とあるスナックで
小林
コー
ママ
小林
ママ
コー
小林
コーさん、この本の著者は日本政府が大きな借金をしても、そう簡単には<破綻>はしないと言っているんですよね。
コー
そうだね、この点は<凡人オヤマダ>と意見が一緒だと思うけど。そして<日本国債暴落>とか、<金利が上がると日本は破綻する>という意見についても、反論しているね。 p-199
財政状況を家計にたとえるのはナンセンス
日本の財政状況はよく家計にたとえられます。平成23(2011)年度の一般会計を例にとってみると、月収40万円(税収+税外収入50.4兆円)の家計として、支出が75万円(一般会計歳出94.7兆円)になっていると説明されているかと思います。支出の内訳ですが、家計費が44万円(一般歳出55.7兆円)+田舎への仕送り14万円(地方交付税交付金)+住宅ローンの元利利払い17万円(国債費21.5兆円)で、トータルすると35万円が(44.3兆円)が不足するというものです。そしてこの家計のローン残高は6348万円(国債残高667兆円)だと指摘されるので、こういった数字を見せつけられると国民は我が身に置き換えて、これは大変だと思ってしまいます。
しかしながら、法政大学の小峰隆夫教授が指摘するように、国の財政状況を家計にたとえるのは「わかりやすい」ものの経済学的には不適当だとされています。実は小峰先生はもともと経済企画庁におられたのですが、その頃、青山学院大学の大学院で「経済白書を読む」という講義をされ、私も受講者の一人でした。先生の授業ではデータを基に経済的な真実は何かというアプローチが徹底されており、大変興味深いものでした。「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書に述べられている説が正しいとは限らない」ということ、「データのなかにこそ真の答えがある」ということを教えていただきました。
先生の言葉をお借りすると、「国家の場合は赤字が国内でファイナンス(国内で貸し借り)されている限りは、国民((国民が形成する国家)が国民から借金しているだけなので、国民全体が(対外的に)負担を背負い込むことにはならない」となります。
これがもし外国からの借金だとすれば、国民が働いて外国に対して借金を返済しなければならないので、日本国民全体の負担になります。つまり、今の日本のように政府が国債という負債を増やしたとしても、それを保有するのは国民ですから、国民の資産は逆に増えていることになります。
そんな話は聞いたことがない、と言われるかもしれませんが、国内だけで貸し借りが成立しているのであれば「政府の負債=国民の資産」というのはアカデミックな場だけではなく、金融の現場であるディーリング・ルームでも普通に話されていたことです。
財政状況を家計にたとえるのはナンセンス
日本の財政状況はよく家計にたとえられます。平成23(2011)年度の一般会計を例にとってみると、月収40万円(税収+税外収入50.4兆円)の家計として、支出が75万円(一般会計歳出94.7兆円)になっていると説明されているかと思います。支出の内訳ですが、家計費が44万円(一般歳出55.7兆円)+田舎への仕送り14万円(地方交付税交付金)+住宅ローンの元利利払い17万円(国債費21.5兆円)で、トータルすると35万円が(44.3兆円)が不足するというものです。そしてこの家計のローン残高は6348万円(国債残高667兆円)だと指摘されるので、こういった数字を見せつけられると国民は我が身に置き換えて、これは大変だと思ってしまいます。
しかしながら、法政大学の小峰隆夫教授が指摘するように、国の財政状況を家計にたとえるのは「わかりやすい」ものの経済学的には不適当だとされています。実は小峰先生はもともと経済企画庁におられたのですが、その頃、青山学院大学の大学院で「経済白書を読む」という講義をされ、私も受講者の一人でした。先生の授業ではデータを基に経済的な真実は何かというアプローチが徹底されており、大変興味深いものでした。「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書に述べられている説が正しいとは限らない」ということ、「データのなかにこそ真の答えがある」ということを教えていただきました。
先生の言葉をお借りすると、「国家の場合は赤字が国内でファイナンス(国内で貸し借り)されている限りは、国民((国民が形成する国家)が国民から借金しているだけなので、国民全体が(対外的に)負担を背負い込むことにはならない」となります。
これがもし外国からの借金だとすれば、国民が働いて外国に対して借金を返済しなければならないので、日本国民全体の負担になります。つまり、今の日本のように政府が国債という負債を増やしたとしても、それを保有するのは国民ですから、国民の資産は逆に増えていることになります。
そんな話は聞いたことがない、と言われるかもしれませんが、国内だけで貸し借りが成立しているのであれば「政府の負債=国民の資産」というのはアカデミックな場だけではなく、金融の現場であるディーリング・ルームでも普通に話されていたことです。
ママ
ほんと聞いたことがないわよ。
じゃ、どんどん借金をしてもいいわけ?
じゃ、どんどん借金をしてもいいわけ?
小林
いやーママ、それはどんどん増えていっていいわけはないと思います。 p-201
もちろん、これをもって政府の負債が増大しても長期的に何も心配がないとするわけではなく、また前の章で述べたように、意味のない為替介入を実施して負債を増やすことをよしとするわけでもありません。中長期的な収入と支出はバランスをとることが必要であり、無駄な借金はするべきではないというのは当然のことです。しかし、政府の借金の仕組みを正確に把握しないまま、財政問題を語るのは危険です。そして、様々な意見はあってしかるべきですが、少なくとも事実にスポットライトを当てず、また事実とかけ離れたことを根拠に、日本経済が破綻するから増税が必要だ、あるいは海外へ資金を移せ、などと恐怖心を煽るべきではないと思うのです。それでは皆が混乱するだけです。経済は人の気持ちで左右される部分が多分にありますから、ただでさえ希望の少ないところで活性化することは難しいのです。日本人がむやみに自信を失う必要はないでしょう。
日本の財政破綻論は既に古い
ところで、日本破綻論は今に始まったことではありません。日本の「財政非常事態」を鈴木善幸首相(当時)が宣言したのが1982年ですが、当時も消費税導入という増税への目論見があったと言われています。公債発行残高が100兆円を超えたのは1983年、それが平成23年度末(2012年3月末)では667兆円に上ると見込まれています。100兆円超えの当時ですら既に財政破綻の一歩手前だと叫ばれていたわけですが、あれから発行額が7倍近くに増える過程で長期金利は一向に上昇する気配を見せませんでした。それどころか7%台から1%台へとひたすら低下しており、30年近くたとうとしている今でも日本は財政破綻をしていません。(図表25)
今も昔もこのまま借金を増やせば長期金利が上昇し、円は暴落し、国家は破綻するという論調に変わりはないのですが、この30年間長期金利は低下し続け、ドル/円の為替レートは円高傾向でした。日本の場合は財政赤字が拡大しても円安には繋がらないのです。
日本の財政破綻論を真に受けてしまうと、円で持っているのは心配だと言って、円高に向かう途中なのに外貨預金をすることになったり、サブプライムのような海外の仕組債などに手を出して痛手を被ることになりますので、「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書に述べられている説が正しいとは限らない」ということを肝に銘じておく必要があるかと思います。
そもそも日本人が安定した投資先を求めて日本国債の利回り以上を期待するほうが、無理があるのです。法外な金利などを提示されたら、まずは疑ってかかる必要があります。それが国内の何らかの投資先であればネズミ講的な商品だと思って頂いて間違いはないでしょうし、海外であれば為替リスクはもちろんのこと、仕組債など複雑なものは思わぬ時限爆弾のようなものが仕掛けられているリスクがある、と考えてよいかと思います。
もちろん、これをもって政府の負債が増大しても長期的に何も心配がないとするわけではなく、また前の章で述べたように、意味のない為替介入を実施して負債を増やすことをよしとするわけでもありません。中長期的な収入と支出はバランスをとることが必要であり、無駄な借金はするべきではないというのは当然のことです。しかし、政府の借金の仕組みを正確に把握しないまま、財政問題を語るのは危険です。そして、様々な意見はあってしかるべきですが、少なくとも事実にスポットライトを当てず、また事実とかけ離れたことを根拠に、日本経済が破綻するから増税が必要だ、あるいは海外へ資金を移せ、などと恐怖心を煽るべきではないと思うのです。それでは皆が混乱するだけです。経済は人の気持ちで左右される部分が多分にありますから、ただでさえ希望の少ないところで活性化することは難しいのです。日本人がむやみに自信を失う必要はないでしょう。
日本の財政破綻論は既に古い
ところで、日本破綻論は今に始まったことではありません。日本の「財政非常事態」を鈴木善幸首相(当時)が宣言したのが1982年ですが、当時も消費税導入という増税への目論見があったと言われています。公債発行残高が100兆円を超えたのは1983年、それが平成23年度末(2012年3月末)では667兆円に上ると見込まれています。100兆円超えの当時ですら既に財政破綻の一歩手前だと叫ばれていたわけですが、あれから発行額が7倍近くに増える過程で長期金利は一向に上昇する気配を見せませんでした。それどころか7%台から1%台へとひたすら低下しており、30年近くたとうとしている今でも日本は財政破綻をしていません。(図表25)
今も昔もこのまま借金を増やせば長期金利が上昇し、円は暴落し、国家は破綻するという論調に変わりはないのですが、この30年間長期金利は低下し続け、ドル/円の為替レートは円高傾向でした。日本の場合は財政赤字が拡大しても円安には繋がらないのです。
日本の財政破綻論を真に受けてしまうと、円で持っているのは心配だと言って、円高に向かう途中なのに外貨預金をすることになったり、サブプライムのような海外の仕組債などに手を出して痛手を被ることになりますので、「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書に述べられている説が正しいとは限らない」ということを肝に銘じておく必要があるかと思います。
そもそも日本人が安定した投資先を求めて日本国債の利回り以上を期待するほうが、無理があるのです。法外な金利などを提示されたら、まずは疑ってかかる必要があります。それが国内の何らかの投資先であればネズミ講的な商品だと思って頂いて間違いはないでしょうし、海外であれば為替リスクはもちろんのこと、仕組債など複雑なものは思わぬ時限爆弾のようなものが仕掛けられているリスクがある、と考えてよいかと思います。
ママ
ほんとうに誰の意見が正しいのか分からないし、難しいわね。
コー
いろんな人の意見を聞いてそして自分で判断するしかないんだろうね。たしかに時間はかかるな。