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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「学習指導要領」はマキシマムではなくミニマム。教員の創意工夫の裁量を認めた確定判決

2018年12月17日 | こども危機
 ◆ <資料紹介>「学習指導要領は、一言一句が法規としての拘束力を有しているわけではない」
   等の判決文があります

   皆さま     高嶋伸欣です   重複ごめん下さい


 1 最近も全国各地で、地方議会の議員の議会質問や『産経新聞』などの言いがかり報道などで、歴史教育や平和教育への様々な圧力が加えられ、教員を守るべき教育委員会が彼らの口車に載せられて、「学習指導要領を逸脱した不適切な授業・教材」などという見解を表明したりしているケースが多発しているようです。
 2 けれども「学習指導要領」は、各学校の各学年・各科目で「最低限としてこれらの項目・内容に一応は触れる・言及するように」と示しているもので、それらの項目・内容を超える学習を教員が創意工夫をもって、各学校の児童・生徒の状況に合せて組み立てることを前提にしているものであるということは、1976年5月21日の最高裁判所大法廷判決(旭川学力事件判決)で、明示されていた事柄です。
 3 けれども、文科省は同判決後も、教科書検定などにおいて同「要領」を「許容限度」を示したものとして振りかざし、いつの間にか学校教育関係者に「『要領』を超える内容の学習は違反!」というイメージを植え付けてしまっていました。
 4 やがて1990年代に「文部省は学テ判決を悪用している」との指摘が広がり始めた状況下で、しぶしぶですが「許容限度」ではなく「最低基準」であることと、長い間ウソの説明とそれに基づく権限行使をしてきたと認めます。
 それが、寺脇研氏の論考「今こそ、『たかが学習指導要領』という思いを強く持ってほしいです」(『総合教育技術』1998年8月号、小学館)なのです。
 5 寺脇氏は、「画一的に、学習指導要領どおりに指導することとされていた時代があったことを否定するつもりはありません。文部省にしても、こうしなさい、ああしなさいという指示を出し、学校の裁量をあまり認めなかった時代が、過去にありました」と、率直に語っています。
 6.ところがこれに対して、教育現場や教職員組合、教育学者、教科書業界さらには教育担当のマスコミ記者たちのどこからも、文科省の責任を厳しく追及する声はほとんどあがりませんでした。
 7 そこで文部省は、「要領」が「最低基準」であることの公的説明を先延ばしにします。ようやく公的な説明を明らかにしたのが第7次「要領」改定(1998年)についての解説を掲載した『文部広報』1026号(2000年11月17日)においてでした。
 しかも、そこでは見出しで触れていないため、解説の本文を辛抱強く読み進むと、ようやく「学習指導要領は、最低基準であり~」という文面にたどり着くというように、気付きにくい扱いでした。
 8 やがて、科学技術庁を吸収して文部科学省となって、旧『教育白書』の名を改めた『文部科学白書』が、2002年1月18日に公表され、「これまで教育内容を厳格に統制してきた学習指導要領について『最低基準』だと初めて明記」(『朝日新聞』1月18日夕刊)と報道されます。
 9 現在では「要領」にも、「最低基準」である旨が明記されていますが、最高裁学テ事件判決(1976年)から上記8まで26年間、文科省(文部省)は「要領」を画一的な教育統制の最大の”武器”にし、教育関係者に”武器”としてのイメージを植え付け続けてきたことになります。
 10 その結果、今でも多くの教育委員会関係者や『産経』に同調するような地方議員・政治家レイシストなどの間で、この間違った認識が広範に根強く残り、教育現場への不当な圧力の道具として使われる状況が多発する一因となっているわけです。
 11 その一方で、不当な圧力に屈することなく反論し、抵抗している教員の皆さんが各地に存在しています。そうした抵抗の一つが、養護学校の性教育に東京都議会議員と『産経新聞』が圧力を加え、教育委員会が教員を守らずに処分等を強行した「七尾養護学校事件」の裁判があります(詳しくはネットで検索をして下さい)。
 12 同「事件」では、地裁・高裁・最高裁のすべてで教員の側が勝訴し、都教委が賠償金の支払いを命じられています。
 13 はなしが長くなりましたが、今回注目したいのは、同「事件」の高裁判決(2011年9月16日)が、「要領」の「最低基準」という意味には、「教員の創意工夫を尊重し、創意工夫の余地を奪うような細目にまでわたる指示命令等を教育委員会が行うことはできない」旨でもあると明示し、「要領」の「一言一句が法律のように拘束力があるとは言えない」旨も指摘しているところなのです。
 14 この高裁判決のこの部分は、同事件の最高裁判決(2013年1月28日)では、引用されていませんが、最高裁判決は被告側の上告を棄却していて、高裁判決は支持された形です。
 15 改めて、高裁判決の該当部分(抄)を添付しました<略>ので、身近の校内管理職や教育委員会関係者など、こうした司法判断を未だに通じていない様子がありましたらご活用下さい。
      以上  文責は高嶋です        転載・拡散は自由です


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