昨夜、私は例のごとく夫の会社で
いっこうに上達しないアルトサックスの練習に励む。
この日は夫も一緒で、私が練習する横でテレビを見ながら耐えていた。
帰り際、夫の姉カンジワ・ルイーゼのデスクに置かれた
クレジットの申し込み用紙に目を止める。
ルイーゼの字で義父の名前がすでに書き込んであり
印鑑も押して提出するばかりになっている。
しかも連帯保証人、夫になってるし。
夫、知らないって言うし。
この女、いったい何を買うつもりだ?
「ローンは嫌い、カードもイヤ、経営学を学んだからこそ現金主義よ」
なんて日頃言ってるくせに、人の名前だったらええんかい。
こんなものをポンと放置して帰るのがルイーゼじゃ。
しかしなんだか違和感が…。
業者の担当者のサインが、野生のカンを刺激する。
歌手じゃあるまいし、いい加減な崩し書きで絶対読めない。
こんなのにロクな人間はいない。
しかも社名…社判でなく手書き。
月1万7千円ずつ84ヶ月…つまり7年の契約で、計142万円あまりになる。
百万を越える取引で、業者側が社判を用意してないのは非常識だ。
クレジット用紙を持ち歩く営業との信頼関係が無い…
つまり流しの営業なので、あらかじめ押印したものを持たせられないか
この取引をナメているかのどちらかである。
いずれにしてもうさん臭い。
社名の字も汚くて、ナントカ機器(株)としかわからない。
不明瞭な字を書く身の上で、筆記のついて回る仕事につくこと自体
そもそもおこがましくて信用ならんというものだ。
夕方、ニュースで見たばかりだった。
電話回線もデジタルになるので、今までの電話も回線も使えなくなります…
工事は高いので、皆さんリースになさいます…
クレジットにして、経費で落とすのが常識です…
これに変えると、電話料金も安くなります…
そんな手口の詐欺が横行しているらしい。
それで通信費が浮くなら…とうっかりその場で契約してしまうという。
いくら通話料が安くなるといっても、たいして変わるわけではない。
経費が浮くどころか、結果的にはリース料が新たな負担となる。
しかし、今の電話は使えなくなる…と先に言われているので
カモの頭はすでに納得しているのだ。
月々わずかな金額でつつがなくデジタル回線に変更できて
通話料が安くなり、しかも電話機まで新しくしてくれる…
なんだかお得と思ってしまうらしい。
リースは品物ではないので、クレジット会社を通すと
中途解約が出来ないそうだ。
だから連帯保証人が必要なのだ。
契約者に何があろうと、7年間は支払いから逃げられない。
ネットでも調べてみたが、やはりその手の詐欺が増えているとあった。
契約期間はたいてい7年。
事業所を総当たりで回る。
だまされてしまうにはワケがある…NTTの名前を使うからだ。
さもNTTに依託されているように振る舞うそうだ。
実際にNTTの製品を使うそうなので、まんざらデタラメではないのだ。
その用紙にもしっかり
「物件・NTT・電話機・コードレス・数量各1」
「物件・NTT・ナントカ(読めない)料・数量1」と書いてある。
字は汚いくせに、NTTの文字だけははっきり書いてあるのがいまいましい。
その場で捺印させて契約完了に持ち込むのが作戦だが
さすがルイーゼ、会社の電話番号を家と書き間違えていた。
送り返されたものを書き直して訂正印を押し
向こうが取りに来る前に私が発見する展開になったと思われる。
営業に来たのは、ルイーゼ好みの男性だったに違いない。
でなければ、ルイーゼが簡単にクレジット契約をするはずがないのだ。
女やブスオが来たなら、たとえ必要な用件でも絶対追い返す。
こいつ…サギられてんじゃん。
まったく危険な女じゃ。
しばって家に閉じ込めておいたらええんじゃ。
業者の住所と電話番号だけはなんとか読めるので
電話して文句言ってやろうとしたが
いや待て待て…自分の会社じゃないし…と思い直す。
後の処理は夫に任せて、この件はこれにて終了。
何度痛い目に遭っても、そこは姉弟…
バカだ、オトコ病だ…などと最初は一緒になってワイワイ言ってるのに
そのうち夫は機嫌が悪くなるからだ。
身内の恥ではあるが、こちらに来てくださる方に被害が無いよう
公表させていただいた。
え?今さら恥も外聞も無いだろうって?
その通り!ププッピドゥ~♪