殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

みりこん塾

2009年10月25日 11時26分01秒 | みりこんぐらし


夫が帰宅するなり、大きなため息をつく。

めんどくさいので放置。

昔はうっかり「どうしたの?」なんて聞いては

とんでもない事態に巻き込まれ、バカを見ていた。


「登れ、登れと女房を屋根に上がらせては

 ヒロシは下から火をつける…」

九州の親戚母娘は、我々のことをそう言ったものだ。

何十回も繰り返せば、さすがにニブい私でも学習する。


待っても反応がないので、夫は自ら話し始める。

姉のカンジワ・ルイーゼの言動にほとほと疲れた…

な~んだ…フツーの内容。


ルイーゼはこのところ

連日のように「会社をたたもう」と父親に進言しているという。

先の見通しも暗いし、余力のあるうちにケリをつけようと

強く主張する。


「あいつの魂胆はわかってる。

 親やオレたちを退職で片付けておいて

 タイミングを見て自分が引き継ぐつもりなんだ」

わたしゃず~っと昔からそう言ってるのに

今まさに自分が大発見したかのような口ぶりだ。


両親、夫、ルイーゼ…

働かない4人で、少ない利益を取り合うから大変なのだ。

利益を一点に集中させれば、まだ勝算はある。

55才になる亭主の定年が間近に迫り

ルイーゼは勝負に出たのだった。


本当にたたみたいなら、生き甲斐である“女性経営者の会”を

先に辞めるはずだ。

あの見栄っ張りが任期途中で

「会社をたたんだので副会長を辞任します」

なんて死んでも言うもんかい。

今日も張り切って町内の祭に参加…焼きソバの屋台出してるぞ。


私はいっこうに構わない。

おかげさんで子供も無事成人した。

一人になって、どこか遠い土地に流れるのも魅力的だ…うっとり。

しかし夫は、次男と二人で働く老後を夢見ており

年老いて判断力の鈍った父親が、娘の言葉で揺れるのを案じる。


よそで使い物にならない姉弟2人

いがみ合い、奪い合う繰り返しから、ええ加減卒業せぇ…

とも思うが、ケッタイな肉親というのは

悪魔のような他人よりヤッカイなのであろう。

また私のおセッカイが芽吹いてしまうではないか。


口べたな夫のため

「次にまたルイーゼが辞めようと言ったら」の設定で

ロールプレイング教室を開講…と言えば聞こえがいいけど

まあ、悪態塾だ。


おまえだけ辞めい!…ハイ!続けて!

「…おまえだけ辞めい…ハイ」

夫はマジメに言う。


“ハイ”は言わんでよろしい…

おまえの亭主を連れて来い!話はそれからだ!…続けて!

「…おまえの亭主を連れて来い…話はそれからだ…」


ルイーゼの亭主…つまり義兄は、妻の実態を知らない。

実家帰りを認めながらも、そのペナルティと称して家計を握る

抜け目ない銀行員でもある。

ルイーゼにとって唯一の泣き所だ。


ルイーゼの結婚に際して、毎日実家へ帰りたい娘と

毎日実家へ帰らせたい両親の心が熱く一致し

彼らは断りもなく(あるわけないか)

新婚間もない私の頭を大義名分にした。


何年も経ち、それは私の知るところとなる。

浮気中の夫が私にダメージを与えるためにぶちまけたし

「見た目はわからないのに、かわいそうに」

と義兄の両親が私を見てつぶやいたからだ。


弟の嫁の知能に問題があるため

妻はしかたなく実家に通っている…

その時説明されたとおり、義兄はいまだにそう思い込んでいる。


以前に一度だけ

抱いたら「ミャー」と鳴く人形を私にくれた。

気の毒な義妹への旅のミヤゲであった…。

めったに会うこともないので

彼の思い込みを裏切らないよう振る舞う

サービス精神旺盛な私よ。


…この塾が役に立つとは、とうてい思えない。

しかしこれを口実にビシバシ鍛えるのは

なかなか痛快である。
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする