とあるスナックで
コー
この本の表紙に、<金融支配階級が進める民営化・搾取・貧困>と書いてあるね。著者はけっして陰謀論者じゃないけど、左派からみれば、やっぱりこのような結論になるんだろうな。
この本と、こないだ読んだ、<超帝国主義国家 アメリカの内幕>とナオミ・クライン著の<ショック・ドクトリン>を読んでいくと、
自然とわかってくるんだな。アメリカという国の経済政策や金融政策や対外政策の本質が。
これこそが<300人委員会>の真の姿なんだな。
小林
そうですね。グローバリズムとか自由経済主義とか、名前は聞こえが良ければなんだっていんですね。
結局は<帝国主義>だったんですね。強いものが弱いものを食い殺す。システムの仕組みを知っているものが、知らない者理解できない者から搾取する、そんな構造だったということでしょう。
だから必死になってこの金融・経済・の仕組みが一般の人たちに分からないようにしてきたのでしょう。
コー
この本の著者、ジェームズ・ペトラスについて、こう書かれている。
ジェームズ・ベトラス(JAMES PETRAS)
ニューヨーク・ヒンガムトン大学社会学名誉教授。数十冊におよぶ著書のうち最近のものにThe Dynamics of Social Change in Latin America(Palgrave
Macmillan,2000);・・・・・・・・・がある。多くの専門誌だけでなく、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、ネーション、ニュー・レフト・レヴュー、ル・モンド・ディプロマティックといった非専門誌にも精力的に執筆し、その鋭い米国社会批判で知られる。インターネット上でも広く紹介され、自身の公式ウェブサイト(http://petras.lahaine.org)も持つ。アメリカ社会学会功労賞、2002年度ロバート・ケニー最優秀書籍賞受賞。
小林
では、まず(訳者あとがき)を読んでみましょう。
本書は、2007年に刊行された Rulers and Ruled in the US Empire の翻訳である。著者のジェームズ・ペトラスは、精力的な執筆活動を通して米国社会を鋭く批判する社会学者で、その幅広い知識と観察眼、世に真実を暴こうとする強固な姿勢は、本書においても首尾一貫している。
ペトラスによれば「帝国アメリカ」の真の支配者は、「金融支配階級」と呼ばれる少数エリートである。
彼らは国家の予算や税制、外交政策などを操って国内経済を支配する一方、多国籍企業として、他国の経済社会をも支配する。実際、米国の多国籍企業を中心とした「外資」は、ロシアやラテンアメリカ、アジアやアフリカといった発展途上国の安価な労働力を搾取し、有利な公営企業を略奪して、その暴利を貪っている。現地経済を疲弊させ、「移民」という形で安い労働者を「輸入」しようとするのも、彼らの戦略の一つだ。
ロシアでは、1990年代に急激な民主化が進められたが、そうした「ショック療法」を促したのも米国の経済顧問らであり、結果として、マフィア同然の新興財閥が国家の財産を略奪し、巨利を独占した。ラテン・アメリカでも、資本主義の名の下に公営企業が次々と民営化され、米国の多国籍企業に廉売された。アフリカでは、米国の傀儡政権が植民地戦争に利用され、多くの民間人が犠牲となった。こうした現実にもかかわらず、多くの国々がなおも帝国の資本家や多国籍企業に有利な政策を支持し、自国の労働者や農民を虐げている。著者に言わせれば、これは民営化・資本主義化という名の「帝国建設」にほかならず、米国はその中心的指導者である。
そして、その米国において無視できないのがユダヤ系ロビー団体、つまり、シオニスト・パワーの存在だ。マスコミや政財界に強大な影響力を持つ彼らは、ベーカー元国務長官率いる「イラク研究グループ」の中東和平案を反故にした。米国の利益よりも、イスラエルの利益を最優先する彼らの活動によって、イラクからの撤兵やシリア・イランとの対話を勧めるベーカー委員会の提言は徹底的に妨害された。こうしたユダヤ・ロビーの暗躍と、彼らを介した米国・イスラエルの特異な関係については、既刊の「アメリカのイスラエル・パワー」(三交社 高尾菜つこ訳)を参照されたい。
また、著者は中国の台頭についても鋭い分析を行っている。現在、中国は凄まじい経済成長を続けているが、その資本の大半は帝国主義国の多国籍企業や国際的投資会社によるもので、純粋な中国系企業によるものではない。つまり、中国は帝国主義国のパートナーやライバルになるよりも、彼らの帝国建設に利用され、その産業植民地にされようとしているのではないか。とりわけ、従来は中国と台湾を意味した「二つの中国」という概念が、外資の集中する中国沿岸部と、そこへ安い労働力や原料を提供する中国内陸部を意味するようになったという指摘は興味深い。
ただ、著者は外国資本のメリットについても言及し、その有効利用の方法として「外資の公的管理モデル」を提言している。それによれば、外資に依存することなく、国内経済の発展と安定を図るためには、外資よりも国有化や国内投資を拡大することが重要だという。本来なら、外資はその国の発展の足掛かりとなるべきだが、現実には現地経済が外資の食い物にされている。外資はその賛成論者が言うような経済の近代化や競争力の強化はもたらさない。それどころか、彼らは現地経済に不均衡をもたらし、利益と安い労働力を貪るばかりである。外資中心のアプローチに代わる発展モデルを進めるには、外資との対立やその報復に備えた戦略が必要だという。
以上のように、「帝国アメリカ」の金融支配階級は、多国籍企業や現地の汚職政治家と結びつき、世界中で帝国建設を進めている。その一方で、アジアやアフリカ、ラテンアメリカといった第三世界の国々では、貧しい労働者や農民が激しい搾取にさらされている。支配者と被支配者、両者の間では、ますます格差が拡大し、とくに中国は世界最大の格差社会となった。無秩序な資本主義化によって、汚職や犯罪が蔓延し、労働環境が悪化して、生活水準が急激に低下している。そもそも、金融支配階級のような富裕層の誕生・台頭は、市民社会の崩壊・衰退を意味し、社会全体の繁栄や利益にはつながらない。
では、こうした帝国主義による世界の二極化を阻止することはできないのだろうか。イラク戦争では、米国が現地の民衆による大規模な抵抗運動に遭い、その勝利を大きく損なわれた。つまり、世界最強の帝国主義国家をもってしても、人々の抵抗を抑えることはできなかったのであり、逆に人びとは米国の「グローバル化」(=世界規模の帝国建設)を見事に妨げたと言える。化学兵器と情報戦の時代にあっても、民衆の不屈の精神が勝敗を左右することを、彼らは証明してくれた。一方、日本では、イラクへの自衛隊派遣を違憲とする判断が名古屋高裁で出されたところだ。著者の立場で言えば、日本の派兵は米国の帝国建設への加担にほかならず、「共犯」となるのだろう。いずれにせよ、私たちは「国際化」や「グローバル化」といった耳障りのいい言葉に惑わされることなく、自国の行動を慎重に検討しなければならない。
最後に、著者は南京事件や朝鮮戦争など、第二次大戦や各国の内戦・侵略における死傷者数について、その最大数を記していると思われる。しかし、そうした数字をめぐっては現在も様々な意見があり、事実を完全に確認することは難しい。したがって、本書では敢えて原書に忠実に訳すことにした。読者の方々には、そうした事情を踏まえた上で、それぞれに判断していただければと思う。だだし、歴史の期間や数値の算定の違いなど、明らかに矛盾と思われる箇所については、訳者の判断において適宜、統一・修正した。
本書の刊行にあたっては、株式会社三交社ならびに株式会社バベルの皆様に心からお礼を申し上げたい。また、本書の翻訳中に亡くなった父へも改めて感謝し、その霊前に本書を捧げたい。なお、訳出にあたっては可能なかぎりの調査と推敲を重ねたつもりだが、訳者の不勉強による誤りもあろうかと思う。ご教示いただければ幸いである。
2008年4月 高尾菜つこ
コー
うーん、敵はあまりにも巨大で先を思うと暗い気持ちになってしまうな。