福島民報
日本原子力学会のシンポジウム「東京電力福島第一原発事故後の環境回復の取り組み-住民被ばくの現状と環境動態-」は25日、福島市のコラッセふくしまで開かれた。早野龍五・東京大大学院理学系研究科教授は、個人ごとに内部・外部被ばくの積算線量を把握し、それぞれの状況に応じた行政による説明や支援が重要になるとの認識を示した。
早野教授は県民の今後の健康管理について、積算線量計やホールボディーカウンターにより、個人が生涯の内部・外部被ばく線量を知ることが大切になると説明した。
その上で、行政側の役割についても指摘。「(各種調査で)県民の多くは被ばくレベルが低い現状にあるとみられるが、少数ながら比較的数値が高い人もいる。個別の説明、対策が必要だ」と訴えた。
中谷誠・農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官が農地除染、油井三和・日本原子力研究開発機構福島技術本部福島環境安全センター長代理が放射性物質の環境動態についてそれぞれ語った。
講演の後、東京電力の担当者が福島第一原発1~3号機原子炉建屋の除染の状況、汚染水漏れの現状と対応などについて説明した。
シンポジウムは県の共催で、学会所属の研究者や県内の自治体関係者、市民ら約200人が参加した。
■対話集会など展開 学会内「福島特別プロジェクト」 今年度
日本原子力学会が東京電力福島第一原発事故に対応する目的で昨年6月に学会内に設置した「福島特別プロジェクト」は、平成25年度も住民との対話集会などの事業を展開する。現在、運営形式や開催時期を検討している。
24年度に実施した「対話フォーラム」を引き継ぐ。従来通り、福島市にある環境省の「除染情報プラザ」への専門家派遣、水田の試験栽培なども継続する。
■個人ごと線量把握を 東京大大学院理学系研究科教授 早野 龍五氏
被ばくによる影響のリスクは生涯の積算線量に比例する。つまり、(周辺環境からの)1時間当たりの線量、(食品などに含まれる)放射性物質量ばかりを気にするのではなく、積算線量計による測定値、ホールボディーカウンターの測定結果が重要だ。
(調査結果では)多くの県民の内部・外部被ばくのレベルは低い。
ただ、比較的数値が高い人もいる。健康管理は個人ごとに生涯の内部・外部被ばくの積算線量を把握し、それに基づいて(行政が)説明、対策を個別に取るという段階に入った。「平均値」だけで論じていてはいけない。
■営農再開へ技術開発 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官 中谷 誠氏
農地除染には反転耕や表土の削り取りがあるが、表土層が薄かったり、すぐに石が出るような土地では実施できず、回数も1回に限られる。こうした場合、水でかき回す方法が有効だ。1回の除染効率は高くないが、どんな土地でも繰り返しできるメリットがある。
食品衛生法の基準値を超えるコメはほとんどなくなったが、問題は大豆などの豆類とソバ。放射性セシウムが検出されないような技術が課題だ。
被災地の営農再開を進めるため、農地の再汚染を防ぐ除染方法の確立、果樹や畜産分野の除染技術の開発を進めている。
■セシウム移動を調査 日本原子力研究開発機構福島技術本部福島環境安全センター長代理 油井 三和氏
日本原子力研究開発機構は、放射性物質の移動と、それに伴う影響を見る環境動態研究に取り組んでいる。当面は浜通りを中心に進める。
具体的には現地調査で放射性セシウムの移動データを取得し、移動予測モデルを開発する。移動による被ばく線量の変化を推定し、線量低減に有効な抑制策などを提案していく。
当面は浪江町の請戸川など5つの河川をはじめ、森林、ダムなどでセシウムの移動を調べる。
環境動態調査は始まったばかり。再汚染の可能性なども視野に調べる。
( 2013/08/26 11:19 カテゴリー:主要 )
日本原子力学会のシンポジウム「東京電力福島第一原発事故後の環境回復の取り組み-住民被ばくの現状と環境動態-」は25日、福島市のコラッセふくしまで開かれた。早野龍五・東京大大学院理学系研究科教授は、個人ごとに内部・外部被ばくの積算線量を把握し、それぞれの状況に応じた行政による説明や支援が重要になるとの認識を示した。
早野教授は県民の今後の健康管理について、積算線量計やホールボディーカウンターにより、個人が生涯の内部・外部被ばく線量を知ることが大切になると説明した。
その上で、行政側の役割についても指摘。「(各種調査で)県民の多くは被ばくレベルが低い現状にあるとみられるが、少数ながら比較的数値が高い人もいる。個別の説明、対策が必要だ」と訴えた。
中谷誠・農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官が農地除染、油井三和・日本原子力研究開発機構福島技術本部福島環境安全センター長代理が放射性物質の環境動態についてそれぞれ語った。
講演の後、東京電力の担当者が福島第一原発1~3号機原子炉建屋の除染の状況、汚染水漏れの現状と対応などについて説明した。
シンポジウムは県の共催で、学会所属の研究者や県内の自治体関係者、市民ら約200人が参加した。
■対話集会など展開 学会内「福島特別プロジェクト」 今年度
日本原子力学会が東京電力福島第一原発事故に対応する目的で昨年6月に学会内に設置した「福島特別プロジェクト」は、平成25年度も住民との対話集会などの事業を展開する。現在、運営形式や開催時期を検討している。
24年度に実施した「対話フォーラム」を引き継ぐ。従来通り、福島市にある環境省の「除染情報プラザ」への専門家派遣、水田の試験栽培なども継続する。
■個人ごと線量把握を 東京大大学院理学系研究科教授 早野 龍五氏
被ばくによる影響のリスクは生涯の積算線量に比例する。つまり、(周辺環境からの)1時間当たりの線量、(食品などに含まれる)放射性物質量ばかりを気にするのではなく、積算線量計による測定値、ホールボディーカウンターの測定結果が重要だ。
(調査結果では)多くの県民の内部・外部被ばくのレベルは低い。
ただ、比較的数値が高い人もいる。健康管理は個人ごとに生涯の内部・外部被ばくの積算線量を把握し、それに基づいて(行政が)説明、対策を個別に取るという段階に入った。「平均値」だけで論じていてはいけない。
■営農再開へ技術開発 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官 中谷 誠氏
農地除染には反転耕や表土の削り取りがあるが、表土層が薄かったり、すぐに石が出るような土地では実施できず、回数も1回に限られる。こうした場合、水でかき回す方法が有効だ。1回の除染効率は高くないが、どんな土地でも繰り返しできるメリットがある。
食品衛生法の基準値を超えるコメはほとんどなくなったが、問題は大豆などの豆類とソバ。放射性セシウムが検出されないような技術が課題だ。
被災地の営農再開を進めるため、農地の再汚染を防ぐ除染方法の確立、果樹や畜産分野の除染技術の開発を進めている。
■セシウム移動を調査 日本原子力研究開発機構福島技術本部福島環境安全センター長代理 油井 三和氏
日本原子力研究開発機構は、放射性物質の移動と、それに伴う影響を見る環境動態研究に取り組んでいる。当面は浜通りを中心に進める。
具体的には現地調査で放射性セシウムの移動データを取得し、移動予測モデルを開発する。移動による被ばく線量の変化を推定し、線量低減に有効な抑制策などを提案していく。
当面は浪江町の請戸川など5つの河川をはじめ、森林、ダムなどでセシウムの移動を調べる。
環境動態調査は始まったばかり。再汚染の可能性なども視野に調べる。
( 2013/08/26 11:19 カテゴリー:主要 )