今日は中北組合とほぼ同時期にごみ処理施設(焼却炉+溶融炉)を整備した所沢市(埼玉県)と中北組合の溶融炉の運用に関する事務処理の違いについて書きます。
なお、所沢市は平成26年9月に会計検査院が公表した調査報告(平成25年度分)において、溶融炉は稼動しているものの溶融スラグの大半を委託処分していたとして、是正の要求を受けています。
会計検査院調査報告(平成26年9月30日)
と言うことで、まず、下の画像をご覧下さい。
これは、会計検査院が不適正と判断している溶融炉の運用方法を整理した資料です。
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会計検査院が市町村が所有している溶融炉の運用方法に対して不適正と判断している根拠法令は地方財政法第8条の規定になりますが、溶融炉を休止している場合はもちろん、稼動している場合であっても、溶融スラグの委託処分を行っている場合も、所有財産の所有の目的に応じた効率的な運用を行っていないと判断しています。
なお、中北組合とほぼ同時期に溶融炉の供用を開始した自治体で所沢市と同じように溶融スラグの委託処分を行っていた自治体は7つになっています。
いずれにしても、会計検査院は市町村が所有している溶融炉(財産)を地方財政法第8条の規定に従って効率的な運用を行っていない場合は不適正と判断しています。
ちなみに、浦添市はこの7つの自治体と同じ時期(平成14年度)に溶融炉の供用を開始していますが、平成24年度に長寿命化を行い供用開始からこれまで継続して溶融スラグの利用を促進しています。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、上の画像にある会計検査院の意見表示を整理した資料です。
会計検査院が意見表示を行ったのは平成26年9月ですが、それ以降、地方財政法第8条の規定に関する改正は行われていないので、平成28年度においてもこの資料は有効ということになります。
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次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合と所沢市の事務処理を比較した資料です。
所沢市は中北組合の約1ヶ月前に溶融炉の供用を開始しています。そして、処分制限期間を経過している平成25年度においても溶融炉を稼動していました。しかし、溶融スラグの大半を委託処分していたことから、会計検査院から是正の要求を受けています。
このため、同市は平成27年度から溶融スラグの全量を資源化しています。そして、現在は平成29年度からごみ処理施設の長寿命化を実施することを前提にして長寿命化計画を策定しています。ちなみに、所沢市は中北組合と同様に最終処分場は整備していません。
所沢市建設環境常任委員会議事録(平成27年7月17日)
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中北組合は会計検査院から是正の要求を受けていないので、平成25年度においては不適正な事務処理は行っていなかったと思われます。しかし、平成26年度から溶融炉を休止して、溶融スラグの製造そのものを中止しています、そして、焼却灰の民間委託処分を行っています。
このように、平成25年度における所沢市の事務処理は不適正な事務処理でしたが、会計検査院の是正の要求があった翌年度(平成27年度)からは適正な事務処理を行っていることになります。しかし、中北組合は所沢市とは逆に、平成26年度から不適正な事務処理を行っていることになります。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、平成26年度からの中北組合の事務処理が適正な事務処理とした場合を想定して作成した資料です。
中北組合と所沢市はほぼ同時期に溶融炉を整備しているので、中北組合の事務処理が適正な事務処理であれば所沢市の事務処理が不適正ということになってしまいます。
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溶融炉を整備している市町村の多くは溶融スラグの有効利用に頭を悩ませています。このため、中北組合の事務処理が適正な事務処理だとした場合は、所沢市も平成26年度から溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っていたはずです。しかし、所沢市は溶融炉を稼動したまま溶融スラグの有効利用を促進する事務処理を選択しています。
なぜ、所沢市はそのような事務処理を選択したのか?
公共の発想で事務処理を行っている市町村であれば、溶融炉を休止することは所有財産の効率的な運用を放棄することになるので、地方財政法第8条の規定に違反することはすぐに分かります。また、溶融炉を廃止して焼却灰の民間委託処分を行うようにすると、ごみ処理施設の整備(長寿命化や更新等)に当って国の補助金を利用することができなくなることもすぐに分かります。
したがって、所沢市は溶融スラグの有効利用を促進する事務処理を選択したと考えています。ちなみに、この事務処理は所沢市の約1年前に溶融炉を整備した浦添市の事務処理と同じ事務処理になります。
では、なぜ、中北組合は溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行う事務処理を選択したのか?
このブログの管理者は、中北組合が平成26年度から民間の発想で事務処理を行うようになったからだと考えています。なぜなら、中北組合が公共の発想で事務処理を行うことを選択した場合は溶融炉を休止することや焼却灰の民間委託処分を選択することは絶対にできないからです。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合の発想を公共の発想とした場合を想定して浦添市の事務処理との比較をした資料です。
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このように、中北組合の事務処理が公共の発想で行われているとした場合は、浦添市の事務処理はごみ処理施設の長寿命化を含めて全て不適正な事務処理ということになってしまいます。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、浦添市と中北組合の事務処理を比較した資料です。
浦添市は中北組合や所沢市の約1年前に溶融炉を整備して平成24年度に長寿命化を実施しています。そして、溶融スラグの有効利用を促進して最終処分ゼロを継続しています。
その浦添市から見た場合、中北組合の事務処理はどのような評価になるか?
説明するまでもなく、民間の発想で不適正な事務処理を行っている自治体という評価になります。
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浦添市は平成25年度においても溶融スラグの有効利用を促進していました。また、前年度には溶融炉の長寿命化を実施していました。したがって、所沢市よりも公共の発想で事務処理を行っている自治体ということができます。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合と同じように浦添市や沖縄県も民間の発想で事務処理を行っている場合、そして、国や会計検査院が沖縄県の市町村に対して特別な配慮を行っていると想定して作成した資料です。
このように、沖縄県においては市町村が公共の発想で事務処理を行うことと民間の発想で事務処理を行うことは任意で選択することができることになり、どちらであっても国は財政的援助を行うことができることになってしまいます。
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あり得ないことですが、仮に本当にこのような状況になった場合は、所沢市が黙っていないはすです。なぜなら、沖縄県の市町村に対してこのような特例措置はないからです。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合が民間の発想のまま浦添市との広域処理を推進した場合を想定して作成した資料です。
浦添市は公共の発想で事務処理を行っているので、ごみ処理施設を単独更新する場合は国の補助金を利用することができます。しかし、中北組合のように民間の発想で事務処理を行っている市町村は沖縄県だけでなく内地においても国の補助金を利用することはできません。
したがって、浦添市が中北組合と広域処理を推進する場合は、自主財源により広域施設の整備を行うことになります。
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前にも書きましたが、中北組合が溶融炉を整備していない自治体で、焼却炉も老朽化している自治体であれば、ごみ処理計画を改正することで浦添市との広域処理を推進することができます。
しかし、中北組合は国の補助金を利用して溶融炉を整備しています。したがって、溶融炉を所有している限りは処分制限期間を経過しても浦添市のように長寿命化を実施して効率的な運用を行う責務があります。その証拠に、所沢市も浦添市と同様の事務処理を行っています。
なお、中北組合が溶融炉を廃止しても補助金の返還義務はありません。しかし、焼却灰の委託処分を行っている場合や焼却炉の長寿命化を行っていない場合は、廃棄物処理法の基本方針に従って適正なごみ処理を行う責務を放棄していることになるので、国の補助金を利用することはできないことになります。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合が浦添市と同じ公共の発想で事務処理を行うことを前提にして広域処理を推進するための事務処理を整理した資料です。
中北組合が公共の発想で浦添市との広域処理を推進するためには、まず、法令違反を是正しなければなりません。つまり、溶融炉の休止を中止しなければならないことになります。しかし、地方財政法第2条第1項に規定により浦添市の財政に累を及ぼすような施策を行うことはできないので、溶融炉を再稼動することや外部委託により焼却灰の資源化を推進することはできません。その理由はこれまでに何度も書いてきたので、省略します。
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中北組合か浦添市が、中北組合から排出される焼却灰に対する5年分の最終処分場を確保すれば、平成27年度に緩和された国の特例措置によって溶融炉を廃止することができます。そして、国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を実施することができます。
しかし、1市2村は平成31年度に広域組合を設立する前提で事務処理を進めています。そうなると、平成30年度には国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を実施しなければならないことになります。そして、そのためには平成29年度に長寿命化計画を策定しなければならないことになります。
したがって、平成29年度には代替措置を講じて溶融炉を廃止しなければならないことになります。なぜなら、溶融炉を廃止しただけでは法令違反を是正しただけのことであって、国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことはできないからです。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、非現実的なことですが、浦添市と所沢市が広域処理を推進する場合を想定して作成した資料です。
中北組合が所沢市と同じように溶融炉を稼動していて長寿命化を行うために計画を策定している場合は、何の問題もなく浦添市が予定しているスケジュールに従って広域処理を推進することができます。
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所沢市は供用開始から15年目(平成29年度)にごみ処理施設の長寿命化を実施する予定でいますが、中北組合が焼却炉の長寿命化を行うことができるのは、どんなに早くても平成30年度(供用開始から16年目)になってしまいます。なぜなら、代替措置を講じて溶融炉を廃止していないからです。
もしも、中北組合が平成26年度に代替措置を講じて溶融炉を廃止していれば、今頃は焼却炉の長寿命化も完了していたことになります。そして、平成28年度に広域組合を設立することができたことになります。
しかし、中北組合が溶融炉を休止したときは10年間は現体制を維持していくことを決定して他の市町村との広域処理は検討課題から除外していました。このことは、平成26年度から平成35年度までは民間の発想で事務処理を行っていくことを決定していたことになります。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合が民間の発想で行ってきた事務処理を適正な事務処理と想定して作成した資料です。
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このように、溶融炉を整備している市町村は処分制限期間を経過した段階で運用を放棄しても、適正な事務処理を行っていることになるので、溶融スラグの有効利用を促進する事務処理から解放されることになります。そして、溶融炉の長寿命化を行う事務処理からも解放されることになります。
しかし、そのような事務処理から解放されたと考えている市町村は、国内において、中北組合だけだと思われます。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、平成26年度からの中北組合の事務処理を公共の発想で整理した資料です。
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このように、中北組合は平成26年度から完全に民間の発想で事務処理を行ってきました。しかし、国は法令に違反して事務処理を行っている自治体や国の施策に非協力的な自治体に対して財政的援助を与えることはできません。
仮に、国がそのような自治体に財政的援助を与えた場合は、国の補助制度は崩壊してしまいます。また、国が処分制限期間を経過しているごみ処理施設に対して長寿命化を求める根拠もなくなってしまいます。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、ごみ処理計画に対して平成26年度から中北組合が無視を続けてきた事務処理を整理した資料です。
中北組合が民間の廃棄物処理業者であれば、このような事務処理を行ってもなんら不思議ではありません。しかし、中北組合は住民の福祉の増進を図るために事務処理を行っている地方公共団体です。
したがって、他の市町村(浦添市)との広域処理を推進するためには、民間の発想から完全に脱却しなければならないことになります。
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上の画像にあるように、中北組合は平成26年度と平成27年度の2年度において、少なくとも8つの項目に関する事務処理を無視しています。
平成28年度には4つの項目が増えることになりますが、平成28年度においてもこれらの項目に関する事務処理を無視した場合は、失礼ながら中北組合(中城村・北中城村)には他の市町村との広域処理を推進する資格はないことになります。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、上の画像の各項目に関する具体的な事務処理を整理した資料です。
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このブログの管理者は職員による不適正な事務処理が発覚した宮古島市のごみ処理計画についても強い関心を持っていますが、沖縄県は市町村の自治事務にはあまり関与しない方針を貫いているようです。
したがって、上の画像にあるような事務処理については、中北組合が自ら是正をしなければ公共の発想で事務処理を行うことはできないと考えています。
ただし、浦添市との広域処理を推進することを決定したことで、浦添市が是正を求める可能性が出てきたと少し安心しています。
いずれにしても、1市2村は広域組合を設立する前に平成28年度中に広域処理を前提としたインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定しなければなりません。
中北組合はともかく、浦添市が民間の発想で「行動計画」を策定することは考えられないので、近日中に中北組合の既存施設に対する施策が決定すると考えています。
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合が今月中(6月まで)に既存施設に対する施策を決定して、12月までにインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定するための事務処理を完了した場合を想定して策定した資料です。
2つ目の画像にあるように、中北組合が公共の発想で事務処理を行うようになっても、「行動計画」を策定するための中長期的なコストの見通しを立てるためには、少なくとも6ヶ月程度は必要になります。
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このブログの管理者は、中北組合が今月中(6月まで)に、既存施設に対する施策を決定することはできないと考えています。なぜなら、中北組合が決定する施策は、浦添市だけでなく、国や県を説得できる施策でなければならないからです。
しかし、中北組合が琉球大学に技術的援助を依頼すれば、比較的簡単に既存施設に対する施策を決定することができると考えています。そして、その施策に対する法令解釈やリスク評価も容易に依頼できると考えています。
なぜなら、関係法令を遵守して、国や県を説得できる施策は1つしかないからです。
このことは、関係法令(廃棄物処理法、環境基本法、循環基本法等)の規定を理解している人でなければ分からないことですが、琉球大学であれば、関係者の中にこれらの規定を理解している人が必ずいると考えています。
なお、国や県の職員は、基本的に廃棄物処理法の規定については市町村の職員に対して適切な技術的援助を与える能力を備えています。しかし、環境基本法や循環基本法の規定になると、かなり怪しくなります。特に、循環基本法の規定については、残念ながら十分に理解している職員は少ないので、中北組合が国や県に技術的援助を依頼しても、広域処理を推進するための適正な援助を受けることはできないと考えています。
最後に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合が民間の発想から脱却できなかった場合を想定して作成した資料です。
中北組合が浦添市との広域処理を推進すること決定していなかった場合は、かなりの確率でこのような状況になると考えています。
そして、中北組合はインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」の策定も、県から是正の勧告を受けるまでは先送りしていたと考えています。
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【中北組合の職員の皆さんへのメッセージ】
所沢市は内地の市町村ですが浦添市や中北組合と同じ日本の市町村です。そして、所沢市と浦添市は国の施策に従って公共の発想で事務処理を行っています。
溶融スラグの有効利用に苦しんでいた所沢市が処分制限期間を経過した時点で溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行う事務処理を選択しなかった理由を良く調べて、浦添市との広域処理を推進するための事務処理に専念していただけるようにお願いいたします。
広域処理の成功を祈ります。