『うん


実は奥さんが…好きな人ができて…
うちの小姑との喧嘩が原因でさ~
僕が二人の間で上手く立ち回れなくて…(^_^;)
別れた奥さんとは 今は 友達として話をしてるよ

こんなメールが前置きもなく届いたら、皆さんはどうされるであろうか。
夫から…。
ことの起こりは昨日の朝。
いつになく夫とメールのやりとりを2回した。
仕事のことで「8時着なのか、8時発なのか」が
夫の説明ではよくわからず、着か発かをたずねた。
電話すれば早いのだが…ホンネを言おう…声が聞きたくないんじゃ。
揚げ物をしていた私は、3度目の着信音が鳴ったので
夜勤から帰った長男に見てもらう。
長男…大爆笑。
「奥さん、これは自分でごらんになったほうがいいと思いますよ」
悪いことはできないものである。
そのやりとりの合間に、別件のやりとりもあったらしい。
例のごとく、夫は送信先を間違えたのだ。
こんな時、私は神の存在を感じる…ぷぷぷ。
「ねぇねぇ、なんて返そうか…」
長男に相談する。
「オレに返信させて!死ねって送ってやろう…」
よしなさいよ…ギャハハハ!
などと大笑いしているうちに、次のメールが届く。
『どう?かあさん
さっき○○工業のナガノが来て 離婚したと言ってたから
かあさんの ブログのネタにならないかなあと思って』
…おまえがなぁ、いつも色々やらかしてくれるから
ネタには困らねぇんだよ…
「あわててるよ…」
また長男と二人で笑いまくっていると、さらに次が届く。
『変な送り方したから 勘違いしたかもしれないけど
ナガノに聞いた話だからね』
どこまで笑いを提供してくれる男だろう。
ブラボー!夫!
秋風と共にツルコとは終わり、新しい相手を見つけたようだ。
こんにちは!フレッシュさん!
ここまでは楽しいのだが
自分でミスっておいて居直るのが夫の悪いところ。
ま、逆ギレするのが一番楽であろう。
帰るなり荒々しい素振りで怒鳴る。
「おいっ!本当にナガノが会社に来たんだからなっ!」
「ナガノ君、大変だったんだねぇ」
と笑顔でサービスするが、夫はまだ安心できないらしい。
今度はハイテンションでしつこくしゃべる。
「あのおとなしそうな女房が、まさか不倫するとはね」
「ナガノ、これからどうするんだろ」
…まだ言ってら
猿芝居に人の名前を使うなとあれほど注意しただろがっ…
残念ながらナガノ君は婿養子。
どう頑張ったって、女房と小姑との間に立って苦悩する立場にはなれない。
優しい!私は、もちろんそんなことを突きつけてなじったりしない。
かわりにおだやかに言う。
「見苦しいで」
やれやれ…静かになった。
メールがあった時、笑うのは早めに切り上げて
忘れないうちに返信しておけば良かったのだ。
「びっくり!ナガノ君、離婚したの?
仲良かったのにね。
ネタをありがとう♪」
これなら百点だった。
まだまだ修行が足りん。
妻が浮気して離婚した…
小姑との仲をうまく調整できなかった自分にも非がある…
二十何年、夫が使い続けている卑怯な手口だ。
不可抗力によるバツイチを装い、なおかつ自分を責める素振りをすれば
刺激を求める女は殺虫剤みたいにイチコロらしい。
いくら根性が腐っているとはいえ、進歩が無いにもほどがある。
自分の姉を恐れ嫌い、存在自体を悩みのタネにしているのは
私じゃなくておまえだろ。
腹立たしいとか、プライドとかの問題はすでに無い。
ある日突然、一人の男を誰かと共有する羽目になったことから生じる怒りは
単に現状が変化する恐怖と、情報不足からくる不安だと
経験から知った。
妻である自分について、女にいい加減なことを言われても
どうでもいい。
ウソを信じて、舞い上がるだけ舞い上がっとれ。
私に好きな人が出来た…と言われるからには
ぜひとも期待にお応えしたいところではあるが
今のところ、その予定は無い。
この年齢に見合う独身男となると、ろくでもない爺さんか
女一人幸せに出来なかったダメオくらいしかいないし
向こうも迷惑であろう。
さて、風呂から上がると、夫が仏頂面で2万円を差し出す。
「くれるの?」
何も言わないので、ありがたくもらう。
小姑と喧嘩のあげく男をこしらえて離婚した私への慰謝料は2万円らしい。
安っ!