのは、絵や宝石の展示会。
これが最終目的だ。
「オレ、ビッグマックが好きだからさ~
ポテトと一緒に2個買って来てくれる~?」
次男は言う。
「わかった。じゃあ、マクドナルドの袋が目印ね!」
そして約束の時間…彼は行かない。
長男にはまったくその現象が起きないところを見ると
ポイントや特典の類が好きな次男は
あちこちで個人情報を垂れ流しにしているからだと思う。
そんな会話をしていたら
話に入りたくなったのか、夫がポツリと言った。
「出会い系も今頃はそんなのが多いらしいな」
何度かメールのやりとりをして盛り上がり
会おうという話になる。
しかし多忙な彼女は、なかなか時間が取れないとおっしゃる。
そこである名案を思いつくらしい。
自分の会社で扱うプリペイド・カードを買って欲しい…
ポイントも付いてお得だと。
「そしたらカードを渡す口実で、仕事中に会えるでしょ」
出会い系で知り合ったのがたまたまカードの売り子…じゃなくて
最初から業者が介入しているサクラなんだそうだ。
メールの相手も、本当に女かどうかわかりゃしない。
「買わない」と言ったらそれっきり。
買うと言ったらどうなるであろうか…
「先に代金を振り込んでくれたら、カードを持ち出せる」
とかなんとか言うんだろうな。
どっちにしてもそれで終了だ。
「いや、人から聞いた話だけどね」
夫は急いで言う。
「だからお前たち、気を付けろよ。
ゾウキンのてんぷらが増えてるからな」
笑いをこらえ、うなづく子供たち。
体裁と実態に落差があることを
夫は昔から「ゾウキンのてんぷら」と表現する。
衣をまぶして揚げれば、エビだかゾウキンだか
パッと見で判別できないという意味だ。
「ダ~メダメ…あいつはゾウキンのてんぷら」
そう言い捨てる対象を見ると、実に当を得ている。
他人のことはよくわかるらしい。
「あんたはどうなのさ」
と言いたいのをこらえる必要はあるものの
いつも感心してしまう。
…ところで先日の誤送信もそれか?と聞いてみたかったが
武士の情けじゃ…深追いはよそう。