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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「小石川高校有志の会」の公開学習会

2007年11月20日 | 平和憲法
  ☆ 1200pのホームルームノート ☆

「小石川高校有志の会」の公開学習会
に参加した。講師はこの学校で物理を教える上條隆志先生、クラスの自治づくりの実践例を報告された。ただしいまは個人情報の問題などがあるので、この日話されたのは数年前に担任されたクラスの話である。

 上條先生は入学式直後の学級開きでクラスの生徒に3つのことを話した。
 「権威に盲従しないで生きよう。たとえ先生の言うことでもそのまま従ってはいけない。自分の頭でもう一度考えよう」
 次に「意見表明権」「思想信条良心の自由」と大きく板書して「その人の良心の自由に基づく意見表明・異議申し立ての権利は誰も侵害できない、自分の意見表明の権利を守ることは他人の意見表明の権利も尊重することだ」と説明した。
 最後にクラスの自治をつくることを呼びかけた。いまの生徒はクラス討論で、議論もしないまますぐ採決し、しかも棄権する生徒が多い。そこで「自分たちの力でクラスを運営し、民主的に討議しよう。賛成にせよ反対にせよ、少なくとも一つは意見が出てから採決しよう。とりわけ少数の反対意見を大事にしよう」と呼びかけた。
 具体的には「週1回のロングホームルームは君たちのものだ。自分たちのやりたいことを企画を立ててやってほしい」と伝えたところ、生徒は教育実習生歓迎パーティ、校内泥ケイなどを企画・実行した。

 また日直日誌代わりにB5、100pのノートを渡した。毎日2人の日直が交代で書く日誌だが「時間割の記録などはどうでもいい。できれば自分が思ったこと、考えたことを書いて担任に見せてほしい。親には絶対みせないことだけが約束」と注文をつけた。担任も毎日みて赤線を引き、欄外に大量のコメントや感想を記入する。

しかも日誌なので即日返却しないといけないので、なかなか大変だ。やがて生徒はノートを自宅に持ち帰って何ページも書き、休み時間中に回し読みするようになった。
 最初のころは「結局一人で納得して終わりかよ、みたいになってしまいました。ドーモすいません。この文はきれいさっぱり水に流して下さい」といった他人への遠慮や気遣いがみられた。しかし、次第にみんな同じような悩みをかかえていることに気づき、マジメなことを書いても誰かは理解してくれるという安心感がクラスに広がっていく。そして、荒れた中学で好きではないと感じる人が多かったのは「自分がその人たちのことをわかろうとしなかったからではないか」とか、過去の自分のリストカット体験、本当の自分とは何か、など深刻な話や「人生」を語る文章が増えていく。
 仲間内の際限のないおしゃべりも楽しいが、「やさしさごっこ」になりかねない。ノートを通して自分をさらけだし、自分の意見を責任をもって書くことで、「本当の自分」をみつめ「仲間」に出会えることを発見するまでに成長していった。気の合わない人とも、ノートだからこそ意見表明や討論ができるのである。
 小石川高校はクラス替えなしで3年間同じメンバーでクラスが続く。このノートは3年で1200p近くになった。

 このお話を聞いていて、増田都子さんが足立第十六中学で実践した「紙上討論」授業を思い起こした。
 増田さんは中学2年生の社会科の授業でビデオ「沖縄の米軍基地 普天間第二小の場合」を見せた。直後の感想は「騒音がうるさく、小学生がかわいそう」「墜落事故がこわい」という情緒的なものだった。
 この感想を読み合い2回目の紙上討論で出てきた意見は基地移転や「米軍基地は有用」という意見だった。
 次の紙上討論ではこの「米軍基地有用論」をめぐり2派に分かれ激しい討論になった。
 そういうプロセスを経て4回目の紙上討論では「これからの時代は、どの国も協力して生きていく時代だ。もう武力や軍事力でどうにかしようなんて考えないようにしよう」「絶対、日本は戦争しないということになれば、米軍基地の必要もなくなるし私たちも、沖縄の人たちも、世界の人みんなが平和な生活が送れると思う」という第三の意見、日本国憲法の精神に沿った意見が出てくる。
 もちろん一本調子で進むわけではなく「もー少しすれば日本政府がなんとかしれくれると思う」「僕には関係のないことだから、なんだっていいんじゃないかと思う」といった傍観者的意見も出た。しかしこういう意見には、必ず反論が出る。

 2つの例には、中学生と高校生という年代の差や、授業の場合とHRの場合の違いから生じる内容の差もある。しかし紙面を通した討論により、生徒の意見がはっきり成長していく様子はよく似ていた。
 紙上討論で、先生のコメントは基本的に生徒が知らない事実や新聞などに出ている論評の紹介である。資料を集めたり熱心にアンダーラインを引くことは教員にとって大きい時間的負担になる。
 小石川のノートの現物も見せていただいたが、本当に多くの上條先生の書き込みやアンダーラインがあった。教師が行う役割にも共通した面がみえた。

☆このほか、クラスの最大のイベントである秋の創作展(文化祭)のクラス演劇の話を聞いた。もちろん演目の決定、キャスティング、演出すべて生徒自身が行う。
 3年生のときに上演した「アンチゴーヌ」(ジャン・アヌイ)の一部をビデオでみた。舞台は壁も床も、出入り口にかかっているカーテンも白、ソファだけが深緑である。クレオンは黒の衣装、アンチゴーヌは白の衣装をまとうが、白一色のバックに大きく映し出される黒い影が印象的だった。工夫のみられるライティングの下、2人の俳優の演技には緊迫感がみなぎっていた。

『多面体F』

http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/e/00b9ace6d2919fcc0c371ea11f6bfc60

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