▼ 「ここから裁判」 原告 勝訴
東京・日野市にある都立七生(ななお)養護学校(現・七生特別支援学校)の元教諭と保護者ら計31人が同校での性教育授業の視察を受けた際、教材の没収や威圧的な批判など精神的苦痛を受けたとして都議3人と都に損害賠償を求めた訴訟で12日判決が言い渡された。東京地裁は都議らの行為を「教育の不当な支配」と認め、都議3人と都に計210万円の支払いを命じた。
3月12日(木)午後2時より東京地裁で、七生養護学校「ここから裁判」判決言渡しがありました。大変関心の高い裁判とあって、大勢の人が裁判所に詰めかけ、傍聴券配布所に並びました。
▼ 「ここから裁判」について
(略)
▼ 「ここから裁判」判決言い渡し
原告が31名と多いこともあって、毎回、大勢の傍聴人が法廷を埋め尽くしていますが、今回は判決が出ることから、つねにも増して多くの人たちが来ていました。90枚の傍聴券に対し192名の希望者がいたため、パソコンによる抽選となりました。筆者は支援者の方のご厚意で裁判を傍聴することができました。
103号大法廷に入ると、すでに裁判官や原告・被告の関係者は着席していました。この日は同時刻に原爆認定訴訟の判決も出るので、裁判所の手荷物検査のところには大勢の人が並び、定刻の2時を過ぎたあとに入ってきた傍聴人もいました。矢尾渉裁判長は、傍聴人が席に着くのを待って、判決言い渡しをしました。
主文(要旨)
1 原告らの都教委に対する訴えは却下する。
2 被告東京都、3都議は、原告2名に対し、それぞれ5万円を支払え。
3 被告東京都は、原告9名に対し、それぞれ20万円を支払え。
4 被告東京都は、原告1名に対し、20万円を支払え。
5 原告らの被告東京都、被告3都議に対するその余の請求並びに被告産経新聞社に対する請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、原告2名に生じた費用の30分の1並び被告東京都、被告3都議に生じた各300分の1を被告東京都、3都議の負担とし、原告9名に生じた費用の各30分の1ならびに被告東京都に生じた費用に15分の1を被告東京都の負担とし、その余は原告らの負担とする。
7 この判決の第2項ないし第4項は、本判決が同各項記載の各被告に送達された各日からそれぞれ14日を経過したときは、当該被告に対して仮に執行することができる。
最初、「原告らの被告東京都教育委員会に対する訴えを却下する」との主文が読み上げられたときは、敗訴の判決かと思い、支援者らで埋め尽くされた傍聴席には一瞬重苦しい雰囲気が漂いました。そのあと、被告らに対し、損害賠償の支払いを命じる内容の主文が読み上げられ、敗訴か勝訴かがよくわからないまま判決言い渡しが終わりました。
矢尾裁判長ら裁判官3名が退廷したあと、弁護団のほうに行ってみると、笑っている弁護団長の姿が目に入りました。「勝訴かな」と思いながら、さらに近づいて行ってみると、弁護団長が法廷に響き渡るような声で、「勝訴!」と叫びました。それまで無言だった人たちの顔に笑顔が浮かび、歓声とともに拍手が起こりました。筆者の前にいた傍聴人の人たちも「不当判決だと思っていた」と話しながら、笑顔で退廷して行きました。
原告の中には敗訴の場合にそなえ、布に「不当判決」と記したものを用意していた方もいました。教材の返還は認められなかったものの、教育に対する不当な介入があったとして都教委や都議らに対し、損害賠償の支払いを命じた判決に、抱き合って喜んでいる原告や支援者の人たちの姿がありました。涙ぐんでいる人たちもいました。
▼ ◎報告会
午後2時30分から弁護士会館クレオホールで報告会がありました。弁護団や原告団の方々が判決について感想を述べました。
弁護団:都教委や都議らの教育に対する不当な介入の違法性が認められた。特徴は都議の違法性を認めたことが印象的な判決。都議の思想信条の教育への介入は旧教育基本法10条1項に違反すると明確に書かれていた。
原告:損害賠償のことを言っていたので、「勝ったんだなあ」という感じ。ほかの裁判とつながっている。この判決を同僚がどう受け止めるか、反応が楽しみ。単なる民事訴訟ではない。教育基本法はやっぱり戻したほうがいいんじゃないか。教材を戻してほしい。
原告:最初、「却下」と裁判長が言ったときはドキッとした。損害賠償を求めていたので勝ったと思った。聞いているうちに嬉しさがこみ上げてきた。長かったが、大事なことをやっていることを裁判を通して感じた。都教委や都議らに対し、教育に対する不当な介入を反省しろという判決。性教育の大切さを取り戻したい。
原告:最初、裁判長が「原告の訴えを却下する」と言ったのでドキッとした。判決文をまだ読んでいないのでわかっていないところがあるが、完全な不当判決でないことはわかった。権力が学校の教育内容に不当に介入した。
こんなバカなことが許されていいのか。教育基本法10条に違反する。こんなことをやってはいけない。許してはいけない。闘わなければならないと思った。ストレスだった。倒れて障害が残った。教職を離れ、退職した。大変残念。七生の保護者が支持してくれた。保護者の支持がなければ闘えなかった。
都教委はひどい。我々は自分たちのやり方が100%正しいと思ってやっているのではない。つねに実践し、議論し、検証する。都教委は議論をさせない。判決で、都教委の厳重注意処分はおかしいと認め、損害賠償の支払いを命じたのはよかった。
議員に対し、怒りを持っている。どんな思想や信条を持っていてもいいが、自分たちの思想・信条に合わないからといって教育に不当な介入をすることは許されないという判決。職権乱用。全国的にみて重要な教育裁判。大きな判決となる。
弁護団:旧教育基本法10条1項の不当な支配に当たると書いている。これはものすごいこと。こちらの主張に沿って都議らを認定した。当日、都議らがやってきて保健室で生々しいやり取りがあった直後、2人の教員から話を聞いて書き留めたメモがある。このメモが大きな力を発揮した。
事実認定し、旧教育基本法10条1項違反の教育の不当な支配にあたるとしている。都教委は、被告都議らが視察に来たとき、不当な支配があったとき、教員を保護する義務があったとはっきり書いている。判決の要点として3つの点が挙げられる。
1つ目は、都議の行為は10条1項違反。2つ目は、都教委は不当な支配から教員らを守らなければならない。3つ目は、教育内容についてペナルティを与えるやり方はよくない。この判決は教育裁判の歴史に残る。
弁護団:判決の感想はホッとしている。行政の事後のチェックをするのが司法の役割。司法の役割をきちんと果たした判決。不当な支配を事実に当てはめている。司法に携る人間としてホッとした。教育行政をどうするか。司法の外での闘い。判決をテコにこの国の教育をきちんと考えていくことが大事。
弁護団:被告が控訴したら今度は高裁での闘いになる。高裁が政治家の介入を不当だと言うために世論を盛り上げていきたい。
弁護団:ホッとした。七生の「こころとからだの学習」は子どもの気持ちに寄り添って築いて作られてきた。勝たなければならない。判決期日が半年以上延びた。裁判所も我々と同じ感覚を持っていた。教材没収は法的に難しい。大変な教育現場の力となる判決であってほしい。
原告:不当性を認めてくれて嬉しかった。いまの状況のなかでここまで認めたのはすごい。損害賠償が20万円はすごいことなのかな。勝ってるかも・・・。すごく嬉しい。不当な支配をしちゃいけないことをしっかり書いてくれたことが嬉しかった。
いま、肢体不自由児の学校に勤めている。現場の先生たちが支えてくれている。嬉しく、誇りに思っている。これからもおかしいことはおかしいと言っていく。
原告:厳重注意は20万円。自分は5万円・・・。どうして? でも、金額の問題じゃない。内容がよかった。都議の行為は不当だとはっきり示されていた。都教委はそこにいながら教員を保護する義務を怠ったとまで判決に書いていた。嬉しい。都教委はこれからも圧力をかけてくる。勝利判決を力に頑張りたい。
弁護団:教材の返還は法的に難しい。とってもいい判決。教育裁判で画期的な判決。不当な支配を断罪した。教育基本法は改正されたが、不当支配については同じ。都教委の保護義務を認定した。現場に勇気を与える。
教育内容について厳重注意を与えたのは裁量権の逸脱。予想していなかった画期的な判決。教育の発展に大きな勇気を与える判決。勇気を持って、喜びを持って、感動を持って・・・。感動が大きな力になると、東京大空襲裁判の原告の早乙女勝元さんが言っていた。感動を力に頑張りましょう。
▼ 「ここから裁判」原告団・弁護団・全国支援連絡会の声明
七生養護学校「こころとからだの学習」裁判東京地裁判決についての声明
1 本件は、特定の学校における具体的名教育実践に対して、政治家である都議が「不適切」と断じて直接的に介入し、これを容認した東京都教育委員会が、教員を厳重注意するなどして、その教育を破壊した事案である。
本日、東京地方裁判所民事24部・矢尾渉裁判長は、この自演において、教育に対する不当な支配(旧教育基本法10条1項違反)を認定するなどして、損害賠償を命じる判決を下した。
2 本判決は、以下の3点を認めた点で、教育裁判上、画期的な判決と評価できる。
①政治家である都議らが、政治的な主義・信条に基き、本件養護学校の性教育に介入・干渉したことを、本件養護学校における教育の自主性を阻害し、これを歪める危険のある行為として、旧教育基本法10条1項の「不当な支配」にあたると認定したこと。
②*都教委の職員らはこのような都議の「不当な支配」から本件養護学校の個々の教員を保護する義務があったと認定し、都議らの政治介入を放置していたことに対し、保護義務違反と認定したこと。
③*「厳重注意」は、一種の制裁的行為であることを認定するとともに、教育内容を理由として制裁的扱いをするには、事前の研修や助言・指導を行うなど慎重な手続きを行うべきものとしたこと。
3 七生養護学校に対する政治介入は2003年7月になされたが、その衝撃は、本件養護学校の教員、生徒、保護者にとどまらず、学校現場で教育実践をしてきた教育関係者にも影響を及ぼしてきた。本判決が、都議及び都教委の違法性を断定し、次のように明確に判示したことは、このような多くの人々に勇気と希望を与えるものと評価できる。
「性教育は、教授法に関する歴史も浅く、創意工夫を重ねながら、実践実例が蓄積されて教授法が発展していくという面があり、教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは、容易ではない。しかも、いったん、性教育の内容が不適切であるとして教員に対する制裁的扱いがされれば、それらの教員を萎縮させ、創意工夫による教育実践の開発がされなくなり、性教育の発展が阻害されることにもなりかねない。性教育の内容の不適切を理由に教員に制裁的取扱をする場合には、このような点についての配慮が求められる」(判決要旨5ページから6ページ)
4 本判決を契機として、本件養護学校はもちろんのこと、他の学校においても、教育の自主性が尊重されることを強く求めて声明とする。
▼ ◎筆者の感想
弁護団長の「勝訴!」という叫び声に、法廷の空気が一変し、弁護団や支援者のみなさんから歓声と拍手が起こりました。抱き合って喜びを分かち合っている人たちや涙を浮かべている人たちを見ながら、事件から約6年、裁判が始まってから約4年。長い闘いを強いられてきたみなさんの思いが伝わってくるような気がしました。
何度かこの裁判を傍聴してきましたが、一番印象に残っているのは、都議と産経新聞記者に対する証人尋問のやり取りでした。
とくに「過激性教育」「まるでアダルトショップ」などとする記事を書いた産経新聞の記者は、弁護団の質問に対し、「記憶にない」を連発していました。「だれが人形を床に置いてスカートをめくったのか」という質問についても「記憶にない」を連発していましたが、人形の下半身をむき出しにして床に並べた写真をなぜ撮ったのか、という弁護団に質問に対し、「そのほうが読者によく伝わると思ったから」との主旨の発言をしていました。
今回、産経新聞に対する損害賠償等の支払いを命じる判決は出ませんでしたが、事実を故意に歪曲し、読者に誤ったイメージを与えるような記事や写真を掲載することは、報道に携わるものとして厳しく戒めなければならないと思います。都議や都教委らとともに深く反省を求めたいと思いました。
◇ ◇ ◇
『JANJAN』 2009/03/13
http://www.news.janjan.jp/living/0903/0903129299/1.php
ひらのゆきこ
東京・日野市にある都立七生(ななお)養護学校(現・七生特別支援学校)の元教諭と保護者ら計31人が同校での性教育授業の視察を受けた際、教材の没収や威圧的な批判など精神的苦痛を受けたとして都議3人と都に損害賠償を求めた訴訟で12日判決が言い渡された。東京地裁は都議らの行為を「教育の不当な支配」と認め、都議3人と都に計210万円の支払いを命じた。
3月12日(木)午後2時より東京地裁で、七生養護学校「ここから裁判」判決言渡しがありました。大変関心の高い裁判とあって、大勢の人が裁判所に詰めかけ、傍聴券配布所に並びました。
▼ 「ここから裁判」について
(略)
▼ 「ここから裁判」判決言い渡し
原告が31名と多いこともあって、毎回、大勢の傍聴人が法廷を埋め尽くしていますが、今回は判決が出ることから、つねにも増して多くの人たちが来ていました。90枚の傍聴券に対し192名の希望者がいたため、パソコンによる抽選となりました。筆者は支援者の方のご厚意で裁判を傍聴することができました。
103号大法廷に入ると、すでに裁判官や原告・被告の関係者は着席していました。この日は同時刻に原爆認定訴訟の判決も出るので、裁判所の手荷物検査のところには大勢の人が並び、定刻の2時を過ぎたあとに入ってきた傍聴人もいました。矢尾渉裁判長は、傍聴人が席に着くのを待って、判決言い渡しをしました。
主文(要旨)
1 原告らの都教委に対する訴えは却下する。
2 被告東京都、3都議は、原告2名に対し、それぞれ5万円を支払え。
3 被告東京都は、原告9名に対し、それぞれ20万円を支払え。
4 被告東京都は、原告1名に対し、20万円を支払え。
5 原告らの被告東京都、被告3都議に対するその余の請求並びに被告産経新聞社に対する請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、原告2名に生じた費用の30分の1並び被告東京都、被告3都議に生じた各300分の1を被告東京都、3都議の負担とし、原告9名に生じた費用の各30分の1ならびに被告東京都に生じた費用に15分の1を被告東京都の負担とし、その余は原告らの負担とする。
7 この判決の第2項ないし第4項は、本判決が同各項記載の各被告に送達された各日からそれぞれ14日を経過したときは、当該被告に対して仮に執行することができる。
最初、「原告らの被告東京都教育委員会に対する訴えを却下する」との主文が読み上げられたときは、敗訴の判決かと思い、支援者らで埋め尽くされた傍聴席には一瞬重苦しい雰囲気が漂いました。そのあと、被告らに対し、損害賠償の支払いを命じる内容の主文が読み上げられ、敗訴か勝訴かがよくわからないまま判決言い渡しが終わりました。
矢尾裁判長ら裁判官3名が退廷したあと、弁護団のほうに行ってみると、笑っている弁護団長の姿が目に入りました。「勝訴かな」と思いながら、さらに近づいて行ってみると、弁護団長が法廷に響き渡るような声で、「勝訴!」と叫びました。それまで無言だった人たちの顔に笑顔が浮かび、歓声とともに拍手が起こりました。筆者の前にいた傍聴人の人たちも「不当判決だと思っていた」と話しながら、笑顔で退廷して行きました。
原告の中には敗訴の場合にそなえ、布に「不当判決」と記したものを用意していた方もいました。教材の返還は認められなかったものの、教育に対する不当な介入があったとして都教委や都議らに対し、損害賠償の支払いを命じた判決に、抱き合って喜んでいる原告や支援者の人たちの姿がありました。涙ぐんでいる人たちもいました。
▼ ◎報告会
午後2時30分から弁護士会館クレオホールで報告会がありました。弁護団や原告団の方々が判決について感想を述べました。
弁護団:都教委や都議らの教育に対する不当な介入の違法性が認められた。特徴は都議の違法性を認めたことが印象的な判決。都議の思想信条の教育への介入は旧教育基本法10条1項に違反すると明確に書かれていた。
原告:損害賠償のことを言っていたので、「勝ったんだなあ」という感じ。ほかの裁判とつながっている。この判決を同僚がどう受け止めるか、反応が楽しみ。単なる民事訴訟ではない。教育基本法はやっぱり戻したほうがいいんじゃないか。教材を戻してほしい。
原告:最初、「却下」と裁判長が言ったときはドキッとした。損害賠償を求めていたので勝ったと思った。聞いているうちに嬉しさがこみ上げてきた。長かったが、大事なことをやっていることを裁判を通して感じた。都教委や都議らに対し、教育に対する不当な介入を反省しろという判決。性教育の大切さを取り戻したい。
原告:最初、裁判長が「原告の訴えを却下する」と言ったのでドキッとした。判決文をまだ読んでいないのでわかっていないところがあるが、完全な不当判決でないことはわかった。権力が学校の教育内容に不当に介入した。
こんなバカなことが許されていいのか。教育基本法10条に違反する。こんなことをやってはいけない。許してはいけない。闘わなければならないと思った。ストレスだった。倒れて障害が残った。教職を離れ、退職した。大変残念。七生の保護者が支持してくれた。保護者の支持がなければ闘えなかった。
都教委はひどい。我々は自分たちのやり方が100%正しいと思ってやっているのではない。つねに実践し、議論し、検証する。都教委は議論をさせない。判決で、都教委の厳重注意処分はおかしいと認め、損害賠償の支払いを命じたのはよかった。
議員に対し、怒りを持っている。どんな思想や信条を持っていてもいいが、自分たちの思想・信条に合わないからといって教育に不当な介入をすることは許されないという判決。職権乱用。全国的にみて重要な教育裁判。大きな判決となる。
弁護団:旧教育基本法10条1項の不当な支配に当たると書いている。これはものすごいこと。こちらの主張に沿って都議らを認定した。当日、都議らがやってきて保健室で生々しいやり取りがあった直後、2人の教員から話を聞いて書き留めたメモがある。このメモが大きな力を発揮した。
事実認定し、旧教育基本法10条1項違反の教育の不当な支配にあたるとしている。都教委は、被告都議らが視察に来たとき、不当な支配があったとき、教員を保護する義務があったとはっきり書いている。判決の要点として3つの点が挙げられる。
1つ目は、都議の行為は10条1項違反。2つ目は、都教委は不当な支配から教員らを守らなければならない。3つ目は、教育内容についてペナルティを与えるやり方はよくない。この判決は教育裁判の歴史に残る。
弁護団:判決の感想はホッとしている。行政の事後のチェックをするのが司法の役割。司法の役割をきちんと果たした判決。不当な支配を事実に当てはめている。司法に携る人間としてホッとした。教育行政をどうするか。司法の外での闘い。判決をテコにこの国の教育をきちんと考えていくことが大事。
弁護団:被告が控訴したら今度は高裁での闘いになる。高裁が政治家の介入を不当だと言うために世論を盛り上げていきたい。
弁護団:ホッとした。七生の「こころとからだの学習」は子どもの気持ちに寄り添って築いて作られてきた。勝たなければならない。判決期日が半年以上延びた。裁判所も我々と同じ感覚を持っていた。教材没収は法的に難しい。大変な教育現場の力となる判決であってほしい。
原告:不当性を認めてくれて嬉しかった。いまの状況のなかでここまで認めたのはすごい。損害賠償が20万円はすごいことなのかな。勝ってるかも・・・。すごく嬉しい。不当な支配をしちゃいけないことをしっかり書いてくれたことが嬉しかった。
いま、肢体不自由児の学校に勤めている。現場の先生たちが支えてくれている。嬉しく、誇りに思っている。これからもおかしいことはおかしいと言っていく。
原告:厳重注意は20万円。自分は5万円・・・。どうして? でも、金額の問題じゃない。内容がよかった。都議の行為は不当だとはっきり示されていた。都教委はそこにいながら教員を保護する義務を怠ったとまで判決に書いていた。嬉しい。都教委はこれからも圧力をかけてくる。勝利判決を力に頑張りたい。
弁護団:教材の返還は法的に難しい。とってもいい判決。教育裁判で画期的な判決。不当な支配を断罪した。教育基本法は改正されたが、不当支配については同じ。都教委の保護義務を認定した。現場に勇気を与える。
教育内容について厳重注意を与えたのは裁量権の逸脱。予想していなかった画期的な判決。教育の発展に大きな勇気を与える判決。勇気を持って、喜びを持って、感動を持って・・・。感動が大きな力になると、東京大空襲裁判の原告の早乙女勝元さんが言っていた。感動を力に頑張りましょう。
▼ 「ここから裁判」原告団・弁護団・全国支援連絡会の声明
七生養護学校「こころとからだの学習」裁判東京地裁判決についての声明
1 本件は、特定の学校における具体的名教育実践に対して、政治家である都議が「不適切」と断じて直接的に介入し、これを容認した東京都教育委員会が、教員を厳重注意するなどして、その教育を破壊した事案である。
本日、東京地方裁判所民事24部・矢尾渉裁判長は、この自演において、教育に対する不当な支配(旧教育基本法10条1項違反)を認定するなどして、損害賠償を命じる判決を下した。
2 本判決は、以下の3点を認めた点で、教育裁判上、画期的な判決と評価できる。
①政治家である都議らが、政治的な主義・信条に基き、本件養護学校の性教育に介入・干渉したことを、本件養護学校における教育の自主性を阻害し、これを歪める危険のある行為として、旧教育基本法10条1項の「不当な支配」にあたると認定したこと。
②*都教委の職員らはこのような都議の「不当な支配」から本件養護学校の個々の教員を保護する義務があったと認定し、都議らの政治介入を放置していたことに対し、保護義務違反と認定したこと。
③*「厳重注意」は、一種の制裁的行為であることを認定するとともに、教育内容を理由として制裁的扱いをするには、事前の研修や助言・指導を行うなど慎重な手続きを行うべきものとしたこと。
3 七生養護学校に対する政治介入は2003年7月になされたが、その衝撃は、本件養護学校の教員、生徒、保護者にとどまらず、学校現場で教育実践をしてきた教育関係者にも影響を及ぼしてきた。本判決が、都議及び都教委の違法性を断定し、次のように明確に判示したことは、このような多くの人々に勇気と希望を与えるものと評価できる。
「性教育は、教授法に関する歴史も浅く、創意工夫を重ねながら、実践実例が蓄積されて教授法が発展していくという面があり、教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは、容易ではない。しかも、いったん、性教育の内容が不適切であるとして教員に対する制裁的扱いがされれば、それらの教員を萎縮させ、創意工夫による教育実践の開発がされなくなり、性教育の発展が阻害されることにもなりかねない。性教育の内容の不適切を理由に教員に制裁的取扱をする場合には、このような点についての配慮が求められる」(判決要旨5ページから6ページ)
4 本判決を契機として、本件養護学校はもちろんのこと、他の学校においても、教育の自主性が尊重されることを強く求めて声明とする。
▼ ◎筆者の感想
弁護団長の「勝訴!」という叫び声に、法廷の空気が一変し、弁護団や支援者のみなさんから歓声と拍手が起こりました。抱き合って喜びを分かち合っている人たちや涙を浮かべている人たちを見ながら、事件から約6年、裁判が始まってから約4年。長い闘いを強いられてきたみなさんの思いが伝わってくるような気がしました。
何度かこの裁判を傍聴してきましたが、一番印象に残っているのは、都議と産経新聞記者に対する証人尋問のやり取りでした。
とくに「過激性教育」「まるでアダルトショップ」などとする記事を書いた産経新聞の記者は、弁護団の質問に対し、「記憶にない」を連発していました。「だれが人形を床に置いてスカートをめくったのか」という質問についても「記憶にない」を連発していましたが、人形の下半身をむき出しにして床に並べた写真をなぜ撮ったのか、という弁護団に質問に対し、「そのほうが読者によく伝わると思ったから」との主旨の発言をしていました。
今回、産経新聞に対する損害賠償等の支払いを命じる判決は出ませんでしたが、事実を故意に歪曲し、読者に誤ったイメージを与えるような記事や写真を掲載することは、報道に携わるものとして厳しく戒めなければならないと思います。都議や都教委らとともに深く反省を求めたいと思いました。
◇ ◇ ◇
『JANJAN』 2009/03/13
http://www.news.janjan.jp/living/0903/0903129299/1.php
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