シンクタンクの南西地域産業活性化センター(NIAC、沖縄県那覇市)は6日、沖縄経済レビュー「景気拡大と転職者の増加について」を発表した。
雇用保険の加入と喪失件数、失業保険などの給付状況から県内の雇用情勢を見たところ、2010年代に入り「就職者数」と「離職者数」が大きく増えながら「失業者数(雇用保険の受給決定件数)」は減少傾向にあることが分かった。
NIACは「県内景気の拡大による雇用情勢の改善から、労働条件の良い職場や希望する職種を求めて、失業状態を経ずに転職するケースが増加傾向にある」と分析した。
雇用保険事業統計によると、県内の雇用保険の被保険者数(月平均)は2003年度に26万4808人だったのが、16年度は39万6947人に拡大。就業者数が増加していることに伴い、雇用保険の加入者も右肩上がりに増えている。
被保険者のうち、事業所に新たに雇用された際に雇用保険に加入する「資格取得者数(=就職者数)」と、離職した際に事業所の雇用保険から外れる「資格喪失者数(=離職者数)」は、2000年代はほぼ横ばいだが、10年代に入り資格者、喪失者共に右肩上がりで増加を続けている。16年度の資格取得者(年度累計)は10万人を超えて10万5289人を記録した。仕事を辞めて雇用保険から外れた資格喪失者(同)も8万8865人となっている。
就職者と離職者が増加傾向にあるのに対し、失業した際に給付金を受ける資格があると決定された「受給資格決定件数(=失業者数)」は2010年代に入ると減少していく傾向にあり、16年度は2万人を下回って1万9242人にまで低下している。
求職活動をしていない非労働力人口は46万~48万人の間でおおむね横ばいで推移している。
調査をまとめたNIACの金城毅上席研究員は「離職者数が増加している一方で、失業者数と非労働力人口が増加していないことから、雇用者が勤めていた事業所を離職し、別の事業所に再就職しているケースが増加している可能性が高い」と指摘する。
その上で「県内景気の長期拡大に伴い雇用者が転職しやすい状況になっていることがうかがえ、企業にとっては良い条件を出さないと人材を確保できない面がある」と語った。