曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

映画「オン・ザ・ロード」を見た

2013-09-02 22:40:20 | テレビ・映画
予告通り「オン・ザ・ロード」を見てきた。




よくも悪くも予測の範囲内の作品だった。原作から大きく外れた部分がなく、勝手な話を作ったりしていない。見に来る人は原作のファンがほとんどだろうから、この方針は正解だと思う。

もちろん、まったく原作通りなわけはなく、エピソードを間引きしたり、順序を変えたりはしている。通しで読んだのがだいぶ前で、今新訳を読み返してるところなので自信がないが、たとえば第1部で言えばデンバーの山の上に遊びに行くところや、収容所の警備員のところはカット。第2部ならニューオリンズへ船で渡るところがない。第3部は丸ごと省略(だと思う)。

登場人物も整理されている。サル、ディーン、メリールウの主要3キャラ以外では、カーロ・マルクス、チャド・キング、オールド・ブル・リー、エド・ダンケル、カミールくらいしか出てこない。おかげで原作の「重要じゃないキャラが取りとめなく現れては消える分かりにくさ」がなくてよろしい。

主要3キャラは予告とかでも見れるし、ここでは説明しませんよ。サル役のサム・ライリーは声が渋すぎかなーと思うけど、みんな演技上手い。あ、メリールウが脱ぎまくりでポロリもあるよ。ちなみにR15です。

カーロが意外にチャラ男というか、虚弱っぽかった。もっとたるんだ男だと思ってたんだけど。

エド・ダンケルがイメージ通り。ぽっちゃりしたモッサリ男だった。

チャド・キングは、もっと廃人ぽいかと思ってたけど、普通だった。

そしてカミール! よく見たらスパイダーマンのMJじゃん! 愛と人生に悩む面倒くさい女をやらせたら天下一品だね。

原作は、会話とサルの思索が長くて、車での移動があまり詳しく描かれていないけど、映画はそれなりに時間を割いて車が走る。フロントガラスもサイドのガラスも汚れていて、中からのショットでは外の景色が見にくいけど、リアルな描写だった。振り返ってみると、車の中のシーンの合計は相当長い。ずっと3人が、あるいはエドも入れて4人が車内にいるシーンばかりだったような気もする。後部座席のサルとエドが疲れきった顔でぼんやりしてて、長い時間をやり過ごしている澱んだ空気感が、ドライブ好きとしては「あるある」と思った。

ドラッグとセックスのシーンが多い。何かというとすぐベンゼドリンのカプセルが出てくる。どこへ行っても誰とでもパコパコしまくり。最初は3Pかと思ったシーン、そうじゃなくて、ディーンはサルがヤってるところを見学したいらしい。アホである。メリールウが文字通り体当たりの演技でエッチだ。文字で読むのと違って映像で見ると生々しい。喘ぎ声もあるし。

なんだかんだ言って、サルはロードに出ても必ずオゾンパークの「COSMETIC」に帰ってくる。行っては帰ってくるの繰り返しだった。というか、帰ってきたところをちゃんと描いていた。そして、帰るところがあるサルと、帰るところがないディーンの対比が残酷だなと思った。

サルは暇さえあれば文章を書いている。主にディーンの観察日記のようだが、それがこの小説になるわけだ。文具好きとしては何を使ってるか気になるところだが、モレスキンのレポーターっぽいけどソフトカバーのやつ(ぼろぼろ)に、クリップ付きのペンホルダーを装着したチビた黄色い鉛筆で書いていた。

それぞれのシーンがストーリーの中でどういう意味があるのかがわかりにくい。意味がないのかもしれない。というような作りが、まさに原作そのままで、やっぱりこうなのね、という感じだった。ただ、2時間19分であの長大な小説を一応最後まで見せてもらって、初めて全体を把握できたと思う。以前の記事で「ピンとくるかどうか」について書いているが、この映画では、ついにピンと来ました!! 映画を見た後、原作を読んでみると、今までと違って文章がちゃんと頭に入ってくるようになっていた。すごい。

それは、たぶん原作のビジュアルイメージ集としてこの映画が優れているからだと思う。全力で想像力を働かせても、日本人には1950年前後のアメリカの雰囲気はイメージしにくいが、この映画のおかげで何の苦労もなく絵が頭に浮かぶようになった。この映画の映像と音響・音楽は、「路上/オン・ザ・ロード」の情景を完全に再現しており、原作を読んだ人は誰もが納得するだろう。もともとストーリーがないような話だから、そこが最も重要な点だった。ウォルター・サレス監督とコッポラは、本当によくわかっている。



ららぽーと横浜のTOHOシネマズで見たんだけど、プレミアというシアターだった。飛行機のファーストクラスのように席と席が離れていて、肘掛けに肘をかけても隣の人とぶつからない。リラックスできて素晴らしかった。おススメです。

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