(01)
(ⅰ)
1 (1)~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} A
1 (〃)すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
1 (2)∃x~{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} 1含意の定義
3 (3) ~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} A
3 (4) ~{~∃y(聖人y&~知ya)∨ ∀z(愚人z→~知za)} 3含意の定義
3 (5) ∃y(聖人y&~知ya)&~∀z(愚人z→~知za) 4ド・モルガンの法則
3 (6) ∃y(聖人y&~知ya) 5&E
3 (7) ~∀z(愚人z→~知za) 5&E
3 (8) ∃z~(愚人z→~知za) 7量化子の関係
9(9) ~(愚人c→~知ca) A
9(ア) ~(~愚人c∨~知ca) 9含意の定義
9(イ) 愚人c& 知ca ア、ド・モルガンの法則
9(ウ) ∃z(愚人c& 知za) イEI
3 (エ) ∃z(愚人c& 知za) 89ウEE
3 (オ) ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za) 6エ&I
1 (カ) ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za) 23オEE
1 (キ) ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)} カUI
1 (〃)いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
(ⅱ)
1 (1) ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)} A
1 (2) ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za) 1UE
1 (3) ∃y(聖人y&~知ya) 2&E
1 (4) ∃z(愚人c& 知za) 2&E
5 (5) 愚人c& 知ca A
5 (6) ~(~愚人c∨~知ca) 5ド・モルガンの法則
5 (7) ~(愚人c→~知ca) 6含意の定義
5 (8) ∃z~(愚人c→~知za) 7EI
5 (9) ~∀z(愚人c→~知za) 8量化子の関係
1 (ア) ~∀z(愚人c→~知za) 459EE
1 (イ) ∃y(聖人y&~知ya)&~∀z(愚人c→~知za) 3ア&I
1 (ウ) ~{~∃y(聖人y&~知ya)∨ ∀z(愚人z→~知za)} イ、ド・モルガンの法則
1 (エ) ~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} ウ含意の定義
1 (オ)∃x~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} エEI
1 (カ)~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} オ量化子の関係
1 (〃)すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
従って、
(01)により、
(02)
① ~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)}
② ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
② いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
③ 聖人所レ不レ知未ニ必不一レ為二愚人所一レ知也=
③ 聖人所〔不(知)〕未〈必不{為[愚人〔所(知)〕]}〉也⇒
③ 聖人〔(知)不〕所未〈必{[愚人〔(知)所〕]為}不〉不也=
③ 聖人の〔(知ら)不る〕所未だ〈必ずしも{[愚人の〔(知る)所と〕]為さ}不んば〉あら不る也。
然るに、
(04)
[訳]聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない(愚人が既に知っている場合もある)。
(教学社、風呂で覚える漢文、1998年、26頁)
然るに、
(05)
② いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
③ 聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない。
に於いて、
②=③ ではない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① ~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→∀z(愚人z→~知zx)}
③ 聖人所レ不レ知未ニ必不一レ為二愚人所一レ知也。
に於いて、
①=③ ではない。
(07)
良くは知らないものの、あるいは、
③ 聖人所レ不レ知未ニ必不一レ為二愚人所一レ知也。⇔
③ 聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない。
のやうな「命題」を「翻訳」する場合は、「様相論理学」が用ひられるのかも知れない。