(01)
「今日は雨が降っている。 故に、今日は雨が降っているか、もしくは寒い。」
「阿部さんは日本人である。故に、阿部さんは日本人であるか、阿部さんは男性でない。」
といふ「推論」を、我々は、普段、行はない。
然るに、
(02)
例(選言導入)
以下の推論について考えます。
今日は雨が降っている。ゆえに、今日は雨が降っているか、もしくは寒い。
命題変数 P,Qを、
P=今日は雨が降っている。
Q=今日は寒い。
とおくと、先の推論は、
P ∴ P∨Q
と定式化されます。選言導入より、これは妥当な推論です。
(Webサイト:WIIS)
従って、
(01)(02)により、
(03)
「阿部さんは日本人である。故に、阿部さんは男性でないか、阿部さんは日本人である。」
「今日は雨が降っている。 故に、今日は雨が降っているか、もしくは寒い。」
といふ「選言導入」といふ「推論」を、我々は、普段、行はない。
然るに、
(04)
P=阿部は日本人である。
Q=阿部は男性である。
とするならば、
① P├ Q→(P&Q)
② 阿部さんは日本人なので、阿部さんが男性であるならば、阿部さんは、日本人であって、男性である。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
① P├ Q→(P&Q)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
1 (3) Q→P 2含意の定義
4(4) Q A
14(5) P 34MPP
14(6) P&Q 45&I
1 (7)Q→(P&Q) 46CP
従って、
(04)(05)により、
(06)
① P├ Q→(P&Q)
② 阿部さんは日本人なので、阿部さんが男性であるならば、阿部さんは、日本人であって、男性である。
に於いて、
①=② であって、
① は、「命題計算(propositional calculus)」として「妥当」であって、
② は、「常識」として「正しい」。
然るに、
(03)により、
(07)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
といふ「2行」は、「阿部さんは日本人である。故に、阿部さんは男性でないか、阿部さんは日本人である。」
といふ「推論(選言導入)」に、相当する。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① 阿部さんは日本人である。故に、阿部さんは男性でないか、阿部さんは日本人である(選言導入)。
② 阿部さんは日本人なので、阿部さんが男性であるならば、阿部さんは、日本人であって、男性である。
に於いて、
① といふ「推論」が「正しくない」であれば、
② といふ「結論」も「正しくない」。
といふ、ことになる。
然るに、
(09)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
といふ「2行が意味する所」からすれば、「Pが真であることは、確実である。」
然るに、
(10)
「∨」といふ「演算子」の「働き」により、
「~Q∨P」に於いて、「Pが真である」ならば、「~Qはが真であっても、真でなくとも」、
「~Q∨P」自体は、「必ず、真である。」
従って、
(09)(10)により、
(11)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
といふ「2行が意味する所」は、「Pは真であるが、~Qは真であるかも知れないし、真でないかも知れない。」
といふ、ことになる。
従って、
(07)~(11)により、
(12)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
といふ「2行が意味する所」は、
① 阿部さんは日本人である。故に、阿部さんは男性でないか、阿部さんは日本人である(選言導入)。
といふ「意味」ではなく、
② 阿部さんは日本人であるのだから、阿部さんは日本人の男性でないか、男性であるかの、どちらかである(選言導入)。
といふ「意味」に取るのが、「正しい」。
然るに、
(04)により、
(13)
② 阿部さんは日本人であるのだから、阿部さんは日本人の男性でないか、男性であるかの、どちらかである。
といふことは、
① P├ Q→(P&Q)
といふこと、すなはち、
② 阿部さんは日本人なので、阿部さんが男性であるならば、阿部さんは、日本人であって、男性である。
といふことに、他ならず、それ故、
① P├ Q→(P&Q)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨P 1∨I
1 (3) Q→P 2含意の定義
4(4) Q A
14(5) P 34MPP
14(6) P&Q 45&I
1 (7)Q→(P&Q) 46CP
といふ、「命題計算(propositional calculus)」は、「正しい」。
従って、
(02)(14)により、
(15)
① 今日は雨が降っている。ゆえに、今日は雨が降っているか、もしくは寒い。
とするのではなく、
② 今日は雨が降っている。ゆえに、今日は雨が降っているが、寒いかどうかは分からない。
とするのが、「正しい」。