▲ 公開学習会 2007年3月3日
テーマ…「いま、都政に何が求められているか 石原都政の八年を検証して」
講師…氏家祥夫 (014回 一九六二年小石川高校卒)
●講師紹介
一九六七年 東京都職員に採用(住宅局)
一九八八年 東京都区職員労働組合(都職労)専従役員となる(東京都退職)
一九九五年~二〇〇三年 東京都庁職員労働組合(都庁職)委員長
現 在 東京都の保健・衛生・医療を充実させる連絡会代表 都立の大学を考える都民の会世話人など
●著書
「世界のどこにもない大学首都大学黒書」 都立の大学を考える都民の会(二〇〇六年・共著)
「明日への東京宣言」 東京問題研究会・柴田徳衛編著(二〇〇七年・共著)
●講演 内容要約
Ⅰ.地方自治体とは何か
○「地方自治」
日本国憲法九十二条-九十五条で、初めて位置づけられた。明治憲法には地方自治は無し。
○憲法九十二条「地方自治の本旨」とは
住民自治と団体自治という考え方が定着している。
○東京都政の特性
他の自治体では、広域行政を府県が、基礎的行政を市町村が担うことになったのに対して、東京都では、二十三区の基礎的行政の一部をも、都が担っている。
(例)交通、病院、住宅などは都立・都営。他自治体では、市営地下鉄等がある。
二十三区内では固定資産税等は都税事務所で徴収し、約五十五%が二十三区に回されている。
○地方自治制度の改編(道州制)について
都道府県を廃止し、全国を十位の道州制にすることが俎上に上がっている。関連して、東京都と.二十三区の関係も(二十三区を六つの市にする案など)話題になると思われるが、そのように大きな規模で直接住民の声が届く住民自治ができるのか、という観点から見ていく必要がある。
Ⅱ、石原都政は何をしてきたか
政治家としての特質として、以下の三側面があげられる、
・国会議員時代:自主防衛を掲げた右翼的政治家、
・一九九五年国会議員辞職後:新自由主義・グローバル国家戦略を打ち出す
・都知事就任後:専制・トップダウン
1.福祉・医療
石原語録…「東京において何がぜいたくかと言えば、まず福祉」
「福祉は恩恵」としか捉えない石原都政で、それまで「福祉は人権の問題」として進められて来た様々な制度が切り捨てられた。その例として…
■例1.老人医療費助成
美濃部革新都政が、当初七十歳以上(その後六十五歳から)に医療費の無料化を全国に先駆けて実施、一九六七年から一九七四年に確立した制度(その後六十五歳から)である。鈴木・青島都政でも続いてきた老人医療費助成制度であったが、二○○○年都議会で、六年で廃止する案が可決された。
■例2.保育園
生活面積・看護師の配置など、国基準を上呵る都独自の規準があったが、二〇〇六年からは、全て国基準と同じに引き下げられた。
■例3.都立病院の統廃合
「保険証さえあれば駆け込めた」都立病院は、廃止・公社化が進み、地方独立行政法人化で、すべての都立病院がなくなる方向で検討がされている。
2.グローバル企業優先、中小企業は選択的支援と削減。雇用対策のカット
石原語録…「フリーター、ニート、私に言わせりゃ、穀つぶしだ。」
ベンチャー企業や「のびる」企業を選択的に支援され、中小企業支援・雇用対策は削減されるばかりである。あまり公表されていない貧困・格差の実態が紹介された。
■栄養失調死者(餓死者)…二百四十人(二十三区 一九九五年から二〇〇四年の十年間で)
■孤独死…四千三百三十九人(二十三区 二〇〇四年東京都監察医務院公報による)
■水道供給停止数…九万六千件(二〇〇一年)
■ガス供給停止数…二十四万件(二〇〇一年)
■就学援助を受けている小中学生の割合は、二四.八%で、全国平均の二倍に達する。
3.オリンピック誘致と巨大開発
石原語録…「オリンピックをテコに日本を変える。国威発揚だ。」
国威発揚とか都市をかえる等の発想は、■オリンピック憲章とは全く相容れない。
東京でオリンピック開催となる可能性はきわめて低いが、巨大開発の口実としてオリンピックを使っている。
4.競争・統制・選別・序列化される教育
石原語録…「予告して自殺するバカはいない。やるならさっさとやれって。」
■学校選択制/日の丸君が代の強制と処分/教科書採択など、問題は限りない。
■三十人学級制を拒否しているのは、今では東京都だけとなった。
石原語録…「こんな大学、世界のどこにもないぞ」
■都立四大学が、地方独立行政法人化された。学長は、教授会の選出でなく、知事の任命による。民間の法人の取締役会に相当する「理事会」さえなく、全てが、理事長・事務局長につらなる単線の指揮命令系統の下に置かれている。予算(交付金)は、毎年二・五%の減額とされている。教員は、公務員の身分を廃止され、七~八百人中二百人が転出してしまった。
5.戦争への挑発と平和に対する逆流
石原語録…「いまごろ国連憲章をまともに信じているバカはいませんよ。」
■横田基地は、二〇〇六年、米軍司令部と自衛隊司令部が横田ででドッキング・一体化し、アジアの前線基地の司令部に変質した。
6.財政再建のデタラメ・都政の私物化
石原語録…「余人をもって代え難かったらどんな人間でも使う」
■東京ワンダーサイトヘの四男の登用問題
千億円を投入した■新銀行東京は、三百億円以上の赤字を出し破綻の危険性が言われている。
Ⅲ.都政はどのように転換することを求められているか
1.都政の私物化・トップダウンの都政運営の転換
庁議(内閣の閣議にあたる)が年二回しか開かれず、後は、毎週金曜に食事をしながらレクチュアを受け、すぐに記者会見で発表する、という手法がとられている。
2.憲法二十五条に基づく人権が保障される都政に
(参照)EU憲章では、参加国に、「貧困と社会的排除」が改善されているか、二年ごとに報告することを求めている。
3.安心して住み続けられる、維持可能な都市へ
大地震と台風が同時に襲う「スーパー都市災害」も想定して災害対策をたてる必要がある。直下型地震は十年間で三十%、三十年間で七十%の確率が予想されている。
4.競争・市場原理万能・経済成長至上主義の是正
働く都民の共生経済都市へ
5.全ての子どもに「教育の機会」を保障し、人格の完成をめざす教育を
6.非核・非戦・平和な多文化都市に
現在、東京では、百人のうち三人が外国籍の人であり、十組中一組が国際結婚であり、世界の人々が集う都市となっている.
7.ムダのない、住民福祉優先の民主主義を貫く都政に
8.住民の要求と住民福祉を実現できる財源は十分に存在している。
三月九日決定した二〇〇七年度予算案によれば、前年度より八千二億円(実質四千六百一億円)の税収増が見込まれている。オリンピックの基金として、毎年千億円ずつ四年間積みたてていくことになっているが、その金額の膨大さを、他の施策に使った場合と比較してみた。
■(例)中学生までの医療無料化-高齢者寝たきり手当て 約二百億円(年)
三十人学級を、三年計画で小中学校全学年に実施百億円(年)
『むらさき草通信』Vol.1より
教科書問題を考える小石川高校有志の会
http://www.k-yuusi.jp/
テーマ…「いま、都政に何が求められているか 石原都政の八年を検証して」
講師…氏家祥夫 (014回 一九六二年小石川高校卒)
●講師紹介
一九六七年 東京都職員に採用(住宅局)
一九八八年 東京都区職員労働組合(都職労)専従役員となる(東京都退職)
一九九五年~二〇〇三年 東京都庁職員労働組合(都庁職)委員長
現 在 東京都の保健・衛生・医療を充実させる連絡会代表 都立の大学を考える都民の会世話人など
●著書
「世界のどこにもない大学首都大学黒書」 都立の大学を考える都民の会(二〇〇六年・共著)
「明日への東京宣言」 東京問題研究会・柴田徳衛編著(二〇〇七年・共著)
●講演 内容要約
Ⅰ.地方自治体とは何か
○「地方自治」
日本国憲法九十二条-九十五条で、初めて位置づけられた。明治憲法には地方自治は無し。
○憲法九十二条「地方自治の本旨」とは
住民自治と団体自治という考え方が定着している。
○東京都政の特性
他の自治体では、広域行政を府県が、基礎的行政を市町村が担うことになったのに対して、東京都では、二十三区の基礎的行政の一部をも、都が担っている。
(例)交通、病院、住宅などは都立・都営。他自治体では、市営地下鉄等がある。
二十三区内では固定資産税等は都税事務所で徴収し、約五十五%が二十三区に回されている。
○地方自治制度の改編(道州制)について
都道府県を廃止し、全国を十位の道州制にすることが俎上に上がっている。関連して、東京都と.二十三区の関係も(二十三区を六つの市にする案など)話題になると思われるが、そのように大きな規模で直接住民の声が届く住民自治ができるのか、という観点から見ていく必要がある。
Ⅱ、石原都政は何をしてきたか
政治家としての特質として、以下の三側面があげられる、
・国会議員時代:自主防衛を掲げた右翼的政治家、
・一九九五年国会議員辞職後:新自由主義・グローバル国家戦略を打ち出す
・都知事就任後:専制・トップダウン
1.福祉・医療
石原語録…「東京において何がぜいたくかと言えば、まず福祉」
「福祉は恩恵」としか捉えない石原都政で、それまで「福祉は人権の問題」として進められて来た様々な制度が切り捨てられた。その例として…
■例1.老人医療費助成
美濃部革新都政が、当初七十歳以上(その後六十五歳から)に医療費の無料化を全国に先駆けて実施、一九六七年から一九七四年に確立した制度(その後六十五歳から)である。鈴木・青島都政でも続いてきた老人医療費助成制度であったが、二○○○年都議会で、六年で廃止する案が可決された。
■例2.保育園
生活面積・看護師の配置など、国基準を上呵る都独自の規準があったが、二〇〇六年からは、全て国基準と同じに引き下げられた。
■例3.都立病院の統廃合
「保険証さえあれば駆け込めた」都立病院は、廃止・公社化が進み、地方独立行政法人化で、すべての都立病院がなくなる方向で検討がされている。
2.グローバル企業優先、中小企業は選択的支援と削減。雇用対策のカット
石原語録…「フリーター、ニート、私に言わせりゃ、穀つぶしだ。」
ベンチャー企業や「のびる」企業を選択的に支援され、中小企業支援・雇用対策は削減されるばかりである。あまり公表されていない貧困・格差の実態が紹介された。
■栄養失調死者(餓死者)…二百四十人(二十三区 一九九五年から二〇〇四年の十年間で)
■孤独死…四千三百三十九人(二十三区 二〇〇四年東京都監察医務院公報による)
■水道供給停止数…九万六千件(二〇〇一年)
■ガス供給停止数…二十四万件(二〇〇一年)
■就学援助を受けている小中学生の割合は、二四.八%で、全国平均の二倍に達する。
3.オリンピック誘致と巨大開発
石原語録…「オリンピックをテコに日本を変える。国威発揚だ。」
国威発揚とか都市をかえる等の発想は、■オリンピック憲章とは全く相容れない。
東京でオリンピック開催となる可能性はきわめて低いが、巨大開発の口実としてオリンピックを使っている。
4.競争・統制・選別・序列化される教育
石原語録…「予告して自殺するバカはいない。やるならさっさとやれって。」
■学校選択制/日の丸君が代の強制と処分/教科書採択など、問題は限りない。
■三十人学級制を拒否しているのは、今では東京都だけとなった。
石原語録…「こんな大学、世界のどこにもないぞ」
■都立四大学が、地方独立行政法人化された。学長は、教授会の選出でなく、知事の任命による。民間の法人の取締役会に相当する「理事会」さえなく、全てが、理事長・事務局長につらなる単線の指揮命令系統の下に置かれている。予算(交付金)は、毎年二・五%の減額とされている。教員は、公務員の身分を廃止され、七~八百人中二百人が転出してしまった。
5.戦争への挑発と平和に対する逆流
石原語録…「いまごろ国連憲章をまともに信じているバカはいませんよ。」
■横田基地は、二〇〇六年、米軍司令部と自衛隊司令部が横田ででドッキング・一体化し、アジアの前線基地の司令部に変質した。
6.財政再建のデタラメ・都政の私物化
石原語録…「余人をもって代え難かったらどんな人間でも使う」
■東京ワンダーサイトヘの四男の登用問題
千億円を投入した■新銀行東京は、三百億円以上の赤字を出し破綻の危険性が言われている。
Ⅲ.都政はどのように転換することを求められているか
1.都政の私物化・トップダウンの都政運営の転換
庁議(内閣の閣議にあたる)が年二回しか開かれず、後は、毎週金曜に食事をしながらレクチュアを受け、すぐに記者会見で発表する、という手法がとられている。
2.憲法二十五条に基づく人権が保障される都政に
(参照)EU憲章では、参加国に、「貧困と社会的排除」が改善されているか、二年ごとに報告することを求めている。
3.安心して住み続けられる、維持可能な都市へ
大地震と台風が同時に襲う「スーパー都市災害」も想定して災害対策をたてる必要がある。直下型地震は十年間で三十%、三十年間で七十%の確率が予想されている。
4.競争・市場原理万能・経済成長至上主義の是正
働く都民の共生経済都市へ
5.全ての子どもに「教育の機会」を保障し、人格の完成をめざす教育を
6.非核・非戦・平和な多文化都市に
現在、東京では、百人のうち三人が外国籍の人であり、十組中一組が国際結婚であり、世界の人々が集う都市となっている.
7.ムダのない、住民福祉優先の民主主義を貫く都政に
8.住民の要求と住民福祉を実現できる財源は十分に存在している。
三月九日決定した二〇〇七年度予算案によれば、前年度より八千二億円(実質四千六百一億円)の税収増が見込まれている。オリンピックの基金として、毎年千億円ずつ四年間積みたてていくことになっているが、その金額の膨大さを、他の施策に使った場合と比較してみた。
■(例)中学生までの医療無料化-高齢者寝たきり手当て 約二百億円(年)
三十人学級を、三年計画で小中学校全学年に実施百億円(年)
『むらさき草通信』Vol.1より
教科書問題を考える小石川高校有志の会
http://www.k-yuusi.jp/
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