その6は中北組合と那覇市南風原町環境施設組合の事務処理の違いについて書きます。
その前に、もう一度、沖縄県の市町村に対する廃棄物処理法の規定に基づく県の責務と、地方公務員法及び沖縄県職員服務規定に基づく県の職員の責務を確認しておいてください。
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では、本題に入ります。
那覇市南風原町環境施設組合(以下「那覇南風原組合」という)は、現在、平成18年度に供用を開始したごみ処理施設(焼却炉+溶融炉)の長寿命化に伴う入札に関する事務処理を行っています。
一方、中北組合は平成15年度からごみ処理施設(焼却炉+溶融炉)の供用を開始していますが、平成26年度から溶融炉を休止しています。そして、平成27年度においてもまだごみ処理施設の長寿命化計画を策定していません。
下の画像をご覧下さい。
これは、那覇南風原組合と中北組合の事務処理の違いを整理した資料です。
両組合のごみ処理施設は、平成28年度においては共に補助金適正化法の処分制限期間を経過していますが、那覇南風原組合は廃棄物処理法の基本方針や沖縄県廃棄物処理計画、そして国の要請等に従って焼却炉と溶融炉の長寿命化を実施することを決定しています。
このように、那覇南風原組合は地方財政法第8条の規定を遵守して適正な事務処理を行っています。そして、廃棄物処理法の基本方針に適合する事務処理を行っているので、更新に当って国の補助金を利用することができます。しかし、中北組合は廃棄物処理法第8条の規定に違反する不適正な事務処理を行っています。そして、廃棄物処理法の基本方針にも適合しない事務処理を行っています。
その中北組合は平成31年度に浦添市と設立する広域組合に対して既存施設を無償譲渡する予定になっていますが、これは単に既存施設の所有者が変るだけなので、中北組合がこのまま広域組合に既存施設を無償譲渡すると広域組合が不適正な事務処理を行うことになります。また、廃棄物処理法の基本方針に適合しない事務処理を行うことになるので、広域組合は自主財源により広域施設を整備しなければならないことになります。
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下の画像は、那覇南風原組合の議事録から長寿命化の実施に関する職員の答弁の部分を抜粋した資料です。
このように、那覇南風原組合は当初の予定を前倒しして長寿命化を実施することにしています。その理由は、修繕費が年々増加傾向にあり長寿命化を実施することによって費用を節減できると判断したからです。そして、沖縄振興特別措置法の期限(平成33年度)までに実施(着手)すれば、事業費に対して約50%の補助金を利用することができるからです。
なお、広域処理に対する浦添市と中北組合のスケジュールも、沖縄振興特別措置法に対応したスケジュールになっていますが、肝心の中北組合がまだ長寿命化を実施していません。それどころか、溶融炉を休止しています。
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下の画像は、中北組合の事務処理を沖縄県が適正な事務処理と判断している場合を想定して作成した資料です。
このように、中北組合の事務処理が適正な事務処理であって、既存施設を今のまま広域組合に無償譲渡した場合であっても広域施設の整備に当って国の補助金を利用することができるとした場合は、那覇南風原組合も中北組合と同じように溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っていくことができることになります。
なお、ごみ処理施設の長寿命化についてはそもそも国が財政的援助を与えている適正な事務処理になるので、焼却炉の長寿命化についてはそのまま実施することができます。
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下の画像は、中北組合が沖縄県の技術的援助に従って事務処理を行っているという前提(想定)で作成した資料です。
なお、沖縄県には廃棄物処理法の規定に基づいて中北組合のごみ処理計画の適正化を図る責務があるので、中北組合に対して何の技術的援助も行っていない場合は、結果的にこのような技術的援助を与えていることになります。
このように、沖縄県は市町村がごみ処理施設を整備してから10年を経過した段階でごみ処理計画を改正すれば、廃棄物処理法の基本方針や県の廃棄物処理計画を無視して事務処理を行う(溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行う)ことができるという技術的援助を中北組合に対して与えていることになります。
また、溶融炉を休止することにつては地方財政法第8条の規定に適合しているという技術的援助を与えていることになります。そして、ごみ処理施設を更新する場合や広域施設を整備する場合は、その前にもう一度、廃棄物処理法の基本方針や県の廃棄物処理計画に適合するごみ処理計画に改正すれば良いという技術的援助を与えていることになります。
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下の画像は、中北組合に対する沖縄県の技術的援助の中から長寿命化に関する技術的援助を整理した資料です。
このように、沖縄県においては国が要請している長寿命化については、知事の裁量で任意に行うことができるというルールになっていることになります。また、溶融炉を休止したまま長寿命化を行わない場合であっても、沖縄県においては地方財政法第8条を遵守している(所有財産の所有の目的に応じて適正な運用を行っている)とみなしていることになります。
しかし、沖縄県であっても、知事にそのような権限は与えられていないので、このような技術的援助は知事の判断ではなく県の職員の判断のもとで行われていることになります。
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下の画像は、沖縄県における知事の判断と職員の判断を比較した資料です。
このように、那覇南風原組合に対しては知事の判断により長寿命化を要請していますが、中北組合に対しては職員の判断により長寿命化を任意とする技術的援助を与えていることになります。したがって、沖縄県はWスタンダードで事務処理を行っていることなります。そして、県の職員は服務規程に違反して不誠実かつ不公正な事務処理を行っていることになります。
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下の画像は、都道府県による市町村のごみ処理計画に対する一般的な技術的援助の概要を整理した資料です。
なお、普通の都道府県は市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設を整備するという前提で技術的援助を与えているので、廃棄物処理法の基本方針と都道府県の廃棄物処理計画に対する考え方はどこの都道府県もこのような考え方をしています。
東部清掃施設組合(南城市ほか)のように溶融炉や最終処分場を整備していない自治体は、廃棄物処理法の基本方針と都道府県の廃棄物処理計画に適合するごみ処理計画を策定していれば、溶融炉や最終処分場を整備するまでの間は焼却灰の民間委託処分を行うことができます。そして、国の補助金を利用して溶融炉や最終処分場を整備することができます。
なお、東部清掃施設組合はこのスキーム(最終処分場を整備するスキーム)に従って事務処理を行っています。中北組合は溶融炉を整備しているが最終処分場を整備していない場合に該当しますが、県の技術的援助によって、①ごみ処理計画を改正して、②溶融炉を休止して、③焼却灰の民間委託処分を行っています。そして、改正したごみ処理計画は溶融炉の再稼動も最終処分場の整備も行わない計画になっているので、廃棄物処理法の基本方針や県の廃棄物処理計画に適合しない計画になっています。
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下の画像は、都道府県が溶融炉を整備している市町村に対して与えている一般的な技術的援助の概要を整理した資料です。
このように、市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設の更新や新設を行うことを予定している場合は、廃棄物処理法の基本方針に適合する事務処理を行っている必要があるので、溶融炉を整備している市町村は更新や新設を行う前に長寿命化を実施していなければならないことになります。沖縄県の市町村だけは無条件で長寿命化を免除するという特例はありません。
したがって、那覇南風原組合はこのスキームに従って事務処理を行っています。そして、中北組合の広域処理のパートナーである浦添市もこのスキームに従って平成24年度(供用開始から11年目)に溶融炉の長寿命化を実施しています。
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下の画像は、溶融炉を整備している市町村が溶融炉を廃止したいと考えている場合の都道府県による一般的な技術的援助の概要を整理した資料です。
このように、市町村が溶融炉を廃止する場合であっても国の補助金を利用してごみ処理施設の更新又は新設を行うことを予定している場合は、補助金適正化法の規定に基づく「包括承認事項」の適用を受ける必要があります。なぜなら、単純に溶融炉を廃止すると廃棄物処理法の基本方針に適合しない(国の補助金を利用できない)事務処理を行っていることなるからです。
なお、札幌市や仙台市は「包括承認事項」の要件を満たす最終処分場を確保していたので適正に溶融炉を廃止しています。しかし、中北組合の場合は最終処分場を整備していないので、溶融炉を廃止する前に、①最終処分場を整備するか、②自主財源により代替措置を講じなければ「包括承認事項」の適用を受けることはできないことになります。
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下の画像は、中北組合に対する沖縄県の職員の「包括承認事項」に関する技術的援助を整理した資料です。
平成26年度と平成27年度において、沖縄県の職員は中北組合に対して事務処理を適正化するための技術的援助を与えていません。したがって、県の職員は、結果的に中北組合に対してこのような技術的援助を与えていることになります。
沖縄県の職員が中北組合が溶融炉を休止している事務処理を適正な事務処理と判断している場合は、中北組合の事務処理に「包括承認事項」が適用されると考えていることになります。なぜなら、「包括承認事項」が適用される場合は溶融炉の効率的な運用を行う必要がなくなる(長寿命化を行う必要もなくなる)ので、休止したままであっても地方財政法第8条の規定には違反しないことになるからです。
しかし、実際には中北組合は「包括承認事項」の適用を受けるための要件を満たしていないので、県の職員の判断には「故意又は重大な過失」があることになります。
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以上が、那覇南風原組合と中北組合の事務処理に対する沖縄県の技術的援助と県の職員の技術的援助の違いになります。
最後に、下の画像をご覧下さい。
これは、中北組合に対する技術的援助を県の職員が県知事の命令に従って行っていると想定して作成した資料です。
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地方公務員法の規定により、県の職員は上司である知事の命令に従って事務処理を行わなければなりません。しかし、法令に違反する知事の命令に従って事務処理を行うことはできません。したがって、万が一、知事が知事の裁量で市町村におけるごみ処理施設の長寿命化に関する事務処理を任意の事務処理としている場合、そして、県の職員も任意の事務処理として市町村に技術的援助を与えている場合は、沖縄県が国と対立していることになるので、間違いなくスキャンダルになります。
【県の職員の皆様に対する要望】
中北組合に対する県の職員の皆様の技術的援助が適正な技術的援助であるとした場合は、那覇南風原組合に溶融炉の長寿命化に対する再検討を促す技術的援助を与える必要があります。なぜなら、同組合は国の要請や廃棄物処理法の基本方針に従って溶融炉の長寿命化を行う必要があると考えているはずだからです。
また、県内の市町村は今年度中にインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定しなければなりません。
したがって、市町村のごみ処理施設の長寿命化に対する沖縄県の統一的な見解を明確にしていただき、早急に各市町村に対して周知することを要望します。
【参考資料】
下の画像は、中北組合が考えている浦添市との広域処理の概要を整理した資料です。
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中北組合は溶融炉を休止したまま焼却炉の長寿命化を行わずに焼却灰の民間委託処分を続けていても、国の補助金を利用して広域施設を整備することができると考えているはずです。なぜなら、平成26年度も平成27年度も沖縄県から事務処理の適正化に関する技術的援助を受けていないので、不適正な事務処理を行っているとは考えていないからです。
下の1つ目の画像は、第四期沖縄県廃棄物処理計画に基づく市町村に対する県の事務処理の流れを整理した資料です。そして、2つ目の画像は第四期沖縄県廃棄物処理計画から焼却施設の長寿命化に関する部分を抜粋した資料です。
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平成28年度はインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」の策定期限になっています。そして、第四期沖縄県廃棄物処理計画は焼却施設の延命化に取り組む必要があるとしています。しかし、市町村に対する県の技術的援助の内容が違っていたら、沖縄県における市町村の「行動計画」はバラバラになってしまいます。
仮に、中北組合に対する技術的援助を県が適正な技術的援助と判断している場合は、他の市町村は必ずしもごみ処理施設の長寿命化を図る必要はないことになります。そうなると、沖縄県内の各市町村は「行動計画」の見直しを行う時間が必要になります。
しかし、「行動計画」を見直すためには半年以上の時間が必要になると考えます。したがって、遅くとも平成28年度の上半期には県は県内の全ての市町村に対して、中北組合に対して与えている技術的援助と同じ技術援助を与えなければならないことになると考えます。
下の画像は、沖縄県の職員が中北組合に対して他の都道府県の職員と同様の技術的援助を与えた場合を想定して作成した資料です。
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平成26年度と平成27年度において県が中北組合に対してどのような技術的援助を与えてきたのかは分かりませんが、中北組合が平成26年度から第三期沖縄県廃棄物処理計画との連携・協力を拒否していることは事実です。しかし、国から見た場合は、中北組合は廃棄物処理法の基本方針に適合しない事務処理を行っている自治体になるので、広域処理を行う場合であっても財政的援助を与えることはできないことになります。
一方、沖縄県は平成28年度から第四期廃棄物処理計画をスタートしています。そして、平成28年度はインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」の策定期限になっています。したがって、県の職員は中北組合に対して、他の都道府県の職員と同様に、事務処理の適正化を図るための技術的援助を与える必要があると考えます。
下の画像は、沖縄県が中北組合の事務処理を適正な事務処理と判断している場合に、県内の市町村に対して与えなければならない技術的援助を想定して作成した資料です。
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中北組合を含めて県内の市町村(一部事務組合を含む)は今年中にインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定することを国から要請されています。
したがって、県が中北組合の事務処理を適正な事務処理と判断している場合は、各市町村が適正な「行動計画」を策定するために、県は県内の市町村に対して可及的速やかに適正な技術的援助を与える必要があると考えます。
その7に続く