とあるスナックで
コー
俺は今中国でバブル崩壊が本格的に始まっていると思うんだ。
これが日本に影響しないわけがない。もうマンション,不動産、土地の部門で影響が出ているんじゃないんだろうか。中国資本の撤退でどこまで日本の経済に影響が出るかだと思う。当然株式市場にも影響が出ると思う。のんきにはいられないと思う。
その備えのためにも、もう一度「バブルとバブル崩壊」について考えてみたいんだ。
ところで、小林君は「バブル・バブル景気」を経験したことがるかい。
小林
そんなにウハウハしていたんですか、信じられないですね。
コー
そうなんだ、信じられないよね。懐かしいね。もう一度バブルを味わいたいね。ウハウハしているときは、これが「バブル・泡」だとは思わなかったけど、今思えば、「やつら」は、はっきりわかっていたと思う、いまがバブルだと。どれだけ全体で債務があるのか、どれだけ銀行融資を絞れば、経済全体が崩壊していくのかを。
もう一度、山口薫の「公共貨幣」を読んでみよう。
p-167
8・2・1 1929年の株価大暴落と銀行休日
1929年10月24日(木曜日)、28日(月曜日)、29日(火曜日)とニューヨークのウオール街で株価が大暴落し、株価暴落はその後も約1カ月も続き、米国は未曽有の大恐慌に突入していった。ウイキペディアの「世界恐慌」の説明によると、その後以下のような悲惨な状況となった。
1932年後半から1933年春にかけてが恐慌の底辺であり1933年の名目GDPは1919年から45%減少し、株価は80%以上下落し、工業生産は平均で1/3以上低落、1200万人に達する失業者を生み出し、失業率は25%に達した。閉鎖された銀行は1万行に及び、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止、社会主義革命の発生すら懸念された。
ーーーーーー。
その背後には必ず貨幣市場に於けるお金の激変があるはずである。背後というのは控えめの表現で、お金が前面にありその流れが止まったり、消えたりするから、工業生産の減少や失業の発生といった実物経済が甚大な影響を被ると観察するのが正しい見方である。ーーー。
ーーーーー。
それでは株価が暴落すればどのようなことが生じるのか。(コー注:中国の場合は住宅市場のバブルだったんだろう。多くの人がお金を銀行から借りて、値上がりを待って購入していたんだろう、けっして自分が住むためでなく。)
第一部で学んだお金の知識を動員して考えてみよう。まず、リーマンショックの時と同じように、1920年代の投資家も莫大なレバレッジをかけて借金をし、株式投資や証券投資をしていた。彼らはどうするだろうか。(コー注:株や住宅価格が値上り、だんだんと新しく買う人が少なくなった。そのうち借金の返済ができない人が出てきた。また利益が出ている人の売りが目立ってくる。損切りも出てくる。売りが買いより大きくなり始め、そして売りが売りを呼ぶ。)
株式(コー注:住宅など)を処分し、それでも十分でない場合はあらゆる資産を現金化して、借金を減らそうとする。また、銀行も「貸しはがし」をして、出来るだけ借金を回収し、株価等手持ちの金融資産の減価からくる債務超過を回避しようとする。こうした結果、銀行預金は減少する。(コー注:この動画を見ると、日本でいえば政府の国債を、日銀がお金を作って直接買っているという事か。まさに今中国は、この銀行預金が消えていっているんだと思う。それなのに今中央政府は各銀行にもっと融資を増やせと言っている。一般の人は銀行から預金を現金(コー注:現金=当座預金)で引き出そうとする。ますます銀行は融資の元となる現金が減っていくので融資が出来にくくなる。そして返済の当てのない融資は銀行は出来ない。債務超過になるからね。債務超過になると企業や銀行や政府機関でさえ潰れてしまうという事が今一つ、分かっていないんだろうか。そして信用創造によって作られた預金=通貨がどんどん銀行から消えていっている。ちょっと考えると不思議で不思議でしょうがない。新しく信用創造で作られる預金より、返済される預金が多いという事か。)
銀行預金の大半は信用によって「無から創られた」お金であり、第一部で見たように、こうした預金が減少するにつれ、お金は流通から消えていく。(こちらの図を参照)
ーーーーー。
コー
なにしろバブルのころは良かったなー。
週末なれば、課長、課長ちょっと一杯行きましょうよと誘って、まずかるく食事と一杯ひっかけて、それから本格的だよ。まずキャバレーにいって大騒ぎ。さんざん飲んで女の子と騒いで騒いで、暴れちゃうわけだ。そのあとはスナックに行って、また飲んで歌って、そして最後はラーメン屋で食べて、そして家の近くで、飲みすぎて食べ過ぎてゲロを吐いて、朝方に家に帰るわけだ。いやー景気良かったな、懐かしいよ。
小林
そうですか、そんなことしてたのはコーさんだけじゃないんですか。
コー
いやいや、あのころは日本の家電業界も、繊維業界も、その他の製造業の業界もすべて景気が良かったんだ。輸出も順調だったしね。これがバブル・泡だとはだれも思わなかったんだよ、当時は。株も土地も上がっていって、で身近でも大儲けをした人が続出していたんだよ。土地なんて上がることはあっても、下がることはないだろうと思っていたね。それは1920年代のアメリカもそうだったんだな。いやーなつかしいねー。
それが一気に株が下がり始め、そして周りもだんだん景気が悪くなっていったんだな。
そのもっとも大きな原因は何だったのか。原因は一つだけじゃないと思うけど。そして現在に至る三十数年にわたるデフレ。これは世界の経済学者も不思議がっているんじゃないんだろうか。でも最近は不思議がるというより、笑っちゃうという事だと思う。要するに日本人は経済のことが分からないという事だ、と気づいたんだな。
バブルとバブル崩壊とその後の景気後退と銀行不安、山口薫の本の180ページの「信用収縮ループ」に陥ってしまったという事だ。今の中国はまさにこの「信用収縮ループ」に陥り、最悪の方向に向かっているという事だ。ちょっとやそっとのことでは止められないんだろう。それは単に物の作り過ぎや、株価の上がり過ぎ、ではないという事だ。
もし今の中国が1929年10月29日からのアメリカのように最悪になったら、当然日本にも影響が来るんだろう。それは急速に底に向かって進んでいる。
しかしあのバブル崩壊からの不景気とデフレの原因を日本人は分かっているんだろうか。
お金=通貨というものを理解しないと絶対分からないと思うんだけどね。